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THE WORLD  作者: SEASONS
4月4日
89/185

勝利の報酬

強引に試合の手続きを終えて試合場に移動したわけだが。


待ちに待った二戦目。


一方はあいつ一人だが、

もう一方は岩永と大森の二人だ。



今回も俺は審判員として参加することにした。


出来ることならこのままさっさと試合を始めたいところだが、

さすがにいつまでも放ったらかしってわけにはいかねえからな。



まだ事態を把握できていない岩永と大森に一応話し掛けておくことにした。



「ったく、いつまでも驚いてないで、お前らもさっさと試合の準備を始めろ。」


「い、いや、準備といっても…これはどういうことなんだ?」



尋ね返す岩永は本当に空気が読めないやつだよな。


この状況から考えられる可能性は『一つ』しかないだろ?


それでも説明を求める岩永を無視すると後々面倒なことになりそうだからな。


何を今さらと思いながらも簡単に説明はしてやったよ。



「説明は3つだよく聞けよ。」



1、こいつがお前らに試合を申し込んだ。

2、お前らは拒否権さえなくここにいる。

3、今から試合を始める。



「以上だ。これで十分だろ?」



自分でも大雑把過ぎる説明だったとは思うが、

それが事実で現状だからな。


他に説明するようなことは何もねえ。


正式に試合が組まれたんだ。


今更文句を言ってもどうにもならねえ。


俺の説明を聞いて余計に戸惑いを見せていたが、

ひとまず二人はあいつに視線を向けていた。



そしてじっとあいつを見つめる。



その様子は純粋に相手を見極めようとしているようにも思えたし、

誰だコイツは?って感じで戸惑っているようにも見えたな。



まあ、実際のところどう思ってるかなんて他人にはわかりようもねえけどな。


とりあえず岩永と大森はあいつを見つめながら何かを考えている様子だった。



目の前にいるのは全く無名の生徒だ。


なぜここにいるのか?という疑問ももちろんあるだろうが、

なぜ2対1なのか?という疑問もあっただろうな。



他にも思い付く限りの疑問を頭の中に浮かべていたようだが、

しばらくして二人は互いに視線を合わせて相談し始めた。



「どう思う?とりあえず戦えばいいのか?」


「これってどう見ても2対1だよな?」



岩永に問い掛ける大森だが、

大森も岩永に問い返している。


緊張感の欠片すら感じられない二人はここへきてもまだ現実を認識できないらしい。



まあ、多対一ってのは通常ありえない試合だからな。



戸惑うのも仕方ないと思うが、

だからと言っていつまでも待っていたって仕方がねえ。


ひとまず二人が混乱する様子を見かねて指示を出すことにした。



「ぐだぐだ言ってねえで、さっさと戦えって言ってんだ。どうせお前らが負けるのは目に見えてんだからな。相談してねえでさっさと始めろ!!」


「「はあっ!?」」



自分でもちょっとばかし言い過ぎたとは思うが、

あまりにも一方的な暴言によって戸惑っていた二人の表情が急変していった。



怒り心頭ってやつだな。


まあ、そうなるようにわざと挑発したんだが。


全く無名の生徒を相手にして二人がかりでも負けるって宣言したのはわざとだ。


そうでも言わねえと気を抜いて本気を出しそうになかったからな。



とはいえ。



いくら俺の発言とはいえさすがに納得出来なかったらしい。



「ふざけるなっ!!」


「どういうつもりか知らないが、俺達二人を相手にして勝てるっていうのか!?」



憤慨する二人が俺を睨みつけてくる。


怒りに燃える二人だったが、

だからといって俺の考えが変わるわけじゃねえ。



桃花ですら秒殺としか言えない扱いだったんだぞ?


