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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
913/1080

自爆

《サイド:常盤沙織》



…う、嘘ですよね?


…違い、ますよね?



「それじゃあ…私達が、殺してきたのは…っ?」


「かつて魔術師に全てを奪われ!生きる意味を見失った者達だ!!」



…っ!?


…そん、な…っ。



…どう、して…?



ここにいた人々は…兵士として集められたのでは…なかったのですか?



「お前には分かるか!?名も知らぬ男に汚され、望まぬ子を生み落とし…人としての尊厳を奪われた者達の気持ちが!そうして生きることさえ否定された子供達が貧困に喘ぎながら涙する気持ちが!お前には分かるのか!?」



…分かりません。



分かるはずがありません。


何も…知らないのです。



「お前はその手でどれだけの女を殺した!?生きることに希望を見いだせなくなった女達をどれだけ殺したのだ!?親の顔さえ知らず!孤独に苦しむ子供達をどれだけ殺したのだ!?」


「わた…しは…っ。」



誰を…殺したのですか?



「まだ分からないと言うのであれば教えてやろう!家を焼かれ!田畑を荒らされ!家族を奪われ!目の前で虐殺された老夫婦の悲しみが理解できるか!?わずかばかりの蓄えを奪われ!食料も無くし!飢えるしかない者達の恐怖と失望がお前には分かるのか!?」



………。



「お前はその手でどれだけの命を奪った!?ただ平穏な日々を願い、ささやかな幸せを望む弱者の命をだ!!」



私が殺したのは…?


私が奪った命は…?



そもそも軍に所属出来るような…戦う力さえ持っていないただの一般人だったのです。



魔術という力に怯えて、

その力に全てを奪われた悲しい人々。



大切な物も。


愛する人も。


守るべき全てを。


失った人々だったのです。



そんな人々を…殺していたのです。



「わた…し…は…誰…を?」



何も知らず。


何も考えず。


向かい来る『敵』を。



一方的に殺し続けていたのです。



「い、嫌…っ!嫌ああああああああああああああああああああああぁぁぁっ!!!!」



真実を知って…うずくまってしまいました。



震える体。


壊れる心。



私は…今になってようやく、

自らの『罪』を知ったのです。



「貴様等『魔術師』は、その力を持って何をした!?お前は守る為に戦うと言ったな?だが現実はどうだ!?戦う力すらない人々を虐殺しておきながら、その力の意味さえ知ろうとしないではないか!戦いの意味さえ知らず、悲しみ嘆く者達の苦しみさえも知らずに!自らを被害者と思い込む貴様等は『害悪』でしかないのだっ!!」


「ち、違…っ。」


「何も違いはしない!!お前はその手で弱き者達に止めを刺したのだっ!!」



………。



何も言えませんでした。


私にはもう、

否定する言葉が思い浮かばないのです。



大切な物を全て失った人々。


そんな人々の命を奪った事実は否定できません。



その事実だけは紛れもない真実だからです。



「この、手で…っ。私は…っ?」



幸せを失ってしまった人々を…。


救いを求める人々を…殺していたのです。



その真実に気づいてしまったことで、

心が壊れるほどの失望を感じてしまいました。



「わた、しが…この、手で…っ?」



かつて私も経験した恐怖を。


かつて私も経験した失意を。



私自身が…与えていたのです。



全てを失い。


全てを奪われる絶望。



私自身が否定した過去を。



私自身が与えていたのです。



「違っ…う…。私は…ただ、守りたくて…」


「違いはしない!!貴様等は何も知ろうとしないまま、罪を重ねる魔術師達に手を貸しているのだ!!」


「ち、違いますっ!…私は…っ!私達は…っ!」



泣き叫ぶ私に…真田元国王はこの世界の真実を告げました。



「…誰もが恐れているのだ。お前達『魔術師という存在』を…な。」


「違っ…う。」



私達は…っ!


私達はっ!!



必死に否定しようと思うのですが、

答えるべき言葉は思い浮かびませんでした。



「私達は…!」



必死に言葉を探してみても、

絶望を否定するだけの言葉が思い浮かばないのです。


壊れかけた心ではもう…反論なんて出来ません。



「私達は…存在しては…いけなかったのですか…?」



それが精一杯の問いかけでした。


ですがその疑問は、

鞍馬総司令官が否定してくれました。



「その答えは自らが示すしかない。自らの行動によってのみ答えは示されるのだ。決して心を折ることなく、その信念を貫き通すことでしか答えを示すことは出来ないのだからな。」



答えは自分で決めるしかない。


そう言って鞍馬総司令官は真田元国王に問い掛けました。



「確かに魔術を悪用する者はいる。だが、無抵抗な魔術師をお前達が虐殺し続けていることも真実だ。そうだろう、照栄?」



…確かに。



アストリアは争う意志を持たない魔術師までも殺しているのです。



それも真実です。



一方的に魔術師だけが害悪というわけではないはずなのです。



「魔術師の暴走が先か?それとも力を恐れた者達の虐殺が先か?それはワシにも分からん。だが、その手を血で染めているのはお前達も同じことだ!!共和国に広がる悲しみは、お前達が起こしたものなのだからな!」


