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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
918/1068

残酷な発言

《サイド:深海優奈》



…うわわわわわっ!!



す、すごい地震です。



アストリアの追っ手を無事に振り切った私達は兵器の探索を続けていたのですが、

何となく地面が揺れたかな?と思ったら急に地震が発生したんです。



震度がどれくらいかなんて私には分かりません。


ですがこんなに大きく揺れた地震は初めての経験でした。



…こ、怖いですっ。



とっさに総魔さんにしがみついてしまったのですが、

まったく地震が収まる気がしません。



だからでしょうか?



総魔さんは優しく私の体を抱き寄せてくれました。



…はうぁぅぁぁぁ。



これはこれで恥ずかしいです。


でも地震も怖いです。



…ずっと揺れています。



総魔さんに支えてもらわなければ、

1人では立っていることさえ出来なかったと思います。



それくらい大きな揺れがずっと続いているんです。



…あうぅぅぅぅ。



地震自体は砦を出発してから陰陽師軍と遭遇する前にも経験しましたけれど。


あの時よりも大きな地震だったと思います。



正確な時間も分かりませんけど。


地震が発生してから収まり始めるまでの時間はだいたい5、6分程度でしょうか?



その間ずっと森の木々がミシミシと音を立てるくらい激しい揺れが続いていたんです。



…ですが。



少しずつ地震の揺れが弱くなってきているような気がします。



徐々に、ですけど。


地震の揺れが収まってきたような気がしてきました。



だけどもしも…もっと地震が酷かったら?



地割れや木々の倒壊が発生して、

土砂崩れなどの災害まで起きていた可能性がありますよね?



ここが震源地だったとしたらひとまず落ち着きを取り戻したと言えると思うんですけど。



もしもそうではなくて。


別の場所が震源地だったとしたら。


今でもまだ地震は止まってはいないのではないでしょうか?



場合によっては大規模な災害を引き起こしているかもしれません。



実際にどこが震源地なのかなんて、

私達には分かりませんけれど。


総魔さんは地震を感じてからすぐに足を止めて私を守ってくれていました。



…ですが。



突然発生した地震には総魔さん達も驚いている様子ですね。



「これは…まさか、な。」


「ものすごく…嫌な予感がしますね。」



総魔さんと栗原さんは、

地震の理由に心当たりがあるのでしょうか?



「また地震!?一体、何がっ!?」



御堂先輩は戸惑っている様子ですけど。


何も分からないのは私も同じです。



…ただ。



総魔さんと栗原さんは、

何かを確信している様子でした。



「この地震は王都と同じでは!?」



…え?



それって…もしかして?



「兵器が発動したのではっ!?」



やっぱり、そういうことなんですか?



王都が兵器の攻撃を受けて壊滅したことは栗原さんから聞いています。



ですので。



もしも栗原さんの予想が正しければ、

どこかで兵器が発動しているということです。



この地震は破壊の衝撃による余波ということでしょうか?



「共和国か…あるいは戦闘中の共和国軍が狙われたのではないでしょうか!?」


「………。」



栗原さんの言葉を聞いた総魔さんは、

瞳を閉じて意識を集中しています。



おそらく各地の『魔力の波動』を探っているのだと思います。



私もそうですけど。



御堂先輩も。


栗原さんも。


広域の感知はできません。



私はそれなりに範囲が広いらしいのですが。


ほとんどのかたは目で見える範囲内の魔力しか感知できないそうです。



私の場合はそこまで狭くはありませんけど。


それでも1キロ程度でしょうか?