それを考えればもうあいつを止められる生徒はごく一部しか考えられねえだろ。



「はっ。やればわかることだろ?」


「なっ、なめやがって…!!」



怒りをあらわにする大森は拳を強く握りしめて俺に殴りかかろうとしてたが、

その前に暴れだしそうな大森をなだめるかのように岩永が一歩前に進み出てきた。



「北条には何を言っても無駄だ。だから…」



岩永は俺とあいつに交互に視線を向けてから、

試合に関して条件を突き付けてきやがった。



「6位と7位の俺達に対して、10位にすらなれない奴では釣り合わないだろ?俺達にだって意地がある。やるなら北条、お前も参加しろ。2位と足でまといなら釣り合いが取れる。」



…釣り合いだと?



笑っちまうよな。


岩永の提示した条件を聞いた瞬間に大声で笑ってやったよ。



だってそうだろ?



このまま始めても二人が勝てると思えないのに、

俺にも参加しろって言ってきたんだぜ?



「ははははっ!!!やめとけ、やめとけ。言っただろ?もうすでに勝負は見えてるってな。俺まで参加したらお前等、5秒ともたねえぜ」



本気で笑った俺の行動が気に入らなかったんだろう。


とうとう岩永も本気で怒りだした。



「くそっ!なめやがって…!!」



険悪な雰囲気が広がる。


まさに一触即発って感じだったな。


だがまあ、そんな雰囲気になったことで今度はあいつが対戦相手に話しかけていた。



「言い争っても意味はない。勝てると思うのならその実力を示せばいい。ただそれだけだ」



まあ、あいつの発言によって二人が落ち着いたのかどうかはわからねえ。


それでも岩永と大森は少しだけ冷静さを取り戻した様子だったぜ。



…そう。



勝てばいいんだよ。


勝てば言い争う必要はねえ。


無駄に俺と口論する必要なんてどこにもねえんだ。


自分達がなめられていると思うのなら俺を黙らせる為に試合に勝てばいい。



ただそれだけの事だ。


二人もそう思い直したんだろう。


ようやくあいつに視線を戻した。



「随分と強気な発言だが、勝てるつもりか?俺達二人に」


「言ったはずだ。言い争いに意味はない。どちらが上を行くかは戦えばわかる事だ。」



淡々と答えているが、

あいつも悪気はなかったと思うぜ。


負けても不満を言うつもりはないって感じだったな。



まあ、あいつの場合は今までもそうだったが、

勝ち負けよりも試合内容を重視してるからな。



一つでも多くの経験が積めるのなら勝敗はどちらでもいいと思ってそうな気さえするよな。



もちろん、やるからには勝利を目指すって感じだが、

負けたとしても落ち込んだりはしないだろう。



俺としてはここであいつが負けると面白みに欠けるからしっかり勝ってもらいたいところなんだが、

100%勝てる試合を見るってのも面白くないからな。


岩永達のやる気が少しでも上がるように今度は俺からも二人に条件を出すことにした。



「まあ、この状況で話し合う必要はないんだが、それでもお前等がどうしても気に入らないっていうのなら、俺からも条件をだしてやろう」



俺が提示する条件。


それは二人にとって間違いなく喜ぶ内容のはずだ。


だからあいつに指を指しながら二人に宣言してやった。



「もしもお前等がこいつに勝てたら無条件で2位を譲ってやるよ」


「なっ!?」


「本気かっ!?」



俺の発言によって、岩永と大森だけでなく、

周囲の観客達までもが驚きの声を上げてどよめきが生まれていた。


自分で言っておいてなんだが、

それほど驚くことなのか?



たかが数字だろ。



俺としては1番じゃないなら2番も100番も学園最下位も全て同じだと思うんだけどな。


それでも岩永達は学園2位の称号に目がくらんだらしい。



「本当だろうな?」


「ああ。なんなら、3位も俺が用意してやるよ。」



2位の俺と3位の沙織。


その地位がこの試合に勝てば手に入る。


俺の出した条件によって岩永と大森の二人の戦闘意欲が一気に向上したのは間違いないだろう。



「それならやる価値があるな。」



目の前にいる総魔の実力を知らない二人だが、

2対1で負けるはずがないと思い込んでいることで苦労せずに順位を上げる事が出来ると思ったんだろうぜ。



内心では喜んでいたはずだ。



まあ、二人にとっては負けるはずのねえ試合なんだろう。


絶対に勝てる試合で労せず上位に上がれるとなればやる気が出るのも当然か?



