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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
962/1072

最後の一人

《サイド:天城総魔》



「ぐああああーっ!!!」


「…づぁぁぁぁ…!?」



幾度となく響き渡る悲鳴。


たった2度の攻撃によって、

防衛として配備されていたアストリア軍の半数の命が失われたようだ。



だが…それでもまだ半数でしかない。



単純な威力だけで見れば、

俺のアルテマは翔子に劣るからな。



翔子の一撃が万単位の殲滅を行えても、

俺のアルテマにそこまでの破壊力はない。



基本的な能力に差があるというべきか?



融合という特性によって最適化されたアルテマの威力は一切の無駄がない完璧な破壊魔術だ。



だが、俺のアルテマは複数の魔術を強引に一斉発動しているだけでムラがある。



所詮は模倣もほうという擬似的な能力だからな。



完成度の差において、

最終的な威力の差に繋がっているだろう。



俺を上回るほどの『攻撃力』。


それが翔子の成長の証だ。



もはや2度と逢うことの出来ない翔子の成長の証になる。



その実力差を実感しながらも、

悲しみを押さえつけて戦場を駆け抜けた。



「徹!優奈!内部に突撃するぞ!!」


「はい!」


「最善を尽くします!」



指示を出す俺に優奈が即座に返事を返して、

徹も迷わず覚悟を決めていた。



「行くぞっ!!」



神剣を構えながら、

残存するアストリア軍に駆け寄っていく。


そして更なる攻撃をアストリア軍に向けて放つ。



「ダイアモンド・ダスト!!!」



翔子独自の魔術だが、

今の俺なら扱いは容易い。



アルテマに比べれば遥かに簡単な魔術だからな。



格落ちの魔術なら翔子とほぼ同等の効果を発揮できる。



「凍り付け!」



光り輝く冷気の核をアストリア軍へと撒き散らして真の力を発動させた。



その瞬間に。


一瞬にして兵士達の体が凍りついた。



「…なぁぁぁっ!?」


「動け…ないっ!!」



体が凍りついて動きを止めたアストリア軍。


その間を走り抜けようとしたのたが。



「急々如律令きゅうきゅうにょりつりょう!!!」



防衛部隊を突き抜ける前に、

何者かの声が響き渡った。



陰陽術の宣言だ。


どこかに陰陽師が潜んでいるらしい。



御霊みたままもり!!!」



どこかで発動した陰陽術によって、

俺の魔術が無効化されてしまう。



「…ちっ」



陰陽師の姿を探すために足を止めてから周囲を見回してみる。



…そして。



目指していた施設の入口付近に、

一人の男が立ちはだかるのを発見した。



「あの男が陰陽師か?」



さらに観察しようとして男の顔を眺めた瞬間に、

不意に過去の記憶が蘇ってきた。



「あれは…まさか!?」



圧倒的な威圧感を放つ男。


その存在に気付いたことで、

驚愕の表情を浮かべてしまう。



「お前は…っ!!」


「…総魔さん?」


「どうかされたのですか?」



驚く俺の背後で足を止めた優奈と徹も、

俺の視線の先を追っている。



「…?」


「お知り合いですか?」



二人は不思議そうに男に視線を向けている。



そこにいるのは50代の一人の男だ。


たった一人で施設の入口に立ちはだかっている。



徹と優奈にしてみれば、ただそれだけのことだ。



…だが。



俺にとっては、それだけのことではない。



「ここにいたのか!!」



目の前の男には見覚えがある。


決して忘れることの出来ない男だからだ。



あの男の顔だけは、

15年近い月日が流れても決して忘れることはなかった。



「ついに見つけたぞっ!!」



対峙する一人の男。



この男の顔だけは忘れはしない!



かつてに記憶と比べれば、確実に歳老いただろう。



だがそれでもだ!


この顔を見間違えはしない!



その顔に残る面影と、

男から放たれる威圧感は、

以前と何も変わっていなからだ。



…いや。



むしろ、存在感は以前よりも遥かに増しているような気がしてしまう。



それほどまでに異様な雰囲気を発しているこの男こそが、

復讐のために長年探し続けていた最後の一人だった。



この男も復讐すべき相手だ。



だが俺はまだ男の名を知らない。



…それでもっ!



こそ男の顔だけは決して忘れはしなかった。



…今でも鮮明に覚えている!



この15年間。


一度も忘れたことがない。



俺が最も憎み。


最も殺したいと願っていた男。



この男こそが、アストリア最強の陰陽師だからだ。



…そして、同時に。



この男こそが、俺の両親を殺して村を焼き払った張本人でもある。



だからこそ!