私の攻撃が届く距離と同じくらいです。



それ以上離れてしまうと徐々に曖昧になってきて、

ほとんど何も感じられなくなってしまいます。



なので。


距離的に一番近くにいるはずの翔子先輩達の魔力の波動も私には分からなかったりします。



ですが…総魔さんだけは特別です。



どういう方法で感知しているのか分かりませんけれど。


総魔さんだけは超々広域の感知ができるそうです。



具体的な距離は総魔さん自身でも把握していないらしいのですが、

国内全域の感知が可能だそうです。



ただ距離が遠いほど感知が曖昧になるのは私と同じようですね。


感じ取れる魔力の波動があっても、

それが誰なのかまでは分からない時もあるそうです。



それでも知り合い限定だと距離の制限はほとんどなくなるらしいので、

共和国の魔力の波動も感知できるみたいです。



もちろん知り合いと言っても出会ったことがある人なら誰でもというわけではなくて。


魔力の波動を覚えている…というか。


把握している人限定だそうです。



この場合。


私と御堂先輩と栗原さんもそうですけど。



翔子先輩、沙織先輩、北条先輩。


それに米倉理事長と理事長のお父さんなど。



ある程度関わりのある人限定のようですね。



あとは学園で知り合った人だと。


鈴置美春先輩、芹沢里沙先輩、矢野桃花先輩なども分かるそうです。



この場所にいながら共和国の感知もできるそうです。



だとしたら。



魔術大会で出会った人達も感知できたりするのでしょうか?



具体的な感知範囲がよくわかりませんので確認してみるしかないのですが、

今はそういうことを話し合っている場合ではありません。



兵器がどこで発動したのかが重要だからです。



その場所次第によっては私達にとって大切な人がいなくなってしまった可能性があるんです。



出来ればその可能性が実現しないことを祈りつつ。


静かに調査の結果を待っていると。


総魔さんは順番に説明してくれました。



「山を下りた辺りに複数の魔力の波動があるな。総数は600といったところか?」



…えっ!?


…600!?



そんなはずはありません!


理事長が率いていた部隊は2000です!



「もっと大勢じゃないんですか…?」



確認のために尋ねてみると。



「ああ、それ以上の数は…いや、違うな。」



…違う?



やっぱり…2千人ですよね?



「確実に減少している。残りは200もいないな。」



…えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?



それって…!?



「原因は不明だが…兵器の攻撃を受けたわけではないだろう。おそらくアストリア軍に包囲されて全滅寸前といったところか。」



…そんな!?



あそこには理事長と北条真哉先輩がいるんです!



それに翔子先輩も!



「翔子先輩は!?翔子先輩はまだ生きているんですか!?」



慌てて問いかけてみると、

総魔さんは即座に答えてくれました。



「ああ、翔子の魔力の波動は感知できる。すぐ近くには北条もいるようだな。だが…全滅寸前の魔術師達の側にいる美由紀は危険かもしれないな。」



…理事長さんが、危険?



どういう状況なのかは分かりませんけれど。


孤立していたはずの翔子先輩の傍には、

北条先輩がいてくれているそうです。



ですが。


理事長さんと護衛部隊の方々は全滅寸前だそうです。



…やっぱり。



アストリアの正規軍には勝てないのでしょうか。



「このままだと理事長さんが…?」


「危ういが逃げるだけなら何とかなるだろう。助けに行きたいのは山々だが再び兵器が発動する可能性がある以上は俺達も先を急ぐ必要があるからな。美由紀には悪いが戻っている暇はない。」



…ですよね。



それにここから戻るとしても、

帰るだけで1時間くらいはかかると思います。


現状がすでに危険だとすれば…もう間に合わないのかもしれません。



「…どこに兵器があるのか、総魔さんはすでに知ってるんですか?」


「ああ、何人かの巡回兵を捕えて話を聞き出したからな。ここから北西方面に向かえば兵器が隠されている施設があるはずだ。」



さすが、というべきでしょうか。


やっぱり総魔さんはすでに情報を得ているようでした。



「俺達は兵器の破壊に向かう。だが、その前に確認だけは終えておくか。」



…そうですね。



理事長と北条先輩と翔子先輩の魔力の波動は確認できたそうです。



3人は比較的近距離にいるので、

真っ先に確認できたのだと思います。



近距離といっても、

10キロ以上の距離があるとは思いますけど。


この場所から最も近くにいる3人は今も生存しているそうです。



なので。


次にここから東の方角にいるはずの悠理ちゃん達の魔力の波動も確認していただきました。



「悠理の魔力は感知できる。その周囲に数千の魔力の波動も感じられるな。総数はおおよそだが…7千といったところか。」



…7千?



