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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
968/1056

合計2500

《サイド:近藤悠護》



もう少しっ!


あと少しだっ!!



幾度となく訪れた苦難によって全滅寸前の俺達だったが、

陰陽師軍との戦いがついに結末を迎えようとしている。



…ようやくここまで来た!!



陰陽師軍に対して必死の抵抗を続けていた共和国軍の戦いが最終段階に入ったのだ。



「このまま押し切れーっ!!!」


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」」」」」



大声で叫んだ俺の指示に応えるかのように、

多くの魔術師達が雄叫びを上げてくれていた。



そして生き残った魔術師達が、

次々と陰陽師軍に突撃していく。



俺の率いる遊撃ゆうげき部隊と、

悠理が率いる迎撃げいげき部隊。



兄妹で率いる部隊の活躍によって共和国軍は劣勢を盛り返して、

陰陽師軍を壊滅寸前にまで追い込んだのだ。



「あと少しだっ!あと少しでこの戦いが終わるぞ!!」



少しでも仲間達の士気を高めるために励まし続ける。



「勝利は目前だ!!」



ここにくるまでに多くの仲間を失った。


そして残された魔力もあと僅かな状態だ。



…それでもっ!



それでも俺達は勝利を目指して突き進んできたのだ!!



「このまま敵を殲滅するぞ!!」



勢いを増していく部隊を率いて、

雨宮と武藤君の協力を受けながら戦場を駆け抜けていく。



もうすぐだ!


もうすぐ終わる!!



