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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
916/1056

二軍

《サイド:桜井由美》



…ちょっ!?


…何が起きたの!?



突然発生した巨大地震のせいで、

恥ずかしげもなく慌てふためいてしまったわ。



…だけど。



今は慌てている場合じゃないわよね?



いつ全面戦争が起きてもおかしくない状況なんだから、

冷静に対策を考える必要があるのよ。



…一体、何が起きているの?



急いで周囲の状況を確認してみる。



何が起きたのか?じゃなくて、

何が起きているのか?を考えるべきだからよ。



震源地不明の大地震。



その影響は深刻ね。



地割れ。


土砂崩れ。


仮設の防護柵の倒壊。



あらゆる災害が広域に発生しているわ。



…こうなると。



共和国の各町も影響を受けているでしょうね。



最も近いカリーナの町が心配になるわ。



これでも私はカリーナ女学園の学園長だしね。


学園が無事かどうか気になってしまうのよ。



…でも今は、それ以前に。



現況を考えなければいけないわ。



地震の影響で被害が出ているのは私の部隊も例外じゃないからよ。



私が率いる共和国軍は共和国の北西に隣接するミッドガルムとの国境付近で布陣しているんだけど。


周辺一帯の各地で地割れが発生していて、

決して少なくはない数の負傷者が出ている様子ね。



目測では判断できないけれど。


100や200どころの騒ぎじゃないと思うわ。


どう考えても数千単位での負傷者が出てしまっているのよ。



さすがにここまで大きな災害になるとね。



…おそらくは。



共和国の西側に隣接するセルビナにまで影響が広がっているでしょうね。



冗談でも誇張でもなくて、

大陸全土が揺れてるんじゃないかと思えるほどの大地震だったのよ。



ミッドガルムへの牽制を行っていた私の部隊も地割れの直撃を受けて混乱状態に陥っているわ。



…急いで各部隊を立て直す必要があるわね。



カリーナ女学園の学園長として。


そして魔術師ギルドの総帥として。


多くの魔術師を率いてミッドガルム軍に牽制を行っていたんだけど。


この地震のせいで布陣が乱れてしまうほどの影響を受けてしまっているのよ。



「この忙しい時に地震なんてっ!!」



ただただ迷惑としか思えないわ。



もしもこの状況でミッドガルム軍が攻めてきたら、

一気に劣勢に追い込まれてしまうかもしれないのよ?



突然発生した地震に慌ててしまうのは当然よね?



まあ、地割れによる被害そのものは気にするほどではないと思うわ。


怪我の治療くらいなら魔術でどうとでもなるから死者が出なければそれでいいの。



だから問題なのはね。


怪我がどうこうではなくて。


地震によって混乱を起こした数万の部隊をまとめ直す作業の方が深刻な状況なのよ。



彩花あやか乃絵瑠のえる!!各部隊の被害状況を今すぐに調べて!おそらく問題はないと思うけれど、早急に軍を立て直さないと敵が動き出しかねないわ!」



側近として控えていた生徒に指示を出す。



二人共優秀だから、

何をどうするかなんていちいち確認する事もなく即座に調査に向かってくれたわ。



…さすがは学園1位と2位ね。



魔術大会では残念な結果だったけれど。


本来のあの子達の実力はあんなものじゃないのよ。



…私の生徒達は能力を制限した状態で戦っていたから仕方がないの。



手加減という意味ではないけれど。


試合の中ではなかなか本気を出せないのよ。



…基本的に乃絵留以外は暗殺特化だから。



暗殺者に正々堂々と戦えなんて、

前提条件が間違っているわよね?



そう思うから大会での結果は仕方がないと思うのよ。



…まさか本気で殺し合いをするわけにはいかないし。



だから、どうしてもね。


試合で選べる手段が限られてしまうの。



そのせいで負けてしまったわけだけど。



…それでもね。



決して弱くて負けたわけじゃないのよ。



制限なしで本気を出しても良いのなら、

ジェノスの生徒にだって負けはしないわ!



…とは言っても。



終わったことを言っても仕方がないんだけどね。



どんなに言い訳をしたところで、

魔術大会で本気を出すことはできないんだから。


今後の大会でも優勝できる可能性は低いと思うのよ。



…でもまあ。



そもそも本気を出せない大会の結果なんて、

どうでも良いんだけどね。



あの子達の実力は戦場でこそ発揮出来るのよ。



『戦場に咲く華』であり。


『戦禍に輝く明けの明星』



それこそがカリーナ方針であり信念だから。



だからカリーナには英雄なんて必要ないの。


聖女も賢者も戦鬼も必要ないわ。



…必要なのは戦場で生き抜く覚悟だけよ。



敵を欺き、謀り、偽り、奪う。


そのための調略、謀略、偽装、暗殺。



その才さえあれば良いの。



だからこそ。


命の奪い合いに関しては、

カリーナが群を抜いているでしょうね。



その点だけは自信があるのよ。



…だからまあ。



ひとまず調査はあの子達に任せるとして。



次にもう一つの問題をどうするかよね?



