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THE WORLD  作者: SEASONS
4月1日
9/185

成績

「…ここが検定試験の会場か。」



生徒手帳の地図に記されていた目的地。


学園内の散策を終えてたどり着いたのは第12検定試験会場と呼ばれる建物になる。



文字通り12箇所ある試験会場の一つで、

ここが新入生にとって最初に訪れるべき場所らしい。



校舎と比べれば小さく見えるが、

それでも小さな村ならまるごと収まりそうなほどの大きさはあるだろう。



高さは10メートル以上。


広さも500メートル四方はあるだろうか。



石造りの強固な壁面が頑丈さを物語っている。


ちょっとやそっとの攻撃ではビクともしないだろうからな。



当然、殴りかかった程度では傷一つつかないどころか手首が折れてしまうことになる。


よほど強力な魔術を使用しない限り、

会場の壁をぶち抜くのは不可能だ。



…これも試験の内容を考えれば当然だろうな。



具体的な試験の内容は中に入ればわかるとして、

まずは建物を見渡してみる。



「校舎とは根本的に造りが違うようだな。」



最初に思うこと。


それは見方によっては砦と呼べるほど大きな建物なのに、

出入り口が一ヶ所しか見当たらないということだ。



正面にある唯一の出入り口以外、

全てが強固な石材で固められている。


見える範囲には窓すら存在しないため、

外部から中の様子をうかがうことすら出来ない。


もしかしたら屋上には換気口くらいあるかもしれないが、

下からでは確認できなかった。


少なくとも、見える範囲から内部を覗き見る方法はなさそうだ。



だから、と言うべきかどうかは判断に悩むところだが。


ここまで堅牢な造りだと唯一の出入り口を封鎖してしまえば外部との交通手段が完全に閉ざされてしまう構造ともいえるだろう。



…まあ、目的が目的だからな。



極端な構造で建てられた試験会場だが、

その理由はおそらく一つ。


徹底的に『強度だけ』を追求した結果だ。


それ以外の利便性は排除したのだろう。



良く言えば安全重視だが、悪く言えば監獄とも言える。


その両面を兼ね備えているかのような異様な雰囲気の建物だが、

検定会場と呼ばれる施設はここだけではない。



同じ造りの会場がかなり遠くまで幾つも並んでいるのが見えるからだ。


校舎を取り囲むような形で12棟存在しているらしい。



だからこそ。


ここが始まりの地と言える。



全ての生徒が必ず一度は通過する会場。


この場所こそが学園での頂点を目指すための開始地点ということだ。



「さすがにここには多いな。」



入学式以降あまり見かけなかった新入生達の姿も確認できた。


彼らは入学式当日から試験に参加するつもりなのだろうか?



血気盛んと言うべきか。


それとも努力家と言うべきか。



気合いをいれて会場に入っていく新入生達の後ろ姿を見送りつつ、

再び生徒手帳を開いてここでの目的を再確認してみる。



各試験会場で行う『検定試験』


その試験内容はとても単純だ。



学園に在籍する生徒同士が1対1で試合を行って互いの実力を競い合う。


ただそれだけだからな。


難しく考えることは何もない。


勝つか、負けるか、ただそれだけだ。



もちろんそこに意味があるわけだが、

試験の目的は大きく分けて二つある。



一つは学園で学んだ魔術を実践で使えるように訓練すること。


そしてもう一つが学園の頂点を目指すことだ。



この学園の生徒達には全員『生徒番号』という数字が与えられている。



何番の誰々、という感じだな。



この番号こそが生徒の実力を判断する重要な要素になっている。



つまり。



『生徒の実力』=『生徒の番号』ということだ。



入学式が終わった今日、現在。


学園の生徒総数は12416名と発表されている。


そのうち新入生は1024名らしい。



そして肝心の生徒番号だが。


1に近い小さな番号を持つ生徒ほど実力がある証となり、

1万に近い番号を持つ生徒ほど下位の成績ということになる。



だからこそ検定試験は生徒番号を奪い合う為の試合と言っても良い。



入学試験首位だった俺の生徒番号は11393番だ。


新入生に与えられた数字の中では最高の番号になっているらしい。



ひとまずはこの生徒番号を1に近づけることが当面の目的となるだろう。


そのために今後の基本的な方針として検定試験を進めることが最も重要になってくるのだが、

試験を始める前に考えなければならないことは幾つかある。



まず最大の問題は試験の結果だな。



自分よりも生徒番号の大きな下位の生徒と戦った場合。


勝てばそのまま残留だが、

敗北した場合は即座に自分の番号を奪われて対戦相手の番号と入れ替わることになる。



単純に言えば降格だ。



逆に生徒番号の小さな者に戦いを挑んだ場合。


負けて失うものは何もないが、

勝利すればその生徒の番号を奪い取って成績を上げる事が出来るようになる。



こちらは昇格と言えるだろう。



それらを踏まえたうえで。


最初の目的として生徒最強を目指すのであれば、

頂点の証である生徒番号1番を手にする事が必須条件になる。



当然その目的を達成するためには1万人以上の生徒を倒して頂点を目指さなければならないということだ。



その道程は果てしなく長いとしか思えないが、

それでも乗り越えなくては『卒業』は難しい。



…今日は調査だな。



会場での試験はどの程度の難易度なのか?


