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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
928/1071

食事

『総魔へ』と書き出された手紙の続きには、

翔子の想いが込められていた。



『ねえ、総魔。この手紙を総魔が読んでるってことは、私はそこにはいないんだよね?何かの事情ではぐれただけなら良いんだけど。もしもそうじゃなかったとしたら、ちょっぴり淋しいかな。』



…何かの事情か。



どうだろうな。



現時点ではそう言えるのかもしれない。



だが翔子はまだ生きている。


魔力の波動はまだ消えていないからな。



北条と美由紀と共に行動しているのは間違いない。



もちろん今からでも合流に向かうことはできるが、

今は兵器の破壊が優先だ。



砦に続いてふもとの荒野まで狙われたら翔子達まで犠牲になりかねない。



その危険性を排除するためには、

早急に兵器を破壊する必要がある。



…せめて御堂が動ける状態なら。



俺か御堂のどちらかが救出に向かうことができるだろう。



だが、現状では御堂には期待できない。



この状況で俺がこの場を離れてしまえば、

優奈と徹だけでは兵器の破壊は難しくなる。



翔子達が力尽きるのが先か、

兵器による攻撃が先かはわからないが。



救助に向かった先で兵器の攻撃を受ければ、

兵器を破壊に向かえる者がいなくなってしまうだけだ。



そうなれば共和国の敗北は確定してしまうだろう。



そしてそれは同時に。


すでに死んでいった朱鷺田や三倉や愛里の想いを無駄にすることにもなる。



それだけは許されない。



個人的な感情で目的を見失うわけにはいかないからな。


翔子達を助けたいとは思うが今は救助に向かえない。



相反する思いを考慮しながら、

翔子の想いが綴られた手紙読み進めていく。



『だからこの手紙を残しておくわね。面倒くさがらずにちゃんと最後まで読んでほしいな。』



翔子の願いが記された文章。


その続きには俺を心配する言葉が書き連ねられていた。



『ねえ、総魔。総魔は今どこにいるのかな?怪我はしてない?ちゃんと元気にしてる?ご飯はちゃんと食べてる?心配だから、少しだけだけど取り分けておいた食糧を鞄の中に詰めておくわね。だから食欲がないとか、お腹が空いてないとか、わがまま言わないで、ちゃんと食べてね。』



ああ…なるほどな。


そのための食料か。



翔子が書き記した一文を読んでから、

再び鞄の中へと視線を向けてみた。



ずっしりしたと重量感のある俺の鞄。


そこに詰められている荷物の大半は食糧だ。



翔子が俺の為に用意してくれていた物らしい。



それらを眺めながら記憶をさかのぼってみる。



最後の食事。



それはいつだっただろうか?



はっきりとは覚えていない。



おそらくまともに食事をとったのはノーストリアムでの宿の食事が最後だったのではないだろうか?



王都に向かってからは食事をとった覚えがないからだ。



「食事か…。そんなことを考える余裕もなかったな。」



小さく呟いてから翔子の気持ちに感謝しつつ、

鞄の中から食糧を取り出してみる。



「翔子が用意してくれた物らしい。休憩のついでに食事を済ませておいたほうがいいだろう。」



全ての食糧を鞄から取り出す。


量はかなりあるな。



一食分ではなく、一日分だろうか?



3食分だとすれば、

3人で分けてちょうどいいのかもしれない。



鞄から取り出した食糧を適当に分けて優奈と徹に手渡しておく。



「徹と優奈も食べておけ。次の食事がいつになるか分からないからな。」


「私も…貰って良いんですか?」



遠慮しようとする優奈だが、

残しても仕方がない。



「俺一人で食べ切れる量でもないからな。3人で分けて丁度良いくらいだろう。」



優奈に答えてから、徹にも話し掛ける。



「食欲はないかも知れないが、今のうちにしっかりと食べておいたほうがいい。俺もそうだが、徹もまともに食事をとっていないだろう?」


「え…ええ。そうですね。王都で愛里ちゃんと一緒に食事をしたのが最後ですね…。」



昨日のことを思い出してしまったのだろう。


徹は瞳に涙を浮かべていた。



「出来ることなら…これからもずっと、そうであって欲しかったのですが…。」



愛里はもうどこにもいない。


現状では遺体の回収すら難しいだろう。



落ち込んだ様子で嘆く徹は、

その手の食糧をじっと見つめている。



「愛里ちゃんを王都に残してきたことが、ただ一つの心残りです。叶うならばマールグリナに連れて帰って、ちゃんと見送ってあげたいのですが…。」



その時間も余裕もなかった。



この戦いが終わったあとで愛里を迎えに行くことはできるかもしれないが、

今はどうすることもできない。



「もしもこの戦いが終わって生きて帰ることが出来たなら…その時は愛里ちゃんを迎えに行って、二人でマールグリナに帰りたいと思います。」



精一杯の想いを告げる徹だが、

優奈は何も知らないだろう。



王都で何があったのか?



愛里という人物がどんな少女だったのか?



何も知らない優奈だが、

徹の表情からその心を察した様子だった。



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