戦いを終えて生きて共和国へと帰る為に。


そして守るべき人々を守り抜く為に。



俺達は自らの身を危険にさらしながらも戦場を駆け続けた。



「雨宮!!武藤君!!一気に突き抜けるぞっ!!」


「了解!」


「はいっ!!」



俺の指示に従ってくれる二人の背後には数百人の魔術師達がいる。



すでに千人には程遠いが、

それでも200近い人数が残っている。



後方支援に徹する悠理の部隊にはまだ被害がないようだが、

度重なる魔術の連発によってまともに戦える戦力は限られているはずだ。



さらに後方に控える護衛部隊の魔術師達はその多くが倒れてしまったために、

今では300にも満たない壊滅的な被害を受けてしまっている。



決して喜べる結果ではない。


例え勝利が確定しても悲しみしか残らないように思う。



だがそれでも、敗北よりは良い。



無残に戦場に散るよりは、

遥かに良い結果と言えるからだ。



合計2500名。



当初の3万5千から見れば1割にも満たない数だが、

それでも全滅は回避できた。



たった2500でも十分な残存兵力だ。



先行している米倉代表の援護はまだ可能な範囲のはず。


兵器の破壊さえできればそれでいい。



兵器さえ破壊できれば、

仮に残りの部隊が全滅したとしてもアストリアは停戦協定を受け入れるだろう。



すでに王族は全滅して、

主力とも言える陰陽師軍も壊滅寸前の状態だからな。



国王と陰陽師を失ったアストリアが戦争の継続などという無謀な行動に出るとは思えない。



すでにアストリアの敗戦は確定しつつあるのだ。



まだ10万以上の正規軍が残存している可能性があるが、

それだけで共和国と戦えるわけではない。



だからこそ。


アストリアの切り札である兵器さえ破壊できれば終戦は必ず訪れるはず。



「もはや敵は少数だ!残る力を振りしぼって一掃するぞ!!」



陰陽師軍はすでに500にも満たない数まで減少している。



一度崩れた布陣を立て直すことができず。


各個撃破を狙う俺達に対応することもできず。


瞬く間に総崩れとなったからだ。



現在残っているのは指揮官がいるらしい本陣の部隊だけになる。



…とは言え。



それでもまだ油断はできない。


すでに数の差は覆ったものの。



2500と500では大差とは言い切れないからな。



陰陽師軍が死ぬ気で反撃に出ればこちらの被害はさらに拡大してしまうだろう。



そうなる前に殲滅する必要がある。



「すでに勝利は目前だ!」



ここまできて敗北するわけにはいかない。


数え切れないほど多くの仲間達の犠牲の上でここまで来ることができたのだ。



だからこそ。



何があろうともこの状況で敗北することは許されない。



例えこの身と引き換えにしてでも、

共和国軍の勝利をもぎ取る必要があるのだ。



「あと一息だ!!」



勝利を目前とした状況で必死に叫ぶ俺の声が戦場に響き渡る。



「これで終わりだーっ!!」



敵陣の中央まで切り込めたことで、

陰陽師軍の指揮官を打ちとることに成功した。


首を切り落として、文字通り首を取ったのだ。



「…っ!!!」



悲鳴を上げることさえできずに倒れた指揮官。



部隊をまとめる指揮官が全滅したことによって、

まとまりをなくした陰陽師達は命惜しさに逃走を始めた。



死を恐れ、

慌てふためきながら、

散り散りに逃げ出したのだ。



今なら追い討ちを仕掛けて全滅させることができるかもしれないが、

こちらの被害も相当な状態だからな。



無理に深追いしてまで戦い続ける必要はないだろう。



逃げる陰陽師軍の姿を眺めながら、

追撃禁止の指示を出しておく。



「逃げる者は放置しろ。ただでさえこちらも疲弊しているんだ。これ以上、無駄な体力と魔力を使う必要はない。」



下手に戦力が分散したところを反撃でもされたら目も当てられない状況になってしまうだろう。



それこそ敵の思うツボとなる。



それに。


そもそも俺達の目的は陰陽師軍の殲滅ではないのだ。



あくまでも兵器の破壊が最優先になる。



今は陰陽師軍を見逃してでも、

西の山岳地帯へと急ぐべきだ。



それが共和国の安全につながるのだと判断してから、

ひとまず勝利を噛み締めることにした。



「…ようやく終わった。」



どう考えても全滅は必死という状況から逆転したのだ。



多くの仲間の命が失われたとは言え。


十分すぎるほどの達成感は感じてしまう。



「被害は甚大だが、俺達の勝利に間違いはない。」



少なくとも陰陽師軍を山岳地帯に向かわせることは防げたのだ。



これで米倉代表の安全は確実に高まったはず。



それだけは誇ってもいいと思う。



…と、思っていたのだが。



ここからさらに新たな悲劇が襲いかかろうとしていた。



ホッと息を吐く俺の耳に、

疑うべき報告が届いてしまったからだ。



「隊長っ!?敵軍ですっ!!」


「何っ!?」



突然叫び出したのは雨宮だった。



その声に驚いて雨宮に視線を向けてみると、

雨宮は震える体でどこか遠くに視線を向けていた。



…今度は何だ!?



疑問を感じながら雨宮の視線を追ってみる。



その瞬間に。


俺も最悪の事態を発見してしまった。



「くそ…っ!この状況で来るのかっ!!!」



思わず唇を噛み締めてしまう。


俺達の視線の先には、

部隊を展開して布陣するアストリア軍がいたからだ。



何故こうも次から次へと現れるのか!?



そんな不満とも言える疑問を感じた瞬間に、

自らの過ちに気づいてしまった。



「いや…あれは、まさかっ!?」



事前情報はあったのだ。



それなのに!



そこまで考えが回らずに忘れてしまっていたのだ。



敵が接近してきていることを知っていながらも、

どう対応するべきかを考えていなかったのだ!



「くそっ!!」



思い出してもすでに手遅れ。


アストリア軍はすでに戦闘準備を整えてしまっている。



「決着がつくのが遅すぎたかっ!」



もう少し早く陰陽師軍を撃破していれば、

後続のアストリア軍から逃げることができていたかもしれない。



だが、それはもう言い訳だ。


たら、れば、を言い出せばキリがない。



「ここまでか…っ。」



アストリア軍は優に1万に及ぶ軍勢だ。



数だけを考えるのならまだ何とか対処できそうな範囲だが、

こちらはすでに全滅寸前の部隊なのを忘れるわけにはいかない。



魔術を使えない魔術師が何千人いようと、

戦力としては数えられないのだ。



「せめて街道から離れるべきだったか…っ。」



今更悔やんでも手遅れだが。


新たに現れたアストリア軍は栗原君が王都からの撤退中に発見したという増援部隊で間違いないだろう。



その数はざっと1万。


これまでの戦闘と比べれば決して多くはない。



…だが。



今の共和国軍にとっては、

敵の『存在そのもの』が驚異なのだ。



「ちっ!!」



新たな敵軍を確認したことで絶望すら感じてしまっていた。



…とは言え。



絶望的な気持ちなのは俺だけではないだろう。


敵軍の存在を知った多くの魔術師達も同様のはず。



もはや戦い抜くだけの力はないのだ。



すでにそれだけの気力もない。


絶望だけが心を支配する戦況。



この状況で出せる指示は一つしかないだろう。



激戦を生き残った仲間達に…最後の指示を出す。



「撤退するぞ!!これ以上の戦闘は不可能だっ!!軍を解散する!!それぞれに共和国を目指して逃げろ!!」



軍の解散を指示して撤退を命じる。



もはや迎撃は不可能だからだ。


米倉代表に駆けつけるどころか、

この場から離脱することさえも難しいだろう。



…ならば。



やるべきことは一つしかない。



それは命懸けの特攻…ではなく、

生きて共和国に情報を届けることだ。



「総員退避!!」


「「「「「うああああああああっ!!!」」」」」



生き残った魔術師達は俺の指示を受け入れて、

疲れた体を酷使しながらも即座に共和国に向けて逃走を開始してくれた。



…だが。



アストリア軍は弱りきった共和国軍の逃亡を見逃そうとはせずに動き出してしまう。



「敵を殲滅するぞーーっ!!!」


「弱り切った魔術師など、ゴミも同然!一人残らず始末しろっ!!!!」


「「「「「おおおおおおおおおおっっっ!!!!!!」」」」」



激しい雄叫びと共に。


アストリア軍は地響きを起こしながら共和国軍の殲滅へと動き出した。



「…ちっ!やはり逃亡も難しいかっ」



アストリア軍の追撃を必死に交わしながら、

雨宮と武藤君を引き連れて悠理の救出を急ぐ。



「逃げるぞっ!!!」



戦場で視線を彷徨わせて守るべき妹を探し出す。



「悠理っ!!!」



急いで駆け寄り。


妹の細い腕を掴んでから全力で駆け出した。



「残念だが、この戦いはここまでだ。」



陰陽師軍の撃破には成功したが、

共和国軍の敗北は確定だ。


このまま戦い続けても、

30分と持たずに全滅するだろう。



…とは言え。



一つの戦いに勝利することはできたのだ。



完敗というわけでもない。



「良く頑張ったな、悠理。」


「お兄ちゃん…。」



戦いを諦めて微笑む俺を見た悠理は、

悲しそうな表情を見せていた。




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