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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
965/1212

自問自答

《サイド:天城総魔》



…まずは安全の確保が優先だな。



優奈と徹に合流したのは良いものの。


周囲を取り囲まれている状況に変わりはない。


早急に退路を確保するべきだろう。



「オメガ!!!!!」



範囲系の魔術で陰陽師の接近を阻む。



「「「「「うあああああああああああああああっ!!!」」」」」



放たれた衝撃波はアストリアの正規軍と陰陽師の部隊を吹き飛ばしていった。



「「「「「ぐああああああああぁぁぁっっ!!!!!」」」」」



アストリア軍は次々と倒れる。



「「「「「く…そぉ…っ…!!!」」」」」



陰陽師達は必死に防御結界を展開しているようだが、

それでも俺の攻撃力が結界の防御能力よりも優っているらしい。



結界を突き抜けた衝撃波によって、

陰陽師達も足止めを余儀なくされている。



「このまま押し切れるか?」



このまま戦い続ければ周囲のアストリア軍は全滅させられるかもしれない。



とは言え。



ここにいるアストリア軍は間違いなくごく一部だろう。



時間をかければかけるほど、

各地から増援部隊が駆けつけてくるはずだ。



そうなる前に現在の状況を打開しなければならないのだが、

とれる手段はそれほど多くはない。



「…どうする?」



自問自答を繰り返す。



周囲のアストリア軍はたいした脅威ではないように思える。



少なくとも陰陽師に比べれば気にするほどではない。



それでも同時に攻め込まれるのは厄介だ。



陰陽師達にこちらの魔術が妨害された瞬間にアストリア軍に攻め込まれてしまうと物理的な危機に直面してしまうことになるからな。



正規軍と陰陽師。



どちらも片方だけなら恐れるほどではないが、

両方が同時に襲いかかってくると危険度は高くなる一方だ。



…だとしたらどうする?



魔力を気にせずにアルテマで一掃するべきか?


上手くいけば一時的には安全が確保できるだろう。



…とは言え。



そのあとも戦いが続くことを考えれば得策とは思えない。


すぐ側に優奈がいてくれるとはいえ、

魔力の消費は控えるべきだ。



少なくとも優奈と徹の安全が確保できるまでは迂闊な行動はできない。



…ここには俺達3人しかいないからな。



御堂がどう動くかわからない現状では、

援軍は期待できないと考えるべきだ。



…となれば。



余分な消耗は避けるべきだろう。



俺達の目的は兵器の破壊であって、

アストリア軍を全滅させることではない。



陰陽師軍を率いるあの男だけは俺の手で殺したいとは思うが、

それはあくまでも二の次だ。



兵器の破壊という前提条件を忘れるわけにはいかない。



だとすれば…どうすればいい?



敵の数は多い。



そのうえで兵器がどういう状況なのかが分からない。



すでに稼働しているのか?


それとも停止しているのか?



そんなことさえ分からない。


それ以前に施設の内部の状況も不明なままだ。



アストリア軍は配備されているのか?


陰陽師軍は?



何もかもが分からない。



…だが。



今は何よりもまず現状を考えるべきだろう。



この施設の周辺地域一帯から集まり始めているアストリア軍によって、

すでに俺達は完全に包囲されてしまっている。



現時点でざっと4千といったところか?



当初のアストリア軍はほぼ壊滅状態でも、

陰陽師軍は健在だ。



さらには次々と現れる増援部隊によって逃げ場を失ってしまったために、

前に進むことも後方に下がることも出来ない状況に追い込まれてしまっている。



「どうしますかっ!?」



問い掛ける徹の表情には焦りしか感じられない。



「ミルク!頑張って!!」



精一杯の応援をしながら敵の接近を足止めしようと試みている優奈だが、

ミルクの力は殺傷能力が低いせいで陰陽師達の術によってことごとく相殺されているようだな。



やはり徹と優奈では陰陽師とは相性が悪いのだろう。



せめて御堂がいれば…と考えてしまうが、

ないものねだりをしても事態は改善しない。



今は自分達だけでできることを考えるしかないからだ。



こちらの戦力は3人。


対するアストリア軍は数千。



数の差は圧倒的であり、

アストリア軍は刻一刻と増え続けてしまう。



このままでは数の力に飲み込まれて敗北するか、

魔力を使い果たして倒れるかの二者択一だ。



そうなる前に打開策を考えなくてはならない。



…最善策はなんだ?


…どうすればいい?



周囲の様子を眺めてから、

とある一点に視線を向けてみる。



それは施設の入口だ。



周辺地域からは敵の増援部隊が集まり続けているのだが、

何故か肝心の施設から敵軍が出てくる様子はなかった。



どういうことだ?


