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思い出の魔術
《サイド:美袋翔子》
『120秒』の限られた時間。
その長くて短い時間で魔術を完成させる。
その間の時間稼ぎとして理事長が限られた魔力でアストリア軍の足止めをしてくれるみたい。
「護衛は任せなさい。」
…はい。
理事長に感謝しつつ。
自分に出来る最期の魔術の詠唱を進めてみる。
残された時間はあと110秒。
全力で詠唱を急ぐことにしたわ。
目的の魔術は複雑な詠唱だけど。
私にとっては思い出深い大魔術なのよ。
たった2週間ほどしかない思い出の中で…。
大切だと思うことの出来た貴重な時間の中で…。
頑張って身につけた最高の魔術。
私が最期に願う魔術は、
やっぱり『アルテマ』以外に考えられなかったわ。
複雑な魔術理論だけど。
他には考えられないわよね?
ルーンの助けがない今の私だと、
最短でも2分の時間が必要だけど。
発動に成功すればアストリア軍を一掃することができるはずなのよ。
その微かな時間稼ぎを理事長に託して詠唱を続けていく。
残り100秒。
普段ならあっという間なのに。
追い詰められた私達にとっては永遠にも等しい時間だと思うわ。
…だけど、ね。
だからこそ限られた時間の中で、
私は大切な人達に別れを告げることにしたのよ。
最期の瞬間が訪れるその刻まで。
大切な人を想い続けることにしたの。




