自分で思うほど
《サイド:近藤悠護》
「よしっ!!!」
悠理の援護のおかげで陰陽師軍への突撃は成功したぞ!
「このまま包囲網を突破するぞっ!!全力で突き抜けろーっ!!!」
大声で叫び続けて遊撃部隊に指示を出す。
そのまま俺も包囲網の切り崩しにかかろうとしたのだが、
その前に隣に並ぶ雨宮が微笑みながら話しかけてきた。
「凄いですね、妹さん。一瞬で敵の攻撃を判断して相殺の指示を出すなんて、あれは私にも出来ません。」
軍を指揮する立場として常に冷静沈着に物事を判断することを心掛けている雨宮だったが、
それでも素直に悠理の実力を認めてくれていた。
「一瞬の判断力…。あれは天性の才能でしょうか?」
才能…か。
どうだろうな?
俺が知る限りではそんな才能があったようには思えないのだが、
俺が知っているのは何年も前の幼い頃の悠理だ。
ここ数年の間に何を学んで、
どう成長してきたのかは何も知らない。
だから雨宮の問い掛けに、
どう答えるか悩んでしまう。
…いや。
正確に言えば悩むまでもないな。
何も答えられなかったと言うべきか。
落ちこぼれと認識されてきた悠理との関わりを避けて、
長い間、離れて暮らしていた俺には答えられることが何もなかったからだ。
何も…な。
「どうだろうな?俺にも分からない。」
分からないと答えるのが精一杯だった。
兄として妹に命を預けることは出来ても、
妹の話をすることは出来なかったからだ。
その事実に今更ながら気付いてしまった。
「…ははっ。」
俺は駄目な人間だな。
改めてそう思う。
人を救うことを目指して軍隊に志願したにも関わらず、
俺は妹のことを何一つ知らずに冷たくあしらっていたのだ。
その事実に気付いてしまったことで、
自分で自分を嘲笑っていた。
「自分で思うほど優秀な人間ではなかった…ということか。」
落ちこぼれなのはどっちだ?
魔術師としての才能がなかった悠理か?
それとも妹のことを何も知らずにいる俺か?
その答えがどちらか?などと…考えるまでもないだろう。
結局はどちらも同じということだ。
妹のことを何も話せない時点で兄としての俺の存在はその程度でしかない。
誰かを救うという名目を掲げる前に、
家族を救う努力をするべきだったのだ。
そんな簡単なことを今更ながらに実感してしまった。
「情けないものだな…。」
俺はその程度の男だったということだ。
雨宮に聞こえない程度の小さな声で呟きながら、
心の中で悠理に謝罪していた。
…すまない、悠理。
俺は兄として何もしていなかった。
妹のことを何も知らず。
知ろうとすらしなかった。
その結果が今の俺だ。
…すまない。
「悠理。」
後方にいる妹を想いながら、
この手に力を込める。
「これ以上、悠理に悲しい思いをさせはしないっ!!この戦いは…必ず勝って見せる!!!」
誓いを立てて戦場を突き進む。
ただ妹を守る為だけに。
俺も戦場を駆け抜けた。




