雑魚ばっか
《サイド:北条真哉》
ちぃっ!!
理事長も魔力が尽きたのか!!
その事実に気付いた直後に。
「魔術師を殺せーーっ!!!!」
「「「「「うおおおおおお!!!!!!」」」」」
アストリア軍の兵士達が雄叫び上げながら次々と襲い掛かってきやがった。
…くそっ!
ここまでかっ!
「真哉ぁぁぁぁっ!!!」
「北条君っ!?」
翔子と理事長の二人の叫び声が戦場に響き渡った次の瞬間。
…二人の耳には最も聞きたくなかった音が届いただろうな。
「がっ…!?ぐ…うぅっ…!」
複数の槍に突き刺された俺は、
あっけなく地面に倒れ込んでしまっていた。
…ははっ。
ざまあねえな。
もはや痛えとか、そんな考えすら思い浮かばねえ。
そんなことよりも。
このまま死ぬんだろうなっていう実感みてえなものが心の中を支配していたからだ。
…ったく、なさけねえな。
背中の傷口は更に広がって、
全身を突き刺す刃によって体中から真っ赤な血が溢れ出る。
「ぐぅっ…ああああああああああああっ!!」
激痛が体中を駆け巡って意識を失いそうになりなるが、
それでも残された力を振り絞ってラングリッサーを振り回し続けた。
気合だけの狙いも何もない強引な攻撃だ。
まともに当たるとは思ってねえが、
風を切る音が周囲に響くのと同時に、
俺を取り囲んでいた兵士達の体は二つに分かれたようだ。
「っ!!!」
「がっ…!?」
「ぅあ…っ!!!」
…ははっ。
雑魚ばっかだな。
次々と崩れ落ちる兵士達と共に抜け落ちる槍の刃。
そのせいで傷口から更なる出血が溢れて激しい目眩を感じてしまう。
…まあ、雑魚は俺も同じか。
戦場で倒れれば結果は同じだからな。
倒れたアストリア軍と同じように。
ただ屍を晒すだけだ。
…なら。
まだ、倒れるわけにはいかねえだろ?
俺をその辺の雑魚と一緒にされるのはいい迷惑だからな。
「…まだだっ!まだっ!!」
必死に立ち上がる。
そしてアストリア軍に立ちふさがる。
体中を襲う激痛に耐えるために、
歯を噛み締めながら堪える。
溢れ出る出血は、すでに致死量か?
それでも立ち上がってラングリッサーを構え続けた。
「死なせねえ!俺がいる限りっ!絶対に翔子には近づけさせねえっ!!!」
必死に叫んでアストリア軍を威圧する。
…でも、な。
気力だけで、体は動かねえ。
もう今の俺にはこの場所から駆け出す力すら残されてねえようだ。
だから、か?
「真哉っ!すぐに助けるから!」
「北条君!!逃げてっ!」
周囲の敵を退けた翔子と理事長が、
俺に駆け寄ろうとしている様子だった。
その気持ちはありがてえが、
いまさらもう手遅れだ。
どうあがいたって俺はもう助からねえ。
だから翔子達が駆けつける前に覚悟を決めることにした。
「絶対に守ってやるっ!!」
意思に反して動かない体だ。
どれだけ願っても。
どれだけ望んでも。
もはや立っているのが精一杯だ。
だけどな?
それでも最後まで立ち向かう覚悟を見せ続けるしかねえ。
逃げるのは趣味じゃねえからな!
例えその先に待つ結果が死であったとしてもだ!!
「翔子は必ず守り抜くっ!それが俺の戦いだっ!!!」
戦場に轟く俺の声。
その気合いにびびったのか、
アストリアの兵士達は一様に体を震わせていた。
…ははっ。
やっぱり雑魚ばっかじゃねえか。
決死の覚悟でラングリッサーを構える俺の姿を見て、
訓練を詰んだ兵士達でさえ恐れを抱いてるんだぜ?
だったら、逃げるわけにはいかねえよな?
雑魚を相手に逃げ出したなんて思われたら俺の名が廃るってもんだ。
なあ、そうだろ?龍馬。
ここにいない相棒の名を思いながら最後まで戦う意思を示してみせる。
「必ず守り抜く!!ここは…俺が通さねえっ!!」
全力で叫び続ける俺の手のルーンが。
魔力から生み出されたラングリッサーが。
俺の想いと共に激しく輝きだす。
「もう、悔いはねえ!!この俺の『命』!!欲しければくれてやるっ!!だが、それだけだ!翔子にだけは絶対に手出しをさせねえっ!!!」
大声で叫んだ俺は。
この体に宿る全ての力と。
この心に誓う全ての願いを。
ラングリッサーに注ぎ込んだ。
「これが…っ!これが俺の実力だっ!!!」
全ての想いを込めてラングリッサーを振りかざす。
見てろよ、親父。
これが俺の『最期の力』だ!!!