アストリア軍は配備されていないのか?



内部の状況は分からないが、

仮に罠があるとしてもこのままここで消耗戦を強いられるよりはましかもしれない。



そう判断した俺は、

微かな希望を施設の内部に見出すことにした。



「徹!優奈!このままでは敵の数にのまれて敗北するのは明らかだ。そうなる前に施設へ突撃する!入口まで全力で駆け抜けろ!内部の状況は不明だが、侵入さえ出来れば敵の追撃は減らせるはずだ!!」



内部に敵がいたとしても、

ここで戦い続けるよりは少ないはず。



なにより全方位を取り囲まれている現状よりも少しは戦いやすくなるだろう。



「アストリア軍にとって兵器は守るべき存在だ。だとすれば施設に入ってしまえば大規模な攻撃はできないはず。」


「…なるほど。兵器を盾代わりにするわけですね。」


「ああ、そうだ。」


「わかりました。」



俺の指示に従って、

徹が施設の入口へと視線を向けた。



「今回は本気で『強行突破』ですね。上手く辿り着ければ良いのですが…。」


「大丈夫です!」



不安を感じる様子の徹だが、

優奈は恐れることなく微笑みを返してくれていた。



「総魔さんの判断はいつも正しいんですから!」



…正しい、か。



本当にそうだろうか?


そんな自信はないんだがな。



「あくまでも現状で考えられる最善策を考えているだけに過ぎない。」



その結果がどうなるかはその時に考えるしかないからだ。


上手くいけば続行して、失敗すれば改善する。



その繰り返しでしかないと思っている。



…だが。



「ええ…そうですね。」



自信を持って答える優奈の言葉を聞いて、

徹も俺を信じることにした様子だった。



「最期まで付き合うと決めたんです。僕も天城さんを信じます。」



信じる…か。



あまり期待されても困るが、

どうやら二人とも覚悟を決めたようだな。



「全力で走ります!!あの先にどんな結末が待っているとしても悔いはありません!」



…そうだな。



迷っていても仕方がない。



悔やむくらいなら進み続けるべきだ。


力強く告げる徹の言葉を聞いて、

俺も覚悟を決めることにした。



「…行くぞ。これが俺達の最後の戦いだ!」



もはや迷いはない。


全力で前に進むのみ!



「滅びを…!!」



精霊に指示を出したその直後に。


天使の翼から2度目の『アルテマ』が発動した。



一方的な破壊の一撃だ。



揺れる大地。


激しく鳴り響く爆発音。



アルテマによる攻撃は施設へ続く道を切り開き。


多くのアストリア軍の命を消し去ることに成功していた。



「走るぞ!!」


「「はいっ!!!」」



勢いよく駆け出す俺の後ろで、

徹と優奈も走り出した。



そしてアルテマによって一時的に崩れたアストリア軍の包囲網を突き抜けて施設の入口へと迫る。



距離はホンの数十メートルだ。



…だが。



目指す施設の入口の前には『あの男』がいる。



「ここは通さんぞ。」



錫杖を構える男はすでに護符を構えていた。



このまま陰陽術が発動すれば、

徹と優奈は回避できないだろう。



その前に動きを止める必要がある。



「邪魔だっ!!」



再びぶつかり合う錫杖と剣。


俺の行動を見ていた男は、

一歩だけ身を退いてから冷たい視線を向けてきた。



「この期に及んで感情が先走るようでは生き残れはせんぞ?」



感情が先走る…か。



特にそんなことは考えていないが、

男にはそう見えたらしい。



だとしたら、答えるべきだろうな。



「言わなかったか?『仲間は殺させない』と。」



男に対して微笑みを返しておく。


今の俺には復讐よりも優先すべきことがあるからだ。



…と言っても。



復讐を放棄するつもりはない。



この男だけは俺の手で殺す必要がある。


だが今は兵器の破壊が最優先だ。



それが出来なければ先に逝ってしまった朱鷺田達や翔子達に申し訳が立たないからな。



今は俺個人の目的よりも仲間達の願いを優先する。



「徹、優奈!二人は先に行け!!俺はここに残って敵を抑える。その間に内部に潜入して兵器を破壊しろ!」



二人に指示を出して、

男の足止めをしながら願う。



「お前達は生き残れ。必ず最後まで生き残れ!」


「天城さん…。」


「総魔さん…。」



俺の想いを受けた二人は辛そうな表情を見せていた。



そしてすぐに動き出そうとはしない二人。


そんな二人を見て、

俺は再び指示を出すことにした。



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