戦線離脱
《サイド:天城総魔》
「オメガ!!!」
幾度となく放つ衝撃波が攻め寄るアストリア軍を一方的に薙ぎ倒していく。
そして同時に光り輝く天使の翼。
純白の翼から光が放たれた次の瞬間に。
発動したアルテマによって周囲に布陣していたアストリア軍は壊滅へと追い込まれていった。
「…そろそろ頃合いだな。」
優先的に指揮官を殺害していった結果として戦列が乱れたアストリア軍はすでに半壊状態だ。
このまま戦い続ければ殲滅も可能かもしれない。
…とはいえ。
今はアストリア軍の殲滅よりも考えなければいけないことがある。
それはつまり。
兵器が起動する前に、
研究所から離脱する必要があるということだ。
ここで兵器の攻撃に巻き込まれて俺まで死んでしまったら、
一足先に離脱した徹や愛里を守れる者がいなくなってしまうからな。
そろそろ戦闘に見切りをつけて撤退するべきだろう。
天使に周囲を警戒させながら、
急いで徹と愛里の魔力の波動を調べてみる。
…だが。
魔力の波動は一つしか感じられなかった。
二人で共に行動しているはずなのに。
王都全域を調査してみても、
魔力の波動が感知できなかったのだ。
「徹は南側か…。だが、愛里は…っ。」
徹は今も移動しているようだが、
愛里の波動は感じられない。
王都のどこを探しても、
愛里の魔力は感知できなかった。
その理由は考えるまでもないだろう。
徹と共に『行動していない』という時点で答えは一つしかないからだ。
「…守りきれなかったか。」
それは徹に対してではなく、
自分に対しての言葉だ。
三倉と約束をして二人を逃がしたのだが、
その結果は失敗だった。
三倉の想いは無駄になり。
俺は約束を守ることが出来なかった。
「…ぶざまだな…。」
それは自分自身に対する不満だ。
徹と愛里を残していれば守れていたかもしれないと思う心を止めることが出来なかった。
もちろん、この場に残していれば愛里だけではなく徹も死んでいた可能性がある。
二人を守りながら戦い抜くのは無理だったと思うからだ。
…だが、それも可能性だ。
二人共守れた可能性もあっただろう。
「判断を誤ったか…。」
今更可能性を考えてみたところで結果は何も変わらない。
どれだけ自分を憎んで、
どれだけ反省しようとも現実は変わらないからだ。
…ならば。
やるべきことは一つしかないだろう。
「…こうなった以上。せめて、この戦争だけでも止めて見せる。」
後悔する暇があるのなら、
一つでも多くの結果を出すべきだ。
何もできないまま終わることはできない。
徹はまだ生きている。
ならば徹だけでも守るべきだ。
そうでなければ朱鷺田と三倉に申し訳が立たない!
「すまない、三倉…。」
愛里を守れなかった気持ちを切り替えて、
今はただ研究所からの離脱を急ぐことにした。




