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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
886/1200

白と黒の旗印

《サイド:米倉美由紀》



さて、と。


そろそろ午前7時頃かしら?



中継地点のノーストリアムを通過した私達の部隊は、

王都に向かって軍を進めているところになるわ。



「そろそろ危険地帯になるかもしれないわね」



王都まではまだまだ距離があるけれど。


ここから王都までは草原が広がる一本道なのよ。



障害になるような物は何もないし。


特に隠れられそうな場所もないの。



だからこそ敵の姿が探しやすいと同時に、

こちらも隠れることができないのよ。



それに夜の間に伝令部隊が行動していた可能性を考えれば、

すでに王都からアストリア軍が出陣してる可能性も考えられるわね。



もしもそうだとすれば、

時間的にもアストリア軍と遭遇する可能性が非常に高いはずよ。



「いつアストリア軍が接近してきてもおかしくないわよ。」



可能性を考慮する私の予感が的中したのか、

先行して前方を警戒していた偵察部隊が慌ただしく退却してきたわ。



「大変ですっ!!」



慌てて戻ってきた兵士達に、

悠護が対応に出る。



「何があった!?」



その質問は当然だけど、

答えは聞くまでもないでしょうね。


すでに想定していた内容だからよ。



「前方に敵軍です!白と黒の紋様の旗を掲げた敵部隊!あれは間違いなく『陰陽師軍』です!!」



…う、わぁぁぁ。


…冗談でしょ?



これはちょっと想定外…かも。



普通に軍隊が押し寄せてくるものだとばかり思っていたからよ。



だけど、実際に来たのはそうじゃなかったみたい。



白と黒が交わり合う文様。


それはもう間違いなく陰陽師が掲げる旗印だと思うわ。



「やはり来たか!」



悠護は気づいていたのかしら?


やはり、って言うからには想定していたのかもしれないわね。



苦々しく呟く悠護に続いて私も兵士に問い掛けてみる。



「こっちの戦力は限られているのに陰陽師が相手だとまずいわね。どうなの?敵の兵力は分かっているの?」


「その、目測ですが。約3万かと…」


「なんだとっ!?」



兵士の報告を聞いて、

悠護の驚きは一層高まったようね。



陰陽師軍3万に対して、こちらは1万2千。


圧倒的に不利な戦力差になるわ。



「迂回は間に合うか!?」



悠護の提案に対して兵士は首を左右に振ってしまう。



「いえ、すでに手遅れです。敵部隊は前方から広範囲に展開して接近しています。撤退なら間に合うかもしれませんが、迂回は無理です。このまま迎え撃つのであれば急いで迎撃の準備を行うべきかと思います。」