俺としては実力の伴わない数字にどれほどの意味があるのか疑問だが、

こんなことで二人のやる気が出るのなら安い取引だとは思ったさ。



一応、二人にとっては意地や見栄よりもあいつと戦って勝つ事が目的になったようだ。


ある意味、思うつぼってやつだな。



「やっと、その気になったみてえだな」



微笑む。


不安はねえ。


あいつが勝つって本気で信じてるからな。



いや、この場合、信じるってのは少し違うか。


まだ天城総魔を信用したわけじゃねえからな。



悪い奴じゃないとは思うが、

だからといって信用できるかどうかは別問題だ。


単純に実力差を考えた場合に岩永達では勝てねえだろうなって考えてあいつの勝利を確信してたって感じか。



だからこそ。



そんな俺の余裕の態度を崩してやろうと岩永と大森は企んでいたようだ。



試合場の周囲では試合の行く末を固唾を飲んで見守る観客達がいるが、

その観客達もだいたい俺と同じ考えだったと思うぜ。


一度はあいつの実力を目にしてるわけだからな。


何も知らない奴も何人かはいるだろうが、

桃花達の結末を知ってるやつらからすれば岩永達の末路も予想の範疇だろう。


あいつはただじっと試合開始を待っているだけだが、

試合場で向かい合う岩永と大森の二人は格上げを目指して気合を入れている。



かませ犬としては十分な活躍をしてくれそうだったよ。



その気合で少しでもあいつを追い詰めてくれれば本来の役目と言える情報収集も進むんだが、

そこまでは期待してないってのが本音になるか。



とりあえずはあいつの試合が見れればそれでいいって感じで両者の間に立って試合開始へ動き出すことにした。


今回も試合場の中央に立って両者に視線を向けてみる。


審判ってのは地味だが、

この瞬間だけは試合を仕切ってるって感じがしてそれなりに楽しかったぜ。



「とりあえず試合の前に、一つだけ教えておいてやる」



試合場の中央に立った俺はどちらにともなく話し掛けることにした。



「今ここにいる全員。ルーンが使えるってことを、だ。」



俺の宣言を聞いた瞬間に岩永と大森が揃って動揺の表情を浮かべるのが見えた。


無名の生徒がルーンを使えるとは思ってなかったんだろう。


今までもそうだったが、

知らなかったという動揺の隙をつかれて敗北する生徒が多かったからな。


今回は前もって宣言してやった。



「もう一度言っておくが、ここにいる『全員』だ」



もちろん俺自身もそうだという意味は含ませてある。


だが、重要なのはそこじゃねえ。


岩永と大森の二人もルーンを使えるっていうことだ。


あいつは何も言わなかったが、

少なからず俺の言葉に影響を受けていたと思うぜ。


今までのように正面から突き進むのは危険だと判断したようで、

間合いを図るかのような視線の動きを見せていたからな。



まあ、その判断は正しいだろう。



ルーン同士の戦いになればコンマ一秒の判断が必要とされるからな。



瞬きの一瞬でも気を抜いた瞬間に致命傷を負うことになる。


それ相応の戦術を考えない限り、

無傷で勝ち抜けることはまず無理だ。



そのことに気づいたあいつが戦い方を考える最中に、

対する岩永と大森も考えを改めていた様子だった。


対戦相手が単なる無謀な挑戦者じゃねえって知ったからな。



ルーンの使い手なら2対1でも油断出来る戦いじゃねえ。


それでも負ける気はねえんだろうが、

下手に苦戦すれば俺に見下されるのは確実だ。


二人は全力で戦って圧勝してみせると互いに誓い合っていた。


そんな二人を横目に眺めながら試合開始を宣言する。



「もう後戻りは出来ねえぜ。試合、始めっ!!」



こうして3人の試合が始まった。



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