私の視線の先。


そこには私達と同じように地震の影響を受けて混乱が広がっている様子のミッドガルムの軍隊がいるのよ。



総数はおよそ30万といったところかしら?



全軍が動けば100万と言われるミッドガルムの軍隊だけど。


今ここにいるのは3分の1程度のようね。



それでも十分すぎるほど脅威なんだけど。



対する共和国軍はグランバニアの学園長であり、

陸軍の元帥も務める新堂輝彦が率いる陸軍5万と。


私が率いている各町の生徒と魔術師ギルドの混合部隊が5万。


合計10万の軍勢よ。



陸軍の実力は確かだけど。


私が率いる部隊は米倉代表が率いたアストリア攻略部隊に比べれば格段に質が落ちるでしょうね。



こう言い方は失礼だと思うけど。


いわゆる『二軍』の集まりなのよ。



数だけは倍近くに揃えていてもね。


戦力的には互角以下だと思うわ。



アストリアに派遣された魔術師達の多くは、

本当に共和国の上位に位置する主要戦力だったのよ。



主力ともいえる一軍が抜けた現状。



各方面の防衛に二軍以下が回されるのは仕方がないんだけど。


相手がミッドガルムであることを考えると、

正直に言って心もとないわね。



ミッドガルムは軍事活動を主とした武力至上主義の国家だから普通に強いのよ。



まともにぶつかり合えばいくら攻撃力で優勢な共和国軍といえども数の力に押し潰されるのは目に見えているわ。



「…困ったわね〜。どうすればいいと思う?」



隣にいる仲間に問い掛けてみると。


陸軍元帥の新堂は徐々にまとまりつつある部隊を眺めながら冷静に対応を考えてくれたわ。



「部隊の混乱はお互い様だ。気にするほどのことではないだろう。今はまだ静観で良い。幸いにも向こうはアストリアの動きを判断してから動き出すつもりのようだからな。」



…まあ、それもそうね。



私達にとっては幸運とも言える部分なんだけど。


どうもミッドガルムは本格的にアストリアと同盟を組んでいるわけじゃないみたいなの。



…と言っても。



仲が悪いとかそんな理由じゃないとは思うけどね。


アストリアがどこまで頑張れるのかを観察してるっていう感じなのよ。



だからね。



アストリアが上手く共和国を追い詰められそうなら、

同調して追撃を仕掛けるという考えじゃないかしら?



あるいはアストリアが共和国に進軍してから

多方面同時攻略の予定なのかもしれないけれど。



…どちらにしてもね。



現時点ではまだアストリアは共和国の領土に侵入していないはずよ。



今はまだね。


国内にまで進軍してきたという情報はないの。



だからミッドガルムも突撃は早いと判断して国境で待機しているのかもしれないわ。



…実際にどういう考えかは知りようがないけれど。



どういう理由であったとしても、

強攻策に出ないのはありがたいわね。



一度戦いが始まってしまったらもう止まることは出来ないからよ。



こちらの被害は多大なものになるでしょうけど。


ミッドガルムも多くの死者を出すことになるわ。



それこそ30万の大群をどこまで維持できるのか?という話になるでしょうね。



その辺りの駆け引きも込みで、

戦争の行方を眺めていると思うのよ。



「そもそも今はまだ宣戦布告されたわけでもないからな。アストリア軍が共和国の領土まで進軍しない限り、ミッドガルムも迂闊には動かないだろう。」



…まあ、そうね。



異論はないわ。


確かにそうかもしれないって思うからよ。



ミッドガルムはまだ戦争を宣言していないの。



アストリアと違って国境に部隊を配備しただけで、

本当に戦うつもりがあるのかが不明なのよ。



「おそらくミッドガルムは共和国の戦力を分散させるための囮だろう。実際に動かずとも、軍を待機させるだけで共和国は防衛部隊を配備せざるを得なくなるからな。」



…かもしれないわね。



共和国からすれば嫌すぎる囮だけど。



実際問題として部隊が配備されてしまった以上は無視するわけにはいかないのよ。



無視して放置すれば本当に攻め込んでくるかもしれないから防衛部隊の配備は必要なの。



「しばらくはこちらも様子見で良い。」



私と同じように判断した新堂が地震で混乱している各部隊に指示を出していく。



「防衛網を維持しつつ、引き続き監視を行う。地震による混乱はお互い様だ。不用意に行動せず、敵が動き出すまで決して攻撃を仕掛けるな!」



牽制を続行する新堂の判断に従って、

私も自分の部隊に指示を出すことにしたのよ。



「アストリアで何かが起きているのは間違いないわ!!決着がつくまで警戒を続けるわよ!」



今もまだ止まる様子のない大地震。



その影響を受けて。


ミッドガルム軍と共和国軍は、

互いに足止め状態になっているわ。



どちらも睨み合いながら、

地震が収まるのを待つことになったのよ。



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