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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
876/1200

二人でなら

《サイド:三倉純》



…ったく!


…もう~〜〜〜〜〜〜っ!!



まだなのっ!?


随分と時間がかかるわね!!



「兵器の起動はまだ!?」



焦りが募って、

ついつい叫んでしまったわ。



だけどどれだけ焦っても、

事態は好転しないどころか確実に最悪の方向へと進みつつあるのよ。



「そろそろ限界ね…。」



朱鷺田さんと私は地上へと繋がる大広間の前から、

すでに通路の別れ道の手前まで後退していたわ。



「このまま奥へと追い込めーー!!!」



突撃を続けるアストリア軍の勢いが止まらないのよ。



それどころか確実に数が増えてきているでしょうね。



王都の各地から研究所に集まる突撃部隊の加勢によって、

私達は後退せざるを得ない状況に追い込まれてしまっていたのよ。



「エクスカリバー!!!!」



朱鷺田さんの攻撃が狭い通路を突き抜けてアストリア軍を薙ぎ倒していく。



だけどね。


それだけじゃ足りないのよ。



次から次へと地下に現れるアストリア軍の全てを片付けることなんて出来ないし。


倒しても倒しても徐々に追い込まれつつあることに変わりはないの。



「数の差だけはどうしようもないわね。」



不満を呟きながらも魔術を発動させようとしてみる。



「フレア・アロー!!!」



通路に響き渡る私の声。



…だけど。



掲げた私の手からは何も起きなかったわ。



「…うわ~、最悪ぅ。」



最も考えたくなかった事態に直面してしまったのよ。



ついに魔力が尽きてしまったの。



ここまで連戦に次ぐ連戦を耐え凌いできたけれど。



それももう、ここまでみたい。



昏倒寸前の目眩を感じてしまったことで、

とうとうしゃがみ込んでしまったわ。



「ごめん…。もう…無理…。」



魔力が底をついたことで、

申し訳なさ一杯に謝罪してみる。



…だけどね。



「いえいえ、謝罪は不要ですよ。」



朱鷺田さんは私を責めなかったわ。



「私が知る限りでも200以上もの魔術を発動させながら今まで持ちこたえてきたのです。ここまで戦えたことが奇跡的ですよ。」



私の努力を褒め称えてから優しく微笑んでくれたのよ。



「下がっていて下さい。あとは何とかしますので。」



たった一人で戦い続けるつもりのようね。


魔術を詠唱する朱鷺田さんは、

私と違ってまだ多少の余力があるみたい。



だけどそれも時間の問題だと思うわ。



「倒れるのが先か、兵器の発動が先か…。際どい勝負になりそうです。」



ええ、そうね。


私もそう思うわ。



小さな声で呟いた朱鷺田さんの後方へと下がって実験室にある兵器に近付いてみる。



…とは言っても。



私に出来ることなんて何もないでしょうね。



兵器はすでに稼働しているはずだし。


発動までの時間を短縮する方法があるようには思えないからよ。



それでもね。


じっとなんてしていられないから、

兵器を観察してみることにしたわ。



「…何とかならないの?」



期待を込めてみるけれど。


手がかりは何も見つからないのよね。



「もう時間がないのよ!!」



焦りを感じる私の背後で朱鷺田さんの声が響いてる。



「ホーリー!!!!!」



…これって光系の最上級範囲魔術よね?



こういう地下で使うと、

逃げ場がないからアストリア軍は相当な被害を出してしまうと思うわ。



実際にどこまでの効果があったのかは確認してないから分からないけれど。


それでも発動した魔術によって、

接近していた兵士達はことごとく倒れたみたい。



…だけど。



そこでまた状況が変化してしまったの。



攻撃の直後に戦闘音が途切れたからよ。



…まさか!?



「朱鷺田さんが…?」



…死んだの?



