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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
872/1200

逃走

《サイド:栗原徹》



「急ぎましょう!」



愛里ちゃんの手を引きながら、

王都の町中を駆け抜けました。



…ですが。



どこまで逃げれば良いのでしょうか?



不慣れな王都において安全に隠れられる場所なんてどこにもありません。



それに天城さんの攻撃による爆発や慌ただしく動き回るアストリア軍によって研究所の周辺地域一帯は騒然となってしまっています。



近隣の住民達からは恐怖と動揺の様子さえ感じられるほどなのです。



突然始まった戦闘に怯える住民達を横切りながら愛里ちゃんと共に逃走しているところなのですが、

まずはどこに向かうべきでしょうか?



その疑問だけが頭の中を渦巻いていました。



「隠れる場所と言っても、特に思い当たる場所なんてありませんし…。」



そもそも安全な場所なんてあるのでしょうか?



時間をかけて捜す余裕がある状態なら、

王都に潜伏中の魔術師を探し出して合流したいところなのですが。



潜入中の仲間がどこにいるのかは分かりませんし、

そもそも生きて行動できる状態なのかさえも判明していません。



せめて天城さんのように魔力の波動を広域で調査できれば悩むことはないのですが、

僕も愛里ちゃんも目で見える範囲内でしか感知することができませんでした。



そのことが少し悔やまれますね。



ちゃんと普段から努力していればここぞという時に役立つのですが、

今ここにないものを嘆いてもどうしようもありません。



それに多くの魔術師が僕達と同じような実力なのです。



目に見えない範囲や広域の探査を行える魔術師はごく少数しかいませんので、

僕達のような魔術医師の中には一人もいないのではないでしょうか?



偵察を主体とする密偵や共和国軍の方々でさえも、

町の全域を探査できるかたはまずいないでしょう。



半径100メートルを感知出来るだけでも優秀と言われるほど難しい技術なのです。



1キロ先や10キロ先となれば、

それこそ天才の領域です。



町の全域となれば、

もはや天城さんだけではないでしょうか?



それほどの広域を探査できる魔術師がいるという話は今まで一度も聞いたことがありせん。



「今はひたすら逃げ続けるしかないのでしょうか?」



どこに隠れても良いというのは、

逆に言えばどこまででも逃げ続けろという意味でもあります。



「兵器が発動する可能性を考慮すれば王都の外まで撤退するべきなのですが…。」



王都からの脱出となると、

それこそ命懸けの作戦になると思います。



少なくとも僕達だけでは不可能でしょう。



せめて魔力が万全な状態であれば強行突破も考えるのですが、

現時点では地面に穴を掘って地下から脱出するという作戦すら実現できそうにありません。



「王都からの脱出は難しいので、できる限り王都の端まで逃げるべきでしょうか?」



兵器の攻撃から逃げるためには、

できる限り距離をとるべきです。



「どう思いますか?」



一応、愛里ちゃんの意見を聞いてみると。



「廃屋に隠れるのではダメでしょうか?」



…あぁ!



その選択肢もありますね。



愛里ちゃんの提案を聞いてから、

その事実を思い出しました。



隠れ家として使用していた廃屋が王都の南側にあることにです。



研究所は王都の西側にあるのですが、

一言で西といってもかなり北寄りなので北西と言ったほうが正しいかもしれません。



対する廃屋は王都の南側ですが、

どちらかと言えば東寄りなので研究所とは真逆になります。



ですので、距離的に考えてやや安全な位置にあるような気がします。



「そうですね。運がよければ兵器の影響から外れることができるかもしれません。一旦、廃屋に向かうことにしましょう。」



愛里ちゃんの提案を受け入れて隠れ家へと急ぐことにしました。



…と言っても。



王都の端から端まで移動するようなものです。



すぐに到着というわけにはいきません。



それでも十数分の時間を必死に走り続けたことで、

ようやく王都の南側付近へと差し掛かりました。




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