この男の顔だけは決して忘れはしない!



「ずっと捜していた!!ずっとお前を捜していたっ!!」



大声で叫びながら全力で神剣を構える。



ここからはもう手加減なしだ。



その辺りにいる兵士とは格が違う相手。


油断すれば…俺が殺されることになるだろう。



その危険性を知っているために、

初手から全力で攻めることにした。



「エクスプロージョン!!!」



俺を中心として広がる紅い光。



俺自身と背後にいる徹と優奈を結界で守りながら再び力を発動させる。



「焼き尽くせっ!!」



紅の光が次々と燃え上がり。


周囲を炎が埋め尽くしていく。



激しく燃え広がる紅蓮の業火だ。



この炎を浴びれば熱い程度ではすまされない。



「あ…あああああっ!!体が…焼ける…っ!?」



業火に焼かれたアストリア軍の兵士達が次々と焼け死んでいくのだが、

それだけでしかなかった。



あの男だけは自らの体を結界で守って炎の影響を免れている。



「生温いな。」



…だろうな。



余裕を見せる男に、もう一度襲い掛かる。



「お前だけは殺すっ!!!」



殺意を込めて攻め寄ったのだが、

男は冷めた瞳で俺に問い掛けてきた。



「…ふむ。どこかで会ったことでもあったか?」



どうやら俺のことを覚えていないらしい。



だが今はそんなことさえどうでもいい。



目の前の男を殺せればそれでいいからだ。



話しかけてきた男の質問を無視して、

容赦なく切りかかっていく。



『ブンッ!!!』



勢いよく振り下ろす神剣に対して、

男はその手に持つ錫杖を突き出してきた。



かつ!!!」



気合の雄叫び。



それが陰陽術だったのかどうかは不明だが、

大声で叫んだ男の手にある錫杖が輝きを放ち、

難なく俺の攻撃を受け止めてみせた。



そして。



男は錫杖に力を込めながら

対峙する俺に話し掛けてきた。



「大した一撃だ。本来ならこの術はその剣を叩き折る威力があるはずなのだがな。」



本来なら…か。



「歳をとっても、その実力までは衰えていないようだな。」


「衰えていない…か。やはりどこかで会ったことがあるのか?」


「さあ…どうだろうな?」



はっきりとは答えずに再び攻める。


そんな俺の瞳を覗き込む男は、

覚えている範囲で過去の記憶と照らし合わせている様子だった。



…だが、な。



俺は男を覚えているが、

男は俺を覚えていないはずだ。



直接は対面しなかったからな。



もしもこの男と向き合っていたなら、

俺はすでにこの世にいなかっただろう。



両親と共に魔術師狩りによって死んでいたはずだ。



だが、俺は運良く魔術師狩りから生き延びた。



それはこの男に存在を気づかれなかったからにほかならない。



…面識のない思い出すのは不可能だ。



それでも男は記憶を遡って俺のことを思い出そうとしている様子だった。



「どこで…?」



どう考えても思い当たることはないらしい。


結局、俺が誰なのかが分からなかったようだな。



「面識はないはずだが…何かが気になるな。そう、その瞳は…」



俺の『瞳』に見覚えがあるのだろうか。



以前にどこかで『同じ瞳』を持つ者に出会っていると感じたのかもしれない。



「その瞳と、その面影をどこかで…?」



悩みながら呟く男に真実を伝えるために。


憎しみを込めて答えることにした。



「かつて…この国の東部に位置していた小さな漁村『フルーム』。その村の名を忘れたとは言わせん!」


「な…っ!?」



フルームの名を聞いた瞬間に、

男は過去の記憶を取り戻した様子だった。



「まさか…天城の血を継ぐ者かっ!?」



その事実に気付いたことで、

男は初めて動揺の表情を見せた。



「まだ生き残りがいたとはな…っ!!」



戸惑う男に全力で襲い掛かる。



「天城の名に賭けて!!お前だけは俺が殺すっ!!」



激情していたせいだろうか。



仲間の存在も。


アストリア軍の存在も忘れて。


一心に男を睨みつけていた。



「滅べっ!!!」



神剣に力を込める。


そして距離を詰めて、

男の首を斬り落とそうとした直前に。



「…いや~〜っ!!」



突如として優奈の悲鳴が聞こえてきた。



…くっ!?



慌てて徹と優奈を探してみる。



「…ちっ!」



周囲を確認してみると。


徹と優奈が陰陽師の部隊に取り押さえられている姿が見えてしまった。



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