休息の理由
《サイド:深海優奈》
御堂先輩と別れたあと。
森の中を駆け抜ける総魔さんと栗原さんと私の3人は、
ようやく目的の施設を発見しました。
「…建物がありますね。」
とても大きな建物です。
山の斜面に隣接している…と言うか、
斜面から伸びている感じでしょうか。
鉱山の入り口みたいな感じです。
建物の後半分くらいが山の中に隠れていて、
入り口と思われる周辺には数え切れないほど多くの兵士さん達が警備をしています。
国境の砦と比べると小さく思えてしまいますけど。
それでも検定試験会場くらいの大きさはあるのではないでしょうか?
見た目は平屋の建物ですけど。
兵器は地下に設置されるそうですので、
おそらく地面の下に向かって階層があるはずです。
あくまでも王都と同じであれば…という話ですけど。
ひとまず内部に関しては、
入ってみなければ分かりません。
…ですが。
施設から光が放たれているのは確認できましたので、
ここに兵器があるのは間違いないと思います。
徐々に弱まっていく兵器の光。
施設の内部から溢れ出る光は時間の経過と共に弱まって、
やがて輝きをなくしました。
「ようやく見つけましたね。兵器がまだあると王都で聞かされた時にはどうなるかと思いましたが、どうにかここまでたどり着けましたね。」
「ああ。」
呟く栗原さんの言葉を聞いた総魔さんが頷いています。
「あの施設を襲って兵器を破壊すれば、今度こそ戦争は止まるはずだ。」
…だと、良いんですけど。
「すぐに行くんですか?」
「…いや。」
問い掛けてみたのですが、
総魔さんは首を左右に振ってから答えてくれました。
「偵察を兼ねて少し様子を見よう。施設の周りはアストリア軍が警備を行っているからな。魔力の回復も兼ねて、少し休憩をとった方がいいだろう。」
…そうですね。
見える範囲だけでも数百名のアストリア軍が確認できますので、
ここから見えない場所や施設の内部を考慮すると、
まだまだ隠れている兵士は数多くいるはずです。
…ですが、本当は。
偵察ではなくて別の目的があるのではないでしょうか?
栗原さんと私には偵察と説明していましたけれど。
本心は別にあるはずです。
…きっと、そうですよね?
そう思う理由は、
途中で別れた御堂先輩とまだ合流できていないからです。
御堂先輩がもう一度立ち上がる意志を持って、
この場に駆け付けてくれるのを待っているのではないでしょうか?
沙織先輩を失った御堂先輩。
その悲しみは決して消えないと思います。
…忘れることも。
…乗り越えることも。
難しいと思うからです。
それでも総魔さんは説得しようとしていましたけれど。
御堂先輩には聞こえていなかったと思いす。
それ程に御堂先輩の心は壊れてしまっていたからです。
…これからもずっと。
御堂先輩は沙織先輩を失った苦しみを背負わなければないけません。
そんな御堂先輩にかける言葉を、
総魔さんは持っていませんでした。
もちろん私も同じなのですが、
栗原さんも何も言いませんでした。
だから総魔さんは決断したんだと思います。
御堂先輩を信じて待つことを。
決めたんだと思うのです。