「…確かにそうだな。」



必死に訴える鞍馬総司令官の指摘を真田元国王は素直に認めていました。



どちらにも非があると認めていたのです。



「我々も血で汚れていることは認めよう。だがそれは…。いや、それこそが『正義』なのだ!」



世界の秩序を守ること。


それがアストリア王国の掲げる正義なのです。



その揺るぎない想いを心に掲げて、

真田元国王は最期までその信念を貫いていました。



「…時間だ。全ての魔術師に滅びをっ!!」



叫んだその瞬間に。


あらゆる力を越えた、

神の裁きが発動しました。



閃光と爆発。



何かが地面から突き抜けて、

天井を貫いたのです。



その光が何だったのか?



あまりのまぶしさで分かりませんでした。



視界が遮られるほどの光だったのです。



震える大地。


崩れだす砦。


各地で響く爆音。



地震は今まで以上に、

より一層激しさを増して、

地下のこの部屋にも影響が及んでいました。



「ち…っ!もはや、逃げられんかっ!」



鞍馬総司令官でさえも、

どうにもならない状況のようです。



瞬く間に天井が崩れ始める音が聞こえて、

次々と土砂や石材が降り注いできました。



揺れる砦が崩壊しているようですね。



鞍馬総司令官は降り注ぐ土石から私を庇いながらも、

必死に真田元国王に叫んでいました。



「本気で自爆するつもりなのかっ!?」


「…言わなかったか?ここはその為の砦だとな。最初から勝てるとは思っておらん。だからこそ用意したのだ!この砦と兵器をな!!」



自爆を宣言する真田元国王の言葉を聞いて、

鞍馬総司令官は兵器による攻撃が偽りではないと判断したようです。



「く…っ!」



悔しがる鞍馬総司令官に、

真田元国王は誇らしげに宣言しました。



「砦を離脱した魔術師がいることは残念ではあるものの…。共和国の主力部隊、それも鞍馬宗久を殺せるのならば、この犠牲は決して無駄ではない!!」



鞍馬総司令官の殺害を宣言した瞬間。


ついに天井が崩壊したようです。



真田元国王と九条さんが叫び声を上げていました。



「があああああああっ!!!」



大声で叫んでいるのは九条さんです。



ですが、真田元国王は…



「この世界に秩序を!!!」



最期の瞬間まで、

世界の平和を願いながら瓦礫の中へと消えました。



その直後に天井が崩壊したのでしょう。



私達の上にも土石が降り注いできたように思います。



「これまでか…。」



光に覆われて視界さえ奪われた状態です。



地震のせいで動けない現状。


脱出は不可能だと思います。



「…すまんな。」


「いえ…。」



呟く鞍馬様に守っていただきながら、

私も最期を受け入れることにしました。



「どちらかと言えば私のわがままに巻き込んでしまった状況です。本当に、申し訳ありませんでした…。」



最後に謝ろうと思ったのですが、

鞍馬様は私を責めずに抱きしめてくれました。



「気にすることはない。巻き込んだと言うのならば、それはワシ等の方だ。まだ若いお前を戦場に巻き込んでしまったのだ。謝るのはワシの方だ。」


「鞍馬様…。」



降り注ぐ土石から身をていして私を守りながら、

鞍馬様は謝罪してくれました。



「すまなかったな。結局…お前を守りきれなかった。」



…いえ。



そんなことはありません。



「…ちゃんと守っていただきました。だからもう十分です。鞍馬様…最後までありがとうございました。」



覚悟を決める私の言葉を聞いて、

鞍馬様は再び謝罪してくれました。



「…すまん。」



いえ…良いのです。



結果がどうであれ。


ここに来たのは私自身の意志なのですから。



例え結果が死であるとしても。


そこに鞍馬様が責任を感じる必要はありません。



「…すまん。」



何度も謝罪する鞍馬様の頭上に…。


ついに絶望が降り注ぎました。



崩壊する砦の石材が落ちてきたのだと思います。



眩しい光のせいではっきとは見えませんが、

鞍馬様の体の上に巨大な岩石が降り注いでいました。



「ぐ…っ!がはっ!?くっ…。美由紀…ぃ。あとのことは…頼んだ、ぞ…。」



降り注いだ岩石に押しつぶされながらも、

鞍馬様は理事長にあとを託していました。



「共和国に…平和を…!」



願う鞍馬様の下で。


私も最後に謝罪しました。



「みんな…ごめんね…。」



私はもう助かりません。



…だから。



だからせめて。



最期の瞬間を迎えるその瞬間まで。



『大切な人』を想い続けていたいと願いました。



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