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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
923/1080

孤立

《サイド:近藤悠護》



…どうなっているんだ!?



地震が発生してから十数分。



いまもなお、

地震が止まる気配はなかった。



「一体、この地震はいつまで続くんだ!?」



よほど震源地に近くなければ、

この余震はありえないだろう。



震度はどのくらいだろうか?



体感では判断できないが、

災害規模なのは間違いないはずだ。



「隊長!南方に光を確認しました!」



突然の出来事に戸惑う俺に部下の雨宮が報告してくれる。



「やはりあれは砦からだと思います。おそらくは王都同様に砦で兵器が発動したのではないでしょうか?」


「くそっ!また兵器か…っ!」



王都に続いて砦も崩壊したということか?



だとすれば…その被害は?



考えたくもないが、

王都と砦ではその規模が全く違う。



いくら巨大な砦といえども、

町の大きさと比べれば遥かに小さな規模でしかないからな。



その差を考えれば兵器が起こした惨状は容易に想像できてしまうだろう。



王都を壊滅できる威力の兵器が発動したのだ。



小規模の砦となれば一撃で消滅するはず。



…だとすれば、だ。



必然的に答えは出てしまう。



砦にいた者達の命も消し飛ぶに決まっている!



「砦に残した部隊は…全滅か…っ!」



その場にいたはずの仲間を思って悔しさを感じてしまう。



砦には多くの魔術師がいたのだ。


中には友と呼ぶべき者達もいた。



そしてなにより。



心から尊敬する鞍馬総司令官がいたのだ。



「鞍馬様…。」



兵器が砦を狙ったのなら、

出てくる答えは一つしかない。



共和国軍が砦を制圧したことで、

アストリア軍は自爆覚悟で兵器を発動させたということだ。



それ以外には考えられない。



「鞍馬様は亡くなられたか…っ。」



事実は不明だが、

可能性を否定するのは難しいだろう。



誰よりも共和国の安定を願い。


常に最前線に立ち続けていた鞍馬総司令官の死に悲しみを抱くと、

傍にいる雨宮も落ち込んだ様子で頷いていた。



「おそらく…残してきた仲間達と共に、お亡くなりになられたかと思います。」



…だろうな。



雨宮の言葉は事実だろう。



兵器の発動が砦でなければ鞍馬総司令官が生きている可能性はあるが、

光が見えた方角は間違いなく砦方面だ。



その周囲に攻撃対象となるような拠点は何もない。



そして何もない場所を兵器が狙う理由もない。



この地震が兵器の攻撃による振動であり。


光の見えた方角が砦方面である以上。



もはや疑う余地はないだろう。



兵器によって、砦が攻撃されたのだ。



おそらく砦での戦いは共和国軍の勝利が確定したと思われる。



砦に布陣していた10万の軍勢は全滅。


幹部の捕獲まで進んでいたのだろう。



その結果として。



おそらくアストリアは最後の抵抗として、

砦そのものを兵器によって破壊したのだ。



そうすることで。


敗北の事実を隠蔽して、

共和国軍の部隊も一掃しようと企んだのだろう。



その犠牲として鞍馬総司令官も巻き込まれ、

砦と共に消え去ったと考える以外に思い浮かぶ可能性はない。



「…だとすれば…?」



ここで一つの問題と直面することになる。



鞍馬総司令官と仲間達の死を悼む気持ちはもちろんあるが、

今はそれ以上に考えるべき問題が発生してしまっているからだ。



…それはつまり。



共和国軍の戦力が足りないという問題だ。



砦に残してきた部隊は全滅したと考えるべきだろう。



だとすれば。


もう援軍を期待することはできない。



本来なら砦を制圧した鞍馬総司令官の部隊が後続として駆けつけて合流する予定だったのだが、

半数に分けた1万2千の部隊が全滅してしまったのだ。



敵地のど真ん中で孤立してしまった俺達に駆けつけてくれる部隊は存在しない。



…つまり。



俺達は残された戦力だけで陰陽師軍を撃退して、

先行した米倉代表のあとを追わなければならないということになる。



「…援軍はもはや期待できない。それでも陰陽師軍を退けることができるか?」



こちらの戦力はおよそ7千だ。


対する陰陽師軍は約2万。



開戦当初を思えば、

かなりの差を埋めることができたが、

それは米倉代表や優秀な生徒達がいたからだ。



突出した攻撃力を持つ人物がいたおかげで陰陽師軍を減らすことができていた。



…だが。



現在、米倉代表達はここにはいない。



兵器の破壊のために先行しているからだ。



ここに残った戦力ももちろん優秀ではあるのだが、

敵が単なる兵士ではなくて陰陽師というのが問題になる。



こちらの魔術を妨害されてしまい。


上手く攻撃を与えることができずにいるからだ。



もちろん陰陽師の攻撃もこちらは必死に対処している。



…とはいえ。



多勢に無勢という状況だ。



数の力に飲み込まれずに、

耐えしのげているだけでもまだましだろう。



「鞍馬総司令官の部隊が駆けつけられれば勝てると思っていたのだが…。」



