反論
《サイド:鞍馬宗久》
………。
やはり常盤沙織は説き伏せられてしまったか。
この少女の性格を考えれば照栄の思想を否定できないだろうとは思っていたが、
こうなった以上はワシが間に入るしかあるまい。
アストリア側の意見が全ての答えではないことを示すために。
ここから先はワシが反論することにしよう。
「今も昔も考えは変わらないようだが、言いたいことはそれだけか?」
「貴様っ!?これだけ言ってもまだ何も理解しないつもりかっ!」
怒鳴る照栄だが、
気にするつもりは一切ない。
「確かに一部の魔術師が罪を重ねていることは事実だ。もちろんワシもそのことは知っている。」
魔術師にとって闇とも言える部分だからな。
否定はできん。
「それらは共和国内部においても否定出来ない問題だ。自分勝手に行動する魔術師は少なからず存在する。だが、だからこそ、問題のある魔術師を討伐する為に共和国も尽力を尽くしているのだ。そして『その為』に魔術師ギルドは世界中に存在しているのだからな。」
非公式とは言え各国に魔術師ギルドを設立している理由は共和国の勢力を広げるためではない。
もちろん魔術師狩りによる被害から守るために魔術師の救出を主目的としているのだが、
もう一方の目的として罪を犯す魔術師を捕獲して処分することも目的としているのだ。
「共和国としても問題のある魔術師に対する制裁は行っている。そのことはお前達も知っているはずだ。」
これまで何度もその事実を示して、
同族とも言える魔術師を幾度となく殺してきたのだからな。
「…そうだな。確かに知ってはいる。だがそれはごく一部にしか過ぎないのだ。お前達がどれだけ尽力しているとしても、現実として世界は何も変わっておらん!罪無き人々を襲い…泣き叫ぶ者達を力付くで押さえ付け、奪い…殺し…犯し…略奪し続けている魔術師が存在し続けているのだぞ!?今この瞬間にも村は焼かれ、町は崩壊しているのだっ!人々は魔術師という存在に恐怖し、その存在に怯えながら日々を過ごしている!その現実は何も変わってはおらん!」
ああ、そうだろうな。
それすらも重々(じゅうじゅう)承知している。
共和国だけで世界中の魔術師を制御できるわけではないのだ。
そのことは十分に理解している。
だがそれでも、
全ての魔術師が悪というわけではない。
「例えお前の言葉が真実であったとしても、共和国に集まった魔術師達の多くは『平和』を求めているのだ。苦しむ人々に救いの手を差し延べて守ることを迷わない者達なのだ。決して全ての魔術師が罪なのではない。」
そのことはすでに照栄自身も認めている。
善意ある魔術師が存在することを認めているのだ。
だからこそワシは道を見失ってしまった常磐沙織に進むべき方向を示すことにした。
「悩む必要はない。例え世界がどうであるにせよ、自らの心を信じて行動すれば良いのだ。何の為の力か?それは自分の信念に問い掛ければ良い。何の為に戦うのか?それさえも自分の気持ちで決めるものだ。お前は一体、何の為に戦う?」
答えは常に自分の意思で決めるものだ。
だからこそワシは少女の求める答えを、
少女自身に問いかけることにした。




