別れの時
《サイド:美袋翔子》
「シューティング・スター!!!!」
真哉が叫ぶのとほぼ同時に、
戦場を吹き抜ける風がラングリッサーへと集まり始めたわ。
…なに、これ?
竜巻のようにも見える暴風。
真哉の全ての力を込めたラングリッサーが、
膨大な風を纏って眩しいほどの輝きを放っているのよ。
…これは、なんなの?
光り輝く『ラングリッサー』
その光に恐れを抱いた兵士達が恐怖を感じて足を止めたその隙をついて、
私と理事長は真哉に向かって走り出してた。
「真哉っ!」
「北条君!!」
慌てて駆け寄った私達の目の前に立つ真哉の怪我は…立っていることが不思議なくらい危険な状態に思えたわ。
それなのに。
真哉は最後まで強がってみせたのよ。
「ははっ。正規軍って言っても、大したことは…ねえな。俺にビビって…動きを止める程度で、俺達を、殺そうなんて…笑わせやがる。」
無理に微笑む真哉は振り返らない。
…ううん。
振り返れないのよ。
…もう。
振り返る力さえないみたい。
だから、かな。
体を襲う激痛を堪えながら。
アストリア軍に視線を向けたまま。
私に語りかけたのよ。
「あいつ等は…俺が潰す。だから、翔子…お前は生き残れ、生きて、幸せに…なれ…。」
最後まで自分の想いを口に出さずに、
私の幸せを願ってくれたの。
決して弱音を吐かない真哉の『想い』
命懸けの優しさを感じてしまったことで、
いつの間にか涙を流してた。
「馬鹿…言ってるんじゃないわよ。あんたを犠牲にして…幸せになんて、なれるわけないじゃない…っ。」
想いを堪え切れずに、
涙を流してしまっていたの。
そんな私に。
真哉は最後まで強がり続けたわ。
「はっ。馬鹿は…お前だ。泣くんじゃ…ねえ。いいか?俺が、お前を…守ってやるって、言ってるんだ。だから…だからお前は…心から感謝して、最後まで笑え。お前の…笑顔が守れるのなら…それだけで、俺が命を賭ける価値が…ある。だから、翔子。お前は…生きろ。生きて、あいつと幸せに…なれ。それが…俺の望みだ。」
自分との幸せじゃなくて。
ただ一心に。
私の幸せだけを願ってくれたのよ。
「真…哉ぁぁ…。」
「…ははっ。泣くな…翔子。」
真哉の態度は変わらない。
強気で強引な性格も。
馬鹿すぎる優しさも。
何も変わらないのよ。
…最後の最後まで。
自分勝手な意地を貫き通して。
自分の気持ちを心に秘めたまま。
最期の時を…迎えようとしているの。
「…悪いが、翔子。龍馬と、沙織に…一つだけ、伝えてくれないか?お前達と、出会えて…楽しかった、ってな…。」
「い、嫌よ!言いたかったらちゃんと自分で言いなさいよっ!!」
「…まあ、そうだな。」
泣き叫ぶ私に振り返ろうともせずに。
曖昧な笑顔を浮かべた真哉は、
想いを胸に秘めたまま、
最期の別れを告げてきたのよ。




