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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
921/1080

真哉の想い

《サイド:美袋翔子》



あ~っ!!


もうっ!!!



あの馬鹿はっ!!


どうして、そんな無茶をするのよっ!?



本当は苦しいくせにっ!


本当は辛いくせにっ!



「何で…何で逃げないのよっ!?」



走り続ける真哉の後ろ姿を、

私は涙を浮かべながら眺めてた。



どうして逃げないのよ?


どうして無理に戦い続けるのよ?



それが私には理解できなかったのよ。



「逃げればいいじゃないっ!!」



こんなところで死ぬ必要なんてないじゃない。



命をかけてまでアストリア軍を殲滅しなくたって、

兵器の破壊さえ出来ればそれで済む話じゃないの?



仮にそんな簡単な話じゃないとしてもね。



逃げれば助かる可能性があるのに。


戦い続ける必要なんてどこにもないじゃない!



…そんなふうに思うんだけど。



真哉にとってはそういうことじゃないみたい。



「…いい加減に気付いてあげなさいよ。」



何故かね。


理事長が悲しそうな目で私を見ていたわ。



…気付く?


…どういうこと?



「気付くって…何をですか?」


「…はぁぁぁ。」



尋ねてみるとね。


何故か思いっきりため息を吐かれてしまったのよ。



「ホントに…翔子は肝心なことが見えてないのね。」



肝心なこと?



そんなふうに言われても。


分からないものは分からないんだけど?



「どういうことですか?」



理事長は気付いていて。


私が気付いていないこと?



それが何なのかを訊ねてみると。


理事長は予想外の言葉を告げてきたわ。



「あのね…?北条君は翔子のことが『好き』なのよ。」


「え…っ!?」



…ええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?



全く!


全っ然!!



1ミリも想像もしてなかった言葉だったのよ。



…あの真哉が?



いっつも文句ばっかりで?


まったく人の話を聞かないのに?



私のことを?



…好き?



どういうことなの?



…って、言うか。



何をどう考えたらその考えにたどり着けるの?



「真哉が、私を、ですか?」


「ええ、そうよ。どう考えても、それ以外の理由は考えられないでしょ?」



いや、むしろ、どう考えても、

その理由にたどりつけないんですけど?



「どうして…?」



いつもいつも、喧嘩ばかりしてたのよ?



それに普段は見下されてた覚えしかないし?


実力的に私が上になっても文句ばっかりだったのよ?



今にしてもそう。



一方的に命令するばかりで、

全然言うことを聞かないわよね?



それなのに。


私のことが好きとか言われても、

いまいち理解できないわ。



「本当にそうなんですか?」


「この状況でもそんなふうに言える翔子がある意味で凄いと思うけれど…ちゃんと考えてあげるべきだと思うわよ?」



理事長的には確定みたい。



…でもね~?



ことあるごとに喧嘩ばかりしてたのよ?



お互いに意見をぶつけあって、

対立してた思い出ばかりなのよ?



自己中で。


自分勝手で。


自由気ままな奴なのよ?



人の言うことは全然聞かないし。


自分のやりたいことしかしないような奴なのよ?



「ホントに…?」



考えれば考えるほど理解できなかったわ。



だけど…ね。



もしかしたら?って思うことはあるかも?



素直なやつじゃないから分かりにくいけど。



私と同じで自分の気持ちをはっきりと言えないだけなのかもしれないのよね?



だからもしもそうだとすれば、

何となく理解できることもあるの。



どうして真哉だけは総魔と距離をとるような行動をとっていたのかな?



その理由がね。



もしも私のことが好きだったからだとしたら、

説明できる気がするのよね。



…たぶん。


…きっと。



真哉は気付いていたのよ。



私が総魔を想ってることを。



真哉は気付いていたのよ。



…だから。



だから真哉は総魔との関わりを避けていたのかもしれないわ。



私が総魔を好きなことを知っていたから。



だから真哉は総魔に心を開くことが出来なかったんじゃないかな?



…だから。



だから真哉は。


たった一人で成長することを望んだんだと思うの。



私のことが好きだったから。



だから真哉は別の道を望んだのかもしれないのよ。



…総魔を越える為に。



そんなふうに考えてみたらね。


もしもそうだとすれば理解できるのよ。



戦場に向かう真哉の行動が…理解できる気がするの。



そして同時に。



真哉の命懸けの想いが、

真哉自身の心を表しているように思えたのよ。



「そんなの…馬鹿すぎるわよ!」



私のことが好きだから?


だから守ってくれるって言うの?



「そんなの…自分勝手すぎるわよっ!!」



いつもいつも私をイライラさせるくせに!


こういう時にだけ格好つけるんじゃないわよっ!



「ホントに…馬鹿な真哉らしいわね…。」



普段は文句ばっかり言ってくるくせに。


ここぞというときには、

一番辛い場所に居るのよ。



そんな真哉の気持ちがね。


少しだけ理解できた気がしたわ。



「ホントに、馬鹿なんだから…っ。」



だから…かな?



涙を流してしまったのよ。



自分の想いを口に出さずに。


総魔のもとへ私を送り出すことを選んだ真哉の気持ちが理解できてしまったから。



その強がりは最後まで真哉らしい生き方だと思えたから。



真哉がいてくれたことが…嬉しいって思っちゃったのよ。



「…ったく、もう。そうならそうとちゃんと言ってよね〜?」



この状況で、真哉を置いて、ここから逃げる?



馬鹿を言わないで!!