だとすれば。


別働隊の人数も減少しています。



私達が離脱する前は9千だったはずです。



なので。



この短時間の間に2千名もの魔術師が亡くなったことになります。



「武藤君はどうなんだい?」



御堂先輩が問いかけたことで、

総魔さんは即座に頷きました。



「悠理の側にいるようだ。」


「そうか、良かった…。」



武藤君の無事が確認できたことで、

御堂先輩はほっと息を吐いています。



…ですが。



その次の報告によって、

私達は聞きたくないと願っていた事実を聞いてしまうことになりました。



「………。これは…まずいか?」



…え?



どうしたのでしょうか?


総魔さんの表情が険しさを増しています。



「ど…どうしたんですか?」



不安が抑えきれなくなって問いかけてみると。



「…沙織の魔力の波動が消失している。」


「えっ!?」


「なっ!?そんなっ!?」



驚く私以上に、

御堂先輩は凍りついたかのように動きを止めていました。



「沙織…が…?」



御堂先輩にとっては…誰よりも。


きっと誰よりも。


生きていて欲しいと願っていた人だったはずです。



御堂先輩にとって。


沙織先輩はきっと誰よりも大切な存在だったはずです。



…だって。



私には…聞こえていたんです。



あの日、あの時。



沙織先輩は御堂先輩に告白していました。



そして御堂先輩も。


その想いに応えようとしていたのです。



…だから。



きっと他の誰よりも。


沙織先輩の生存を願っていたはずなんです。



…それなのに。



「沙織先輩は…どこにもいないんですか?」



何度確認してみても。


どの方角へと意識を向けても。


沙織先輩の波動だけは感じられないそうです。



「…沙織の気配はどこにもない。」


「そんな…っ!?」



そんなの嫌です!!



沙織先輩がいないなんて認めたくありません!