危機感を感じて焦った直後に。



「く…っ!」



実験室に飛び込んできた朱鷺田さんが勢いよく扉を閉じてから急いで鍵をかけたのよ。



「もって数分でしょうが…。何もしないよりは良いでしょう。」



ああ、なるほどね。


最後の悪あがきってやつよね。



「…ふう。」



扉を施錠した朱鷺田さんは、

兵器の前まで近付いてから崩れ落ちるように座り込んでしまったのよ。



「ちょっ!?大丈夫なの!?」



慌てて歩み寄ってみたけれど。


とくに怪我はないみたい。


いつもと同じように微笑んでくれたわ。



「大丈夫ですよ。何とか今は無事です。ただ…私も魔力が尽きましたので、これ以上は戦えません。」



ああ、そういうことなのね。


私と同じで怪我はないけど魔力もないみたい。



直接、武器を持って戦うなんて何秒も持たないでしょうし。


これはもうお手上げよね。



朱鷺田さんも小さく息を吐いて諦めていたわ。



「もはや蒸気機関がある機械室へのアストリア軍の侵入も防げません。こうなるとあとはもう祈るだけですね。」



まあ、そうなるわよね。



逃げられない。


戦えない。


抵抗できない。



そんな状況で出来ることなんてたかが知れてるわ。



…まあ、仕方がないわね。



時間稼ぎさえも諦めて落ち込む朱鷺田さんにそっと寄り添った私は肩を並べて座り込むことにしたの。



「ここまで頑張ったんだから、もう良いんじゃない?愛里ちゃん達が助かっただけでも十分よ。」



私としてはね。


そう思うのよ。



だから朱鷺田さんの健闘を褒め称えて微笑んでおくことにしたわ。



まあ、私は何も知らないし。


朱鷺田さんにも分からない部分だけどね。



遠距離の魔力の波動までは感知出来ない私達に外の出来事なんてわからないわ。



だけどね。


それでもね。



きっと大丈夫だと思うの。



共和国が最強って認めた天城君が一緒にいるのよ?



外の状況はわからないけれど。


王都から撤退するくらいは出来るはずよね?



「あとのことは信じるしかないわ。あの子達が何とかしてくれる…ってね。」


「ええ、そうですね。『彼』なら何とかしてくれるでしょう。」



私と同じように天城君を信頼する朱鷺田さんは、

残された時間の中で兵器へと視線を向けていたわ。



「かなりの時間を稼いだつもりでしたが、それでも間に合いませんでしたね。」



…う~ん。



どうなのかしら?



兵器の起動からどれくらいの時間が過ぎたの?



よくわからないけれど。


何気なく時計に視線を向けてみる。



時刻はすでに午前2時を過ぎているようね。



起動させた時間は知らないけれど。


さすがにもう30分くらいは経ってるんじゃないかしら?



「もう2時を過ぎてるのね~。」



何気なく呟いてみると朱鷺田さんも時計を眺めたみたい。



「…ふむ。兵器を起動してから推定30分…でしょうか?」



時間を確認していた朱鷺田さんが、

突然微笑みを浮かべたのよ。



「丁度良い頃合いですね。」



…頃合い?



その意味を聞いてみようと思ったけれど。


質問する前に目の前の兵器が激しく輝きだしたわ。



ついに、運命の瞬間が訪れたのよ。



「起動から発動まで『30分』ですか。なかなか焦らしてくれましたね。」



…ホントにそう。



待たせすぎなのよ!!



「…でもまあ、やっとその気になってくれたのね~。」



のんびりと兵器を見つめる朱鷺田さんの隣で私も全てを察したわ。



そして互いに微笑み合ったの。



「三倉さん。最期までご協力頂き、ありがとうございました。」



…ふふっ。



「別にいいわよ?お礼なんてね。」



これは私が自分で望んだことだから。


悔いなんてないわ。



…これで良いの。



後悔なんて何もない。


愛里ちゃんさえ助かれば私は満足できるから。



「悪くない終わり方だと思うわ。だから一緒にいてあげる。二人でなら淋しくないでしょ?」


「はは…っ。」



寄り添う私に朱鷺田さんは最後まで微笑んでくれていたわ。



「一緒に…ですか。惚れてしまいそうな言葉ですね。」



…あははっ!


…そうかもね〜。



「まあ、あなたとなら悪くはないわ。」



…だけどね。



残念だけど。


口説かれてあげるための時間はもうないみたい。



だから私は最期にとっておきの最高の笑顔を見せてあげることにしたわ。



「その返事は次にまた逢えた時に考えてあげるわね。」


「…ははっ。それはそれは…楽しみにしておきますよ。」



来世があれば…と、朱鷺田さんが答えてくれた直後に。


封鎖していた扉が激しい激突音を響かせながら破られてしまったわ。



「兵器を奪取しろーーー!!!」



次々と私達に襲い掛かるアストリア軍。



…でもね?



もう手遅れなのよ。


すでに間に合う状況じゃないの。



「…三倉さん。ありがとうございました。」


「ええ、あなたも…。次に逢える時まで…またね。」



最後まで微笑み合う私達を包み込むように、

兵器がまばゆい光を放ったのよ。



「共和国に平和を…。」



それが朱鷺田さんの最期の言葉。



…そして。



「ばいばい…愛里ちゃん。」



その言葉を最期に…私もこの世を去ったわ。



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