vs翔子
《サイド:天城総魔》
約束の3時間が過ぎた。
まもなく来るであろう対戦相手の到着を待つために、
静かに立ち上がって休憩所を離れる。
向かうべき場所は既に決まっているからな。
検定会場の入口にある受付に向かう。
そこで翔子を待つつもりだった。
ひとまず登録だけ済ませて翔子が来るのを待ち続ける。
緊迫した空気は受付だけではない。
すでに会場中に広がっているようだ。
とはいえ。
緊張感が広がる理由は俺がいるからではないだろう。
この試合を待ち続けていた係員や審判員。
そして噂を聞いて駆け付けた生徒達が試合の開始を心待ちにしているからだ。
俺と翔子の試合を観戦する為だけに集まった観客達。
彼らによって受付の周辺では緊迫した空気が漂っているのだが、
集まった多くの観客達の中には俺の知った顔もいる。
これまで幾度となくすれ違ってきた美春だ。
だが美春は俺に近づくそぶりを見せていない。
他の観客たちと同様におとなしく状況を見守るつもりでいるらしい。
…わざわざ声をかける必要はないだろう。
知り合いではあるが、
どちらかといえば敵対関係だったからな。
無理に馴れ合う必要はない。
そう考えて、
美春のことは気にせずに翔子を待つことにした。
そうして数分後。
会場の入り口方面からざわめきが起き始めた。
騒ぎに気づいて入口に視線を向けると、
ゆっくりとした足取りで3人の生徒が近づいてくる姿が見える。
ようやく来たようだな。
翔子と沙織、そして北条の3人だ。
「待たせたわね。」
緊張した表情を浮かべる翔子にいつもの気楽さはなく、
全力で試合に挑む気合いが窺える。
「総魔の挑戦を受けるわ。」
一旦、こちらを無視して受付で手続きを進める。
その傍には一言も話す事なく翔子を見守る北条と沙織がいる。
二人の表情に不安は感じられない。
ただ翔子の勝利を信じているのだろう。
そうして手続きを終えた翔子が再びこちらに視線を向けてきた。
「手続きは終わったわ。もう後戻りは出来ないわよ?」
それは俺に向けての言葉なのか?
それとも自分自身に対してなのか?
翔子は俺の返事を聞かずに堂々と胸を張って試合場へと歩きだす。
そんな翔子の後を追って動き始める観客達も試合場に移動していく。
そうして最後に、
俺も試合場に向かって歩きだすことにした。




