大混乱
《サイド:栗原徹》
…ついにここまできましたね。
二人で隠れ家を出た僕達は、
王城が見える橋の前まで接近しました。
「昼間とはかなり変わりましたね…。」
ここへ辿り着く前にも噂では聞いていましたが、
実際にこの目で見てみると噂が真実であったことはすぐにわかります。
夜の暗闇がどうとか。
全体を見回してみなければとか。
そんなことを考えるまでもなく、
分かってしまうのです。
数時間前まで絶対的な存在感を放っていた王城が今は無残にも崩れかけていました。
月明かりでわかる範囲で言っても、
間違いなく王城の半分が消し飛んでいるように思えます。
これほどの大打撃を受けたとなれば、
もはや警備がどうこうと言っている場合ではないでしょう。
人命優先で救助作業が行われているのは間違いないと思います。
だからこそ。
今なら潜入は難しくないとも思えました。
「このまま突撃ですか?」
「ああ、そうだな。」
天城さんは王城を眺めながら答えてくれました。
「強行突破で良いだろう。」
人目を避けることなく、
正面から乗り込むつもりのようですね。
「一応、言っておくが…」
天城さんは兵器の攻撃浴びて崩れかかっている王城を観察しながら僕に説明をしてくれました。
「おそらく王城の警備は手薄になっているはずだ。そもそも多くの軍隊は王都を出発しているからな。それに残った軍も研究所で壊滅しただろう。少なからず生き残っている兵士はいるだろうが、俺達の捜索の為に王都全域を警戒している可能性が高い。」
…ああ、なるほど。
王都の半分以上が壊滅している状況ですからね。
残る部分も多大な被害が広がっていて、
懸命な救助作業が行われているはずです。
その作業にアストリア軍が参加しているのはもちろんのこと、
侵入者である僕達を捜索するために王都全域に拡散していると思われます。
そうなれば戦力が分散するのは当然のことですし、
王城の警備が手薄になると考えるのもうなずけました。
「その意見には賛同します。」
「ああ、残ったアストリア軍は俺達の逃亡を考慮して王都の封鎖を狙って包囲網を作ろうとするだろう。そうなれば必然的に王都の内部…特に王城の警備は薄れるはずだ。仮に気付かれたとしても間に合いはしない。」
王都を見回す天城さん。
研究所の大爆発と大地震によって騒然となる王都の各所からは火の手が上がっていて、
王都は全体的に大混乱に陥っています。
…これらが落ち着くのは?
いえ…落ち着くことがあるようには思えませんね。
一通りの状況が判明するのは朝を迎えてからでしょう。
今ならこの混乱を利用して自由に動き回れるはずです。
「この混乱が収まる前に王城に潜入するぞ。」
「はい!」
意を決して動き出す天城さんの後について僕も歩きだしました。




