剣の使い方
《サイド:武藤慎吾》
「悠理を守り抜くぞっ!!」
「はいっ!!」
必死に戦い続けるお兄さんの想いに僕も付き従っていた。
「悠理もお兄さんも死なせません!!」
慣れない剣を振り回しながら戦場を走り続ける。
その途中で幾人もの陰陽師を斬り殺して、
沢山の返り血を浴びながらも戦い続けた。
「邪魔だっ!」
立ちふさがる陰陽師を斬る!
斬る!
斬る!!
時々、空ぶったり、
当たりそこなったりもするけどね。
至近距離に接近できれば陰陽術を受ける心配が少ない。
安全とは言い切れないけれど。
まともな武器を持っていない陰陽師に攻撃を防がれることも少なかったんだ。
もちろん接近するまでが命懸けなんだけどね。
それでも剣が届く範囲まで近づければ、
なんとか戦うことはできた。
…まあ、接近するまでが本当に大変なんだけどね。
何度も陰陽術がかすめて死にそうになっていたから冗談抜きで命懸けだと思う。
実際に1、2回ほど直撃を受けて吹き飛んだ時には意識がなくなるかと思ったしね。
たまたま近くにいた魔術師が治療してくれたおかげでなんとか死なずに済んだけど。
出来ることなら直撃は避けたいと思ってる。
「まだまだ戦えるっ!!!」
体はまだ動くんだ。
一歩でも前へ。
そして陰陽師を斬る!
それだけで僕やみんなの生存率が上がるはず。
「まだまだぁぁぁぁっ!!!」
何度も何度も陰陽師に襲い掛かっていく。
突撃!
攻撃!!
突撃!
攻撃!!
その繰り返しだ。
僕に出来ることなんてそれくらいしかないって分かってる。
学園でも、戦場でも、
僕に出来るのはそれだけなんだ。
「ただまっすぐに突き進む!!!!」
敵の攻撃を突き抜けて、
精一杯の攻撃を叩き込む。
それが僕の理想で、
僕の目指す戦いなんだ。
「うおおおおおおおおおっ!!!!!」
次々と放たれる陰陽術を突き抜けて、
目の前の陰陽師に斬りかかる。
「倒れろっ!!!」
下段から斜め上に切り上げた。
今回の一撃は上手くいったんじゃないかな。
肉を断つ感触をはっきりと感じたんだ。
今の攻撃は間違いなく致命傷だったと思う。
斬られた陰陽師は口から血を吐きながら、
そのまま地面に倒れ込んでいたからね。
「何となく分かってきたかも…?」
必死で戦っていたからかどうか分からないけれど。
剣の使い方…と言うか、
斬り方が分かってきた気がするんだ。
ただ単に力任せに振るよりも、
剣の重さを利用して振るほうが自然と刃が通る気がした。
偶然かもしれないけれど、
楽に振り回せる気がしたんだ。
「こう、かっ!?」
振り上げていた剣から力を抜いて、
地面に落ちようとする重力を利用して振り下ろす。
そしてすぐ側にいた別の陰陽師の頭部に狙いをつけて少しだけ力を込めると…
うわっ。
ちょっと直視できない状況になってしまっていた。
陰陽師の頭部が斜め半分に割れて即死したからだ。
「え、えぐい…っ!?」
頭部に見えてるアレって、
やっぱり…脳…だよね?
自分でやっておいてどうかと思うけれど。
魔術とは違う物理的な攻撃は、
精神的にキツイ気がしてしまう。
自分自身の手で人を殺しているという感覚をどうしても感じてしまうし。
血の匂いまで付きまとうからだ。
正常な精神状態なら、
間違いなく発狂してしまうんじゃないかな?
そんなふうに思うけれど。
そう思う時点で僕はもう正常じゃないのかもしれない。
死体を見てもえぐいと思うだけで怖いと感じていないんだ。
悠理を守るためとは言え。
僕は何か大事なものをなくしてしまったんじゃないかな?
そんなふうにも思うけれど、
今は深く考えないようにした。
考えてしまったら、
戦えなくなる気がしたからね。
だから何も考えないようにしたんだ。
僕に出来ることは突撃することだけだから。
それさえ分かっていればそれで良いんだ
何も怖くない。
何も恐れない。
守るべき悠理の為に戦い続ける。
それだけで良い。
それだけで良いんだ!!
悠理の援護を受けながら包囲網の突破を目指す。
遊撃部隊の一員として、
一人でも多くの陰陽師を殺していく。
ただ、それだけだ。
そのためだけに剣を振り回す。
「どけぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
陰陽術を耐えて、
血を浴びながら走り続ける。
ひたすら前へ。
前へ!
前へ!!
血まみれの剣で陰陽師を殺して一直線に走り抜ける。
その間に僕は何人の陰陽師を殺したんだろうか?
自分でもわからない。
ただただ必死だったから。
自分でも自分が何をしていたのか、
はっきりとは覚えていないんだ。
…だけど。
…それでも。
走り続けた結果が、目の前にあった。
「やったっ!!!」
ついに終わりが見えたんだ。
包囲網によって逃げ場を失って、
完全に追い詰められて、
壊滅の危機にあった共和国軍だったけれど。
悠理の作戦によって陰陽師軍は迎撃に失敗した。
その結果として。
僕達はついに。
陰陽師軍の包囲網を突き抜けようとしていたんだ。