今の俺でも通用するのか?


それとも入学試験首席の実力ですら試験を乗り越えるのは難しいのか?



それらの答えを知るために。


会場の入口に向かって歩みを進めようとしたところで小さな違和感に気付いた。


先程まで感じなかったはずの視線が再び感じられるようになったからだ。



…またか。



おそらく先程まで尾行していた人物だろう。



はぐれたあとに俺がここへ来ると判断して先回りしていたのだろうか?


それとも単なる偶然だろうか?



どちらが正解かは分からない。


答えがどちらかによって尾行者の評価は大きく変わるのだが。


もしも確信して先回りしていたのなら油断できない相手なのは間違いない。


目的は不明だが、

追跡が面倒と判断してここへ先回りしていたのなら警戒しておく必要があるだろう。



だが反対にこれが単なる偶然や運に頼る人物だとしたら、

気にかける必要がないと判断してもいい。



ただ今はどちらにしても余計な接触は避けるべきだ。


姿を見せない相手に対して気づいていないふりを続けておいたほうが良い。



…尾行の対応は後回しだ。



まずは試験の偵察を行うために会場内へ進むことにする。


そうして検定会場に足を踏み入れた直後に。



…?



何者かに背後に回り込まれた気配を感じた。



…接近してきたのか?



気になるが焦って確認することはしない。


気づかないふりを続けてゆっくりと会場内を進んでいく。



…今までで一番距離が近いな。



振り返れば相手の姿を確認できそうな気がするほどだ。


だがここで相手と面識を持ってしまうと面倒なことになりそうな予感もする。



…まだ早い、か。



後方の監視者と周囲の試合。



どちらにも気を向けるが、振り返りはしない。


今は会場内の偵察を進めたいからな。


上級生や新入生達の奮闘を眺めるのが先決だ。



…せっかくここまで来たんだ。



ここで邪魔をされるのは面倒でしかない。


今は試合に集中するべきだ。


後方は無視して会場内を見回してみる。


入口付近を通り過ぎて試合場が並ぶ区画まで進んでみると、

会場内の各地で試合が行われている様子が確認できた。



…ほう、こうなっているのか。



初めて訪れた会場内を見て少し感心してしまった。



…思った以上に広いな。



全ての検定会場が同じ造りなのかは分からないが、

とにかく広い空間には会場を支えるための柱が立っている以外何もなかった。



見える範囲の全てに試合場が並んでいる。



…ざっと数えて81の試合場があるようだな。



各地に見える柱には地図が張り出されているため、

目的となる試合場を見つけるのは難しくないだろう。



縦に9つ。横に9列。


合計81の試合場があるらしい。



そして一つ一つの試合場もかなり広い。



正確な距離は分からないが、

目測で直径40メートルの円形。


試合場には中心線が引かれていて、

2つの区画が分かるように色分けされている。


そしてそれぞれの区画の中心には小さな円形の紋様が描かれているのだが、

おそらくこの紋様が試合の開始位置ということだろう。


開始位置から見て対戦相手との距離はおよそ20メートル。


魔術師同士による試合と考えた場合。


遠いとも近いとも言えない微妙な距離だな。



遠すぎると攻撃が当てにくく、

近すぎると自らの魔術に巻き込まれてしまうからだ。



…とはいえ。



最初に訪れる検定会場ということもあって、

そこまで大規模な魔術が使われている様子はなかった。


見たこともない魔術が飛び交い、

各地で勝敗がつく様子が確認できるのだが、

今のところ驚くほど強力な魔術というのはなさそうに思える。



会場全体で数十もの試合が並行して行われているからな。


全ての試合を観戦するのは難しいが、

見える範囲だけで言えばそこまで各生徒の実力に差があるようには思えなかった。



…これが魔術師同士の戦いなのか?



試合中の生徒達が真剣に戦っているのは間違いない。


だが見ている側としては、

魔術の撃ち合いというよりも球技大会のように思えてしまう。



…飛んでくるのは殺傷力のある魔術だが。



当たらなければ意味がない。


他の会場の様子は分からないが、

現状の感想でいえば先に攻撃を命中させた方が勝ちと言えるだろうか。



もちろん見学して感じることと実際に経験して感じられることには大きな差があるだろう。


それでも知らないよりは知っていた方がいいと判断して一通りの試合を観察するつもりだったのだが、

後方からの監視の視線のせいで集中できずにいる。



………。



いら立つほどではないが、

どうしても気が散ってしまうからだ。



…さすがに面倒になってきたな。



これ以上の観戦は諦めるか。



一つでも多くの試合を見ていたかったのだが、

監視された状態では動きにくいからな。


試合の調査を中断して、

大人しく会場を離れることにした。



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