もはや数の劣勢はくつがえせない。



「俺達だけで何とかするしかないようだな」



どうすれば良いのかなんて、

正直に言えば俺にも分からなかった。



ほぼ同等の実力を持つ敵部隊に対して、

半数以下の戦力で戦わなければならないのだからな。



普通に考えれば勝ち目などあるはずもない。



だがここで俺が諦めてしまえば、

部隊全体の士気に影響してしまうだろう。



指揮官は常に戦況を把握して策を考慮し続ける義務があるのだ。



例えどれほどの劣勢であっても、

諦めることは絶対に許されない。



それは多くの仲間の命を預かる者として決して許される行為ではないからだ。



「やるしかない。例え全滅が確定しているとしても、一人でも多くの陰陽師を倒して米倉代表の後方を守るのが俺達の役目だ。」


「ええ、そうですね。共和国のために…最後までお供します。」



明らかに劣勢な状況にあっても逃げ出すことなく付き従ってくれる雨宮と共に再び戦場に視線を戻してみる。



魔術と陰陽術が交錯する戦場。



刻一刻と流れていく時間と共に、

両軍の死者は数を増やし続けて多くの死体が戦場に残されていく。



…この状況で勝てるとは思えない。


…だが、負けるわけにはいかない。



「戦い続けるぞ!!」



多くの仲間を失い続けている現状に対して込み上げて来る悔しさを堪えながらも、

力強く握るこの手のルーンを誇り高く掲げて宣言する。



「共和国は決して最後まで諦めない!!この命がある限り最期まで戦い抜き、必ず勝利を手にして見せる!!」



強く…強く宣言する。


それが指揮官の役目だ。



「勝利への道は俺が切り開いてみせる!!総員、徹底的に陰陽師軍を蹴散らせっ!!」


「「「「「うおおおおおおおおーーーーー!!!!」」」」」



俺の鼓舞によって、

ひとまず士気は高まってくれたようだ。



「アストリア軍を押し戻せーーー!!!」


「魔術師の力を見せ付けろっ!!!」


「突撃だーーーっ!!!」



3倍近い陰陽師の軍に取り囲まれながらも、

最期まで抵抗を試みる共和国軍。



その必死の抵抗によって、

ささやかながらもアストリアの包囲網が緩みつつあるように思える。



…だが。



それは一時の出来事でしかない。



圧倒的な兵数の差によって、

再び動きを止められてしまうことになるからだ。



共和国軍に残された戦力はおよそ7千。


陰陽師軍の3分の1程度でしかないのだ。



その差は歴然であり。


とても勝ち目のある戦いではない。



「なんとか突破方法を考えなくてはっ!」



必死に思考を張り巡らせながら最前線で戦い続ける。



一瞬の油断が全滅に繋がるのだ。



どんな些細な異変にも即座に対応しなければならない。



「陰陽師軍の指揮官を狙うか?」



敵軍を混乱させる手段としては、

それなりの効果は期待できる。



だが、2万人に及ぶ陰陽師軍の中から指揮官を探し出すのはなかなか難しい作業になるだろう。



例え上手く見つかっても魔術による狙撃は防がれてしまう。


だからと言って接近戦に持ち込むのはさらに難しい。



すでに全方位を取り囲まれている状況だからな。



下手に突出しすぎれば各個撃破の対象になってしまうだけだ。



「ならば包囲網の弱点である壁の薄さを逆手にとって強行突破を試みるか?」



全方位を取り囲まれているということは、

全ての方面において敵部隊の戦力は最小限ということでもある。



2万の大群に突撃するのは玉砕覚悟になるが、

一千程度の軍勢に突撃するだけならそれほど難しい作戦ではない。



問題は包囲網の突破にあたって後方からの追撃に対してどこまで対応できるのかという部分だが、

無事に包囲網を突破できてもかなりの被害を出してしまうのは避けられないだろう。



「何か他に方法はないのかっ!?」



自問自答してみても、

すぐに答えが出るわけではない。



すでに全員がギリギリの戦いを強いられているのだ。



起死回生の一手など。


そうそう思いつくものではなかった。



「俺が単独で先行するか?」



部隊ではなくて個人であればある程度は自由に小回りが利く。



輝く白銀の長剣『アルビオン』を振り回して迫る陰陽師を徹底的に斬り伏せてみる。



だが、やはり突破は難しいだろう。



俺一人の活躍だけで包囲網を破ることは出来ないからだ。



多くの仲間達の援護を受けても包囲網を崩せないのに単独で突破できるわけがない。



「どうするっ?」



早急に次の方針を決めなければならない。



何もしなければ数の差によって確実に疲弊していくからだ。



その焦りは周囲の魔術師達にも広がりつつあり。


俺達は確実に追い詰められている。



「このままではまずいな」



必死に策を考えるが、

有効な一手はなかなか思い浮かばない。



雨宮奈津と尾形久志の二人の副隊長を従えながら突撃を敢行してみるものの。


包囲網を崩すにはやはり戦力が足りていない。



「どうすればいい!?」



焦りを感じながらも戦闘を継続していると。


部隊の中央で待機していたはずの悠理が、

突然俺達の側に駆け寄ってきた。



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