九条秀人
《サイド:鞍馬宗久》
ワシと常磐沙織は照栄のあとを追って簡素な室内へと歩みを進めることになった。
…ここは会議室か?
あまり使われている形跡は感じられない。
特に目立つ物もない簡素な部屋だ。
だが、部屋の中央に隠し階段があるようで、
照栄と男は迷うことなく歩みを進めている。
「ついて来なさい。」
先行して階段を下りる照栄。
付き従う男も無言のまま階段を下りていく。
その様子を眺めてから、
常磐沙織に声を掛けておくことにした。
「何かあるかもしれん。油断はするな。」
「…はい。」
しっかりと頷く常磐沙織を守る為に、
先行して階段を下りてみる。
そのあとに続いて階段を下りる常磐沙織と共に、
長い長い階段を進んだ先には広々とした空間が広がっていた。
こちらは整備された室内だ。
上にあった手つかずの部屋とは違って、
会議室というべきこの部屋に歩みを進めた照栄は手近な椅子を選んで腰掛けていた。
その側では照栄を護衛するかのように男が控えている。
…ふむ。
見覚えはないが、
照栄の側近なのだろうか?
男はこの状況になってようやくその名を明かした。
「申し遅れましたが、私は九条秀人と申します。共和国へと使者に向かった九条直次の父でもあります。」
…九条、か。
聞き覚えがあるな。
だが、常磐沙織は何も知らないようだ。
九条の名前を聞いても反応が見られない。
おそらくグランパレスで何があったのかを知らないのだろう。
誰が来て、
どういう経緯があったのか?
結果は知っているかもれないが、
詳細までは聞かされていないようだな。
ワシとしても報告として聞いてはいるが、
九条の名までは覚えていなかった。
…とは言え。
おおよその内容は理解できる。
一通りの話は美由紀から聞いているからだ。
天城総魔という名の生徒がアストリアの使者を全滅させたこと。
その話は覚えていた。
だからすぐに理解できた。
おそらくその戦闘によって九条の息子も殺害されたのだろう。
九条直次だけは米倉宗一郎の手によって死亡したらしいが、
そこはそれほど重要な問題ではない。
使者は全滅して九条秀人は息子を失った。
それが事実であり。
揺らぐことのない真実だ。
真剣な表情でこちらに視線を向ける照栄と九条。
二人の視線を受けながら、
ワシと常盤沙織も室内へと歩みを進めた。