…ですが。



総魔さんの言葉を否定することも出来ません。



「砦の方角にあったはずの多くの魔力の波動も途絶えている。おそらく兵器は…砦に向けて発動されたのだろう。」


「そんな馬鹿なっ!?だったら…だったら沙織はっ!?」



普段の御堂先輩からは考えられないほどの動揺でした。



「沙織は…っ!?」



可哀想に思えるくらい取り乱してしまっているのです。



それでも。



それでも総魔さんは事実を告げました。



「沙織は…死んだ。」


「…っ!!!」



残酷な発言です。


だけど…ごまかすことはできません。



今ここで嘘をついても、

いずれ必ず現実と向き合わなければいけない日が来るからです。



…そして。



その絶望と次に向き合うのは…私かもしれません。



そんな結末は考えたくもありませんけれど。



翔子先輩が倒れて。


悠理ちゃんが倒れて。


総魔さんまで倒れてしまったら。



私もきっと。


きっと私も。



御堂先輩と同じように、

取り乱してしまうと思います。



…きっと。


…きっと。



私も…立ち直れないと思います。



「沙織ぃぃぃ…!!」



総魔さんの調査結果によって、

御堂先輩はがっくりとうなだれてしまいました。



力をなくして地面に崩れ落ちて。


そして。


悲しみの涙を流していました。



「沙織いいいいいいいいい…っ!!!」



………。



嘆き悲しむ御堂先輩に声をかけることはできません。



…すでに私も。



堪えきれないほどの涙を流して、

頬を濡らしていたからです。



「沙織…先輩が…いない…?」



いつも笑顔で。


とても優しくて。


私にとってもお姉さんのような存在だった沙織先輩が亡くなってしまったなんて…。



そんな悲しい現実なんて、

どうしても認めることができませんでした。



…ですが。



総魔さんが嘘を言うはずがありません。


そんな最低の嘘を言うはずがありません。



だからこれは…真実なんです。



認めたくないと思っても変えられない事実なんです。



「それでも…っ!それでも…っ!!」



生きていて欲しいと願ってしまいました。



沙織先輩の死を受け入れられない御堂先輩と私を見て、

沙織を知らない栗原さんでさえも涙を流してくれていたんです。



…たぶん、ですけど。



悲しむ私達の姿を見たことで、

琴平愛里さんの死を思い起こしたのかもしれません。



ただ静かに。


私達の傍で。


何も言わずに。


そっと涙を流してくれていました。



沙織先輩の死という事実に悲しむ私達。



同じ境遇の経験者として御堂先輩を元気付けようとしたのでしょうか?



ゆっくりと動き出した栗原さんでしたが、

その視線が何かに気づいて立ち止まりました。



「………。」



…何を見ているのでしょうか?



私はそれどころではありませんでしたので、

何も気づきませんでした。



ですが栗原さんは何処かに視線を向けたまま何かを捉えた様子でした。



「…天城さん。あちらで何か光っているのですが…見えますか?」


「………。」



問いかけられた総魔さんは、

栗原さんの示す方角へと視線を向けました。



そして…何かに気づいたみたいです。



「あれは…!」



…光?



総魔さんに続いて私も確認しました。



木々の隙間から見えたのは『微かな光』です。



それは太陽の光ではなくて、

明らかに別の何かでした。



…だからでしょうか?



光を見ていた栗原さんが方角を教えてくれました。



「方角的に北西かと思われます。」



北西の方角?



…だとしたら?



それは総魔さんが言っていた兵器のある方角と同じです。



数キロ先でしょうか?



ここからそれほど遠くない距離です。



そこに確かな光が放たれていて、

何かが森の奥で輝いていました。



「あの輝きは間違いないな。」



総魔さんには見覚えがあるそうです。



「王都で研究所を包み込んだ光と同じだ。」



…それはつまり。



『兵器』がそこにあるということですよね?



「あの場所に兵器があるはずだ。」



力強く答えた総魔さんの言葉を聞いて、

栗原さんと私はもう一度光に視線を向けました。



「もう一つの兵器が、あの場所に…。」


「だったら…兵器を破壊すれば、この戦争は終わるんですよね?」



不安を感じながら問い掛ける私達に頷いてから、

総魔さんは御堂先輩に話し掛けました。



「御堂。今は辛いと思うかもしれないが、ここで足を止めてしまえば再び誰かが犠牲になる。」



…そう、ですよね。



ここで何もしなければ。


兵器の力は共和国を襲うかもしれません。



ジェノスの町を吹き飛ばしてしまうかもしれないのです。



もしもそうなれば。


犠牲者の数は更に増えることになります。



町や学園も心配ですが、

お父さんやお母さんも…死んでしまうかもしれないんです。



「家族や友人…まだ他にも守りたいと思うものがあるのなら…。沙織と同じような犠牲を出さない為に…もう一度、立ち上がれ。」



沙織先輩と同じ結末を迎えないために。


家族や友達を犠牲にさせないために。



もう一度立ち上がることを願っていました。



…ですが。



御堂先輩は立ち上がるどころか、

顔を上げるそぶりすら見せません。



沙織先輩を失ってしまった悲しみが大きすぎて、

総魔さんの言葉さえも届いていない様子です。



「…先輩。」



どう声をかければいいのか分かりません。



…いえ。



もしかしたら総魔さんでさえ分からなかったのかもしれません。



一番大切な人を失ってしまった悲しみは、

私にも総魔さんにも分からないからです。



だから…でしょうか?



総魔さんは説得を諦めた様子でした。



「御堂。俺達は先に行く。気持ちの整理がついたら…追い掛けて来い。」



説得を諦めた総魔さんは、

私と栗原さんを引き連れて、

兵器が放つ光を目指して歩き出しました。



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