総魔を追いかけたい気持ちはあるわ。


総魔に逢いたいって心から願ってる!!



でもね?



真哉の気持ちを知ってしまったのに。


ここで真哉を見捨てて逃げられるわけがないじゃない!!



…どいつもこいつも、馬鹿ばっかりよね。



私もそう。


自分に素直になれないのよ。



…だからね。



私も一緒に戦うことにしたのよ。



「ここで逃げても…幸せになんてなれるわけないじゃない。真哉を見捨てた私を…総魔が認めてくれるわけがないじゃない。死にたくはないけど…だけど一人で生き残っても意味なんてないのよ。」



みんなで生き残らなければ意味がないの。



大切な仲間を犠牲にして!


私だけが生き残っても!



意味なんてないのよ!!



そう思うからこそ。


私は私の想いを言葉にしようと思えたの。



…真哉には悪いけどね。



私にも譲れない想いがあるのよ。



「…理事長。」


「ん?」


「真哉のこと…教えてくれてありがとうございます。だけど…私は総魔が好きなんです。その気持ちは変わりません。」


「まあ…そうでしょうね。翔子の気持ちも気付いていたから驚きはしないけど…だったらどうするの?北条君の望み通りにここから逃げる?」



…真哉の望み通り?



それはないわね。



だって私も同じなの。



真哉と同じで人の言うことなんて聞かないし。


私は私のやりたいことをしたいから。



誰の指図も受けないわ!



「いえ…ここで逃げることは出来ません。真哉を置き去りにできないっていう気持ちもありますけど…私は総魔とちゃんと向き合いたいんです。」



真哉を見殺しにしたなんて思われたくないし、

そんなふうに思いたくもないの。



「真っ直ぐに総魔と向き合って堂々と想いを伝えたいんです。」



仲間を見捨てるような女を総魔が好きになってくれるなんて思わないわ。



私が好きな総魔はそんな生ぬるい存在じゃないのよ。



死にかけの真哉を守り切って、

私の力でみんなを守ったんだよって笑顔で宣言するくらいの結果を出さないとね。



総魔の笑顔を引き出せないのよ。



…それくらいの努力をしないとね。


…どんな時でも笑顔で向き合える努力を続けないとね。



総魔の心には届かないの。



そう思うからこそ。


私に逃げるっていう選択肢は存在しないのよ。



「私は絶対に逃げません!」



はっきりと宣言したわ。



だからかな?


私の言葉を聞いた理事長は楽しそうに笑ってた。



「ふふっ。翔子らしい考え方ね。だったらもう何も言わないわ。翔子の思うように好きにしなさい。だけどここに残れば…もう二度と天城君に会えないかもしれないわよ?」


「結果的にそうなるとしても、逃げることは出来ません。」



死ぬことよりも。


総魔に見捨てられるほうが辛いのよ。



好きな人に好きって言ってもらえない人生のほうが絶対に辛いに決まってるわ。



だから、私の考えは変わらない。



「最期まで、私も意地を貫きます!」


「ふふっ。」



私の決意を…理事長は笑顔で見守ってくれていたのよ。



「お好きになさい。」



私がここに残ることを許してくれた理事長も戦場に向かって歩きだしたわ。



「すでに護衛部隊は全滅したから、ここにいるのはもう私達だけよ。死にたくなければ…仲間を失いたくなければ、全力で生き抜きなさい。そして自分が思う最高の理想にたどり着きなさい。」



最高の理想…か。



良い響きだとは思うけど。


その前提が大問題なのよね〜。



護衛部隊の全滅。


そっちのほうが重要なのよ。



「全滅…ですか?」


「ええ、仲間達のおかげで私はこっちに駆けつけられたけど。その代わり…と言ってはなんだけどね。仲間達はアストリアの増援部隊に突撃して玉砕したわ。」



…うあ~。



運良く理事長が駆けつけてくれたと思っていたけれど。


その裏では別の犠牲が出ていたのね。



「つまり、残っているのは…。」


「…私達3人だけってことよ。」



…って、ことになるわよね~。



「勝てますか?」


「勝たなければそれこそ全滅よ。」


「敵の規模は?」


「ざっと1万5千ってところね。」



1万5千の正規軍に対して、私達は3人だけ?


これで勝つ…っていうのはさすがに無謀よね?



「どうしますか?」


「どうもこうも、戦い続けるしか方法はないわ。」



…ですよね~。



理事長の後に続いて歩きだした私は、

倒れた兵士達が落とした弓と矢を拾い集めて本物の武器を構えることにしたわ。



「魔力がなくても…まだ出来ることはあるわよね?」



実物を持つのは初めてだけどね。


それでも遠慮なく矢を放ってみる。



距離と風向きを考えて放った矢は、

真哉に迫る兵士へと上手く突き刺さったわ。



「ぐああっ!?」



矢を受けた兵士が倒れてくれたのよ。



うんうん。


さすが私!



威力は期待できないけれど。


命中率だけは期待できそうね。



まあ、即死も期待出来ないけれど。


足止めくらいは出来そうに思えるわ。



「真哉は死なせないわよっ!!」



容赦なく攻撃を続けてく。


次々と矢を射ることで兵士の足止めを試みたのよ。



真哉は前線で戦い。


理事長が魔術で援護を行ってる。



そして最後尾で私が狙いを定める。



真哉と私。


魔力を失った二人の最期の意地ってやつよ。



そんな私達の想いを感じながら、

理事長も戦い続けてくれていたわ。



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