脱出開始
《サイド:琴平愛里》
「もうすぐ外です!」
「は、はい…っ。」
現在、私達は追撃して来る警備兵さん達から逃走を続けている最中です。
「はあっ…はあっ…。」
必死に通路を駆ける徹さんですが、
私も息を切らせながら懸命に走り続けています。
…こ、怖いですぅ〜〜。
背後から殺気立つ十数名の警備兵さん達が迫っているからです。
「逃がすなーっ!!」
「追えーっ!!!」
大きな声で叫びながら迫り来る警備兵さん達。
徐々に迫る恐怖に怯えながら、
私達は研究所の出口を目指していました。
「くぅっ…!!あと少しで出口なのに…っ!」
焦る徹さんが更に速度を上げて兵士さん達から逃げようとしたその瞬間に。
「あ…っ!?」
足をもつれさせてしまった私はその場に倒れ込んでしまいました。
「愛里ちゃんっ!!」
慌てて助け起こそうとしてくれる徹さんですが、
足を止めてしまったことで兵士さん達が近付いて来ています。
「死ねぇぇっ!!!」
武器を構えて一斉に迫り来る兵士さん達の気迫を感じた瞬間に私も徹さんも死を覚悟しました。
「く…っ!!!」
私を庇って兵士さんの前に立ちはだかる徹さんでしたが、
振り下ろされる刃が徹さんに触れる直前に。
魔術名が通路に響き渡りました。
「シャイニング・アロー!!!」
数えきれないほどの数の光の矢が徹さんの側を通り抜けて、
私達に接近していた兵士達に降り注いだのです。
「うあああああっ!?」
不意打ちを受けて混乱する兵士さん達。
運よく魔術の影響から逃れた人もいたようですが、
今は攻撃を止めて私達の背後へと視線を向けています。
「くそ…っ!?まだいるのかっ!!」
私達の背後にいるもう一人の魔術師を見た兵士さん達は恐怖を感じている様子ですね。
恐怖の理由。
それは新たな魔術の発動です。
「バースト・フレア!!」
続けざまに放たれる魔術が徹さんの横を通り過ぎて、
兵士さん達の中心で爆発して燃え盛りました。
「ぐあああああああっ!!!!」
容赦なく燃え広がる猛火の一撃を受けたことで、
生き残っていた兵士さん達も次々と倒れていきます。
「く…そっ…。バケモノ…どもめ…!」
憎しみを込めた瞳で私達を睨みつける兵士さんも呪いの言葉を最期に力尽きました。
これで周囲の警備兵さん達は全滅したようです。
「はぅぅぅ…。」
これが攻撃魔術の威力なんですね。
私には真似できない魔術です。
「………。」
目の前で起きた凄惨な光景を見つめる徹さんでしたが、
背後にいる私は小さな声で呟きました。
「…天城さん。」
「え…っ?」
私の言葉を聞いた徹さんも後方へと振り返りました。
徹さんと私の背後。
出口へと続く通路の先に天城さんがいてくれたんです。
「天城さん!ご無事だったのですね!!」
笑顔で駆け寄る徹さんに続いて、
私も天城さんと合流しました。
「おかげで助かりました。ありがとうございます!」
笑顔で再会した私に向けて、
天城さんは静かに右手をかざしました。
その直後に柔らかな光が私を包み込んで、
転倒した時に出来た擦り傷を治してくれたんです。
「あ、ありがとうございます!」
助けていただいたことに感謝して微笑む私を見て、
徹さんも笑顔で一礼していました。
「ありがとうございます。ご心配をおかけしてすみません。」
丁寧に謝罪する徹さんですが、
天城さんは微笑んでくれていました。
「問題ない。無事ならそれで良い。」
気にするなと言ってから、
天城さんは徹さんと私の魔力に意識を向けました。
「…魔力が底を尽きかけているな。」
「すみません。これほどの戦闘は不慣れでして、上手く魔力の配分が出来ずに逃げ回るのが精一杯でした。」
再び謝罪する徹さんですが、
私は別のことが気になってしまいました。
「あ、あの…。純さんは一緒じゃないんですか?」
私の感じた『疑問』
それは天城さんと一緒に行動しているはずの純さんが今ここにはいないということです。
そのせいで微かな不安を感じてしまいました。
「純さんは…?」
何かあったのではないかと心配してしまったのですが、
天城さんは冷静に答えてくれました。
「三倉は朱鷺田の援護に向かった。今は地下にいるだろう。」
「あ、そうなんですか…。」
そうですよね。
純さんがいなくなったわけじゃないですよね?
説明を聞いて納得する私に、
天城さんは説明を続けてくれました。
「まずは俺達だけで脱出する。兵器の発動まであとどの程度の猶予があるのかは分からないが、急いだほうが良いだろうからな。」
「あ…はい!分かりました。」
私の隣で徹さんも頷いています。
「そうですね。急ぎましょう!」
徹さんの言葉をきっかけとして。
私達は研究所を脱出する為に、
出口に向かって駆け出すことになりました。