…まあ、そうなるわよね。



迂回はともかく、撤退案は無しよ。



私達が助かっても砦に残してきた戦力は確実に壊滅してしまうわ。



鞍馬総司令官に預けてきた部隊と私達の部隊の戦力はそれほど変わらないけれど。


砦の制圧で疲弊した直後に陰陽師軍に狙われでもしたらまともに戦えるとは思えないし、

砦そのものを盾替わりにしても時間を稼ぐのが精一杯でしょうね。



だとすれば。


ここで陰陽師軍を足止めするのが最良の作戦よ。



樹海の砦じゃなくて見晴らしのいいこの草原なら、

広範囲魔術で陰陽師軍を一掃できる可能性もあるわ。



もちろん反対に攻撃を受ける可能性もあるわけだけど。


砦で迎え撃つよりは勝率が高いはずよ。



そしてその考えが間違っていないことを示すかのように悠護が私に進言してきたの。



「後続として鞍馬様が来られると信じて、ここで敵を迎え討ちましょう!」



ええ、そうね。


悠護も同じ考えみたい。



だとすれば迷う理由はないわ。



戦う意志を見せる悠護の瞳を見て、

私も戦う覚悟を決めたのよ。



「回避出来ないのなら仕方がないわね。全軍散開、戦闘準備開始!!」



私の指示をきっかけとして、

悠護の指揮の下で全ての部隊が戦闘体勢に入っていく。



「陰陽師軍を迎え討つぞ!!」



悠護の号令を受けて部隊を展開する共和国軍。


草原での布陣が整うのとほぼ同時に、

高らかと旗印を掲げる陰陽師軍が姿を見せたわ。



「出来れば避けたかったけれど…。ついにアストリア軍の主力部隊の登場ね。」



呟いた私の声が聞こえたんでしょうね。


翔子が御堂君の隣に歩み寄っていたわ。



「ねえねえ?龍馬は陰陽師って知ってる?」


「え?ああ、一応ね。魔術師と似たようなものだよ。ただ、向こうは特殊な力を持ってるから軍隊以上に厄介だよ。まあ、それは向こうから見れば魔術師も同じだろうけど。だからこそ、僕達と互角に戦える能力者でもあるんだよ。」



魔術師と互角の存在と答えた御堂君の視線の先で、

陰陽師軍も戦闘体勢に入っているわ。




…う~ん。


これは分が悪いわね。



報告で聞いた数字と実際に目にする数では威圧感が違うからよ。



…はぁ。



頭が痛くなってくるわ。



ほぼ互角の能力を持つ者同士での戦闘は『数』が戦局を左右するからよ。



兵士の数に3倍近い差がついてるこの状況だと、

共和国軍の苦戦は必至でしょうね。



「上手く陰陽師軍の部隊を各個撃破できればいいんだけど…。とにかく今は始めるしかないわね。」



徐々に迫る陰陽師の軍を眺めながら悠護に指示を出してみる。



「さすがに兵の数に差がありすぎるから敵部隊を各個撃破するしか勝ち目はないわ。出来る限り防衛に徹しながら主戦力をかき集めて遊撃部隊を用意しましょう。」


「はっ!!了解いたしました!」



私の指示を受けた悠護が軍の編成へと動き出す。



どういう方法をとるのかは知らないけれど。


軍の指揮は悠護に任せているから私は見守ることしかできないわ。



だから今は走り去る悠護を見送ってから御堂君達に声をかけることにしたのよ。



「御堂君達も気をつけなさい。この戦いは序盤から総力戦になるわ。油断は死に繋がるわよ。」


「頑張ります!」



私の忠告を聞いた御堂君達の表情に緊張感が生まれる。



真剣な表情で答える御堂君に続いて、

翔子達も気合いを入れ直していたわ。



「総魔を見つけるまでは何があっても頑張るわよ!」


「はい♪」



翔子の宣言に深海さんは元気良く頷いてる。


明るい雰囲気が漂う翔子と深海さん。



そんな彼女達の隣にいる悠理さんは真剣な表情を見せているわ。



「…生きて帰ろうね。優奈。」


「うん♪」



笑顔で頷く深海さんを見て手を繋ぐ悠理さんだけど。



「心配しなくても大丈夫!悠理は僕が守る!!」



必死に歩み寄ろうとする武藤君。


この辺りのやりとりはずっと続いているわね。



逃げる悠理さんと、追いかける武藤君。



そんな二人を今回は北条君が引き止めてくれるみたい。



「その気があるなら敵の動きから目を逸らすな。一瞬の油断が悲劇に繋がるからな。」



…そう。



そこを考えて欲しいのよ。



ここから先は馬鹿をやっていられるほど余裕がある状況じゃないの。



「守りたいものがあるのなら、全力で守り抜け。」


「はい!もちろんです!全力で頑張ります!!」



うんうん。


良い返事ね。



真剣な表情で告げる北条君を見て、

武藤君はしっかりと頷いていたわ。



色々と問題のある子だとは思うけれど。


こういう素直な部分は好感が持てるわね。



ぜひとも北条君と翔子にも見習ってもらいたいところよ。



…って、まあ、そういう考えが油断なのよね。



今はくだらないことを考えてる場合じゃないわ。



共和国軍と陰陽師軍。



どちらが勝つのかによって戦争の行方は変わってしまうから。



「意地でも負けられないのよ。」



両国の存在をかけた戦闘。


この戦争最大の激戦が始まろうとしていたわ。



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