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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
896/1104

馬鹿のくせに

《サイド:近藤悠理》



…ん~?



御堂先輩達が出発の準備を進める中で、

私は優奈に歩み寄ることにしたわ。



「ねえねえ、優奈も行くんでしょ?」


「うん!そうだよ!」



優奈は笑顔で頷いてくれたの。


まあ、聞くまでもなかったわね。



「それじゃあ、私も…」


「ダメだ!」



一緒に行く…って言葉にする前に突然遮られてしまったのよ。



…えっと?



戸惑いながら周囲を見回すことになってしまったわ。



その結果として。


声の主を発見してしまったのよ。



「悠理はここに残れ!」



…うぁぁぁぁ~。



命令しながら歩み寄ってきたのは、お兄ちゃんだったの。



「雨宮から話は聞いた。一応言っておくが、これから米倉代表が向かうのはアストリアの最重要基地だ。だとすればアストリア軍は間違いなく総力を挙げて迎撃してくるだろう。そうなれば激戦は必至!実力のないお前が行っても足手まといとなるだけだ!!」



…ぅぅぅぅ。



一方的に怒鳴りつけて、

私を引き止めようとしているのよ。



…でも。



私は優奈と一緒にいるために戦争に参加したの。


だから優奈と離れ離れになるのだけは絶対に嫌。



そう思ってお兄ちゃんに反論しようとしたんだけどね。


その前に理事長も私の参加を断ってきたのよ。



「ごめんね。悪いけれど、さすがに今回だけは認めるわけにはいかないわ。これから向かう先は敵の本拠地とも言える危険な場所なのよ?そんな場所に小数で突撃しようとしているの。正直な話。戦力にならないあなたを守りきる余裕なんてないわ。」



…うぅぅ~。



そんなにはっきりと言われたら反論できないじゃない。



だけど、優奈とは離れたくないし。


精一杯の悲しそうな表情で、

優奈に救いを求めてみることにしたのよ。



「ね、ねえ…優奈?」


「ごめんね…悠理ちゃん。でも、悠理ちゃんはここで待ってて。」



…ちょっ!?



「必ず戻って来るから。だから、悠理ちゃんはここに残って待ってて。」



…い、嫌よ!



それは無理っ!!



「私は優奈と一緒に…!」



一緒に行きたいって思うんだけど。


優奈は悲しそうな表情で私を見つめてた。



…たぶん、きっと。



優奈も我慢してるんだと思う。



だけど。


だからこそ。


私は我慢できなくなってしまうの。



我慢できなくて。


涙を浮かべてしまうくらい。


私は優奈と一緒にいたかったのよ。



「私…は…」



一緒に行きたいの。



はっきりと言いたいのに。


私の気持ちを優奈は否定してしまったわ。



「ごめんね。悠理ちゃんはここで待ってて」



泣きそうになりながらも必死に微笑み続ける優奈。



だけどその瞳には、

はっきりと涙が浮かんでた。



今ここで別れてしまったら、

お互いにもう二度と会えないかもしれないって感じていたから。



だから私達は泣いていたのよ。



「私も一緒に…っ。」



呟く私を見た優奈は静かに首を左右に振ってた。



「ダメだよ…悠理ちゃん。」



私を引き止めるために、優奈は泣いてた。


優奈にとっては私の実力なんてどうでも良かったと思う。



ただ『生きてほしい』って、

そう願っていたんだと思うの。



ここなら多くの仲間がいるから。



だけどこれから向かう先は敵の本拠地で、

僅か数名での突撃作戦なのよ。



そんな危険な場所に、

私を巻き込みたくなかったんだと思う。



「ごめんね…悠理ちゃん。」



優奈が何度も謝ってくれる。



だけど私はね?


そんな言葉が聞きたいわけじゃないの!



「優奈ぁ…っ。」



断られても諦め切れない私をお兄ちゃんが説得しようとしてた。



「…悠理。指揮官の指示に従うと約束したはずだ。」



…そ、それは確かにそうなんだけど。



だけどそれは優奈と一緒にいるためであって、

優奈と分かれるためじゃないわ。



…なのに。



この状況だと何を言っても聞いてもらえない気がするのよ。



そう思ってしまったから、

何も言い返せなくなってしまったの。



…だけどね。



それでも想いは断ち切れないのよ。



「私は…」


「泣くな…悠理っ!!」



涙を流す私に、

今度は馬鹿が話し掛けてきたのよ。



「どっちにしてもこの戦いが終われば次の戦場に行くことに変わりはないんだ!!だから…だから泣いている暇があったら、1秒でも早くこの戦いが終わるように頑張ればいいんだ!!」



…くっ!!



馬鹿のくせに…良いこと言うじゃない。



…でも、ね?



「僕が悠理を守るっ!!だから…だからっ!泣くなっ!!」



その台詞が余計なのよ。



全力で想いを語る馬鹿に対して、

冷ややかな視線を向けたくなるのよね。



「だから、あんたに守ってもらわなくても良い…って、言ってるのに…。」



その自信と根拠はどこからくるの?



私よりも弱いくせに。


どうやって守るって言うの?



ホントに馬鹿だと思うわ。



…でもね?



言ってることは間違ってないって思うのよ。



馬鹿の馬鹿さ加減は何も変わらないけれど。


いつだって真剣に何かと向き合っているのよ。



「…うん。まあ、良いわ。確かにこの戦いが終われば追い掛けられるんだし…。そう思えば少しくらいは我慢出来ると思う。」



要するにね。


勝てばいいのよ。



ここで陰陽師軍を撃退できれば、

優奈を追いかけられるんだし。


また合流できるはずなのよ。



そう思えたから優奈と手を握りあうことにしたの。



「絶対に追い掛けるからね!だからそれまでは、絶対に何があっても死なないでよ、優奈!」


「うん!また会えるって信じてるから…。だから、悠理ちゃんもいなくならないでね…。」



覚悟を決めた私に優奈も涙を零しながら願ってくれたわ。



うんうん!


これなら大丈夫!



私は死なないし。


優奈も死なない。



だから必ず合流できるの!!



ちゃんと約束したんだから。


約束は絶対に守ってみせるわ!!



「またあとでね。」


「うん!」



再会を誓い合う私達はゆっくりと手を離したのよ。



まだちょっと寂しいけどね。


だけど悲しくはないと思うの。



「必ず追い掛けるから!」


「うん♪待ってるね!」



こうして私達は別々の戦場へと向かうことになったのよ。



「…悠護。しっかり妹を守るのよ。」



私達の様子を見守っていた理事長がお兄ちゃんに話しかけてた。



「はい!もちろんそのつもりです!」



理事長の言葉に即答するお兄ちゃん。


その返事を聞いて、

理事長は微笑みを浮かべてたわ。



「必ずこの戦闘に勝利して守ってみせます!」


「ええ、信じているわ。そのために今後の方針を決めましょう。」



お兄ちゃんの言葉に満足した理事長は、

今後の打ち合わせを始めたのよ。




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