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身代わり
《サイド:武藤慎吾》
…くっそぉーーーっ!!
追撃部隊を振り切れないっ!
「急ぐんだ、悠理っ!!」
叫びながら全力で走り続ける。
悠理の手を引きながら、
アストリア軍の追っ手からの逃亡を続けていたんだけど。
どれだけ走っても追っ手を振り切ることはできなかった。
「逃がすなっ!追えーっ!!」
逃げても逃げても追いかけてくるんだ。
それでも必死に逃げようとしてみるんだけど、
なかなか思うように走れない。
その理由はもう…分かってる。
悠理が後方ばかり気にしていて、
真剣に逃げようとしないからだ。
「前を向け、悠理!急いで逃げるんだっ!!」
「………。」
何度も呼び掛けてみたけれど。
悠理は何も答えなかった。
あ…いや、違うかな?
何も答えられないでいるんだと思う。
自分が犠牲になるつもりで足を止めた結果として、
雨宮さんが悠理の身代わりとなって死んだからだ。
悠理はその瞬間を見てた。
雨宮さんの体に突き刺さる幾つもの刃を。
雨宮さんが倒れる瞬間を。
悠理は見てしまったんだ。
「悠理っ!!」
「………。」
何度呼びかけてみても悠理は何も応えない。
悠理とお兄さんを守る為に。
雨宮さんが犠牲になったんだ。
そのせいで。
悠理は自分を責めているのかもしれない。




