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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
867/1190

操作方法

《サイド:朱鷺田秀明》



…ははっ。



「運が良い…と言うべきかもしれませんね。」



視線の先には全力で稼動する蒸気機関がありました。


おそらく点検の為に起動していたからでしょう。



蒸気機関は私の突入によって点検が中断してしまい、

そのままの状態で残されているようでした。



「これは好都合ですね。」



余計な手間が省けたことを喜んでいると、

とある事実にも気付けました。



それは仲間達の努力の成果です。



「安全装置が2箇所とも解除されていますね。」



蒸気機関の左右にある装置が稼動していることに気付いたのです。



『稼動中』と点灯する文字が二つあります。



それが何を意味するのかは考えるまでもないでしょう。



「…皆さん。ご協力ありがとうございます。」



それぞれの役割が無事に果たされたことを確認してから、

栗原君から預かった整備の資料に視線を向けました。



現状、安全装置は解除されているのです。



そして蒸気機関も起動しています。



あとは兵器に動力を繋げるだけのはずです。



「試運転の方法。これを考慮すると…。」



資料を眺めながら、

蒸気機関の操作を始めました。



「こちらを解除して、こちらに繋ぎ…」



始めての操作の為に要領が分からずに苦戦してしまいますが、

それでも確実に操作は進んでいきます。



「あとはここを起動すれば…?」



最後の操作を行ったその瞬間。



『…ゴォン…』と、体に響く重低音が蒸気機関から発せられて、

『ゴッゴッゴッゴッ!!!』と、勢いよく動き出しました。



「成功ですね!」



これでまずは一安心です。



蒸気機関の作動を確認したことで、

急いで機械室を飛び出します。



「あとは兵器を…!」



急いで実験室に向かう必要があるのですが、

通路を駆ける私の視線は真逆の方向に向いていました。



そこには魔術を連発する三倉の姿があります。



階段の周囲に転がる兵士達の遺体は数百に及ぶでしょうか?



争いは刻一刻と激化して、

三倉さんの表情には疲れが出始めているように思えます。



「まずいですね…。」



このままでは三倉さんが危険かもしれませんが、

助けに行く時間的余裕はありません。



…いえ、この表現は違いますね。



こういう言い方は失礼かもしれませんが、

どうせ結果的には死を迎えるのです。



助けに行くのは時間の無駄でしょう。



「すみません、三倉さん。今は兵器の起動を優先します!!」



今は実験室へと急ぐことにしました。



安全装置を解除して蒸気機関が作動した現状。


最後にやるべきことは兵器を起動するだけです。



三倉さんに背中を向けてから走りだして、

今度は実験室の内部へと突入しました。



木之本の死体を乗り越えて実験室の内部に潜入します。



「これが…兵器ですか。」



呟きながら歩みを進める私の目の前には問題の兵器が存在しています。



本当に実在しているのです。



確かに見た目は『羅針盤』と言うべき形かもしれませんね。



ですがその形には疑問を感じてしまいます。



何度見ても。


どう考えても。


町を破壊出来るほどの破壊力を秘めた兵器とは思えないからです。



地面に直接はめ込むような形で埋められている兵器。



その形は歪みのない円形です。



大きさは直径で1メートル程度でしょうか。


実際に計測してみるともう少し大きいのかもしれませんが、

どちらにしても両手を伸ばせば覆い隠せてしまう程度の大きさです。



円盤状の土台の外周部分には東西南北が印されていて、

中心から外側へと伸びる指針が方角を指し示しているようですね。



指針の片側だけが赤く染められて反対側は色が塗られていないので、

巨大な方位磁石とも言えるでしょうか?



そんな不可解な兵器を眺めながら、

私は僅かに首を傾げました。



「こんなものが本当に兵器なのですか?」



心の底から疑問を感じてしまいます。


ですが木之本は命懸けでこの兵器を解体しようとしていました。



あの姿を思い浮かべれば、

これが偽物や別物とは思えません。



実際に兵器にどれほどの効果があって、

どうやって使用するのかは不明ですが。


兵器はうっすらと光を放っていて、

低く微かな稼動音を響かせています。



「詳細は不明ですが、使用出来る状況にあると信じるしかないですね。」



ひとまず兵器に手を伸ばしてみます。



円形の土台の中心の指針は私の思うように自由な角度に調節することが出来ました。



「…ふむ。単純に考えればこの指針の方角に向けて攻撃出来るということだと思うのですが…。」



どうなのでしょうか?



くるくると針を回しながら兵器を観察してみます。



「他にも何かあるはずなのですが…?」



操作方法がよくわかりませんね。


とりあえずは針以外の操作方法を探すべきでしょうか。



「複数の操作が必要だとは思うのですが…。」



針だけで兵器が動くわけではないと思います。



…なので色々と触ってみたのですが。



特に操作出来る部分はないようで、

兵器の周辺にも気になるような物はありませんでした。



「…となると、残る可能性は羅針盤本体ですね。」



次に羅針盤の調査を始めます。



円形に作られた羅針盤は中心から外側に向けて5層に別れているようです。



最も外周部分には方位が印されているのですが、

その内側にも多くの文字が印されていました。



東西南北の方位を示す外周部を5層目と数えると。


その内側の4層目には00~99の数字が並び、

更にその内側の3層目も同様に00~99の数字が並んでいます。



中心に近い2層目には『弱⇒小⇒中⇒大⇒強⇒最』と印されていますね。



中央部分の1層目は半分に別れて『発動』と『停止』の文字が印されていました。



「各層を操作するということでしょうか?」



他に考えられることがないので指針から手を離して羅針盤本体へと手を伸ばしてみます。



「外周は…」



方位の印された5層目はどれだけ力を込めても、何の反応も示しません。



「では、次は…」



4層目に手を伸ばします。



00~99の数字の並ぶ4層目は軽く触れただけで『コロコロッ』と音を立てて廻りだしました。



「なるほど。各層を動かして針の示す方位と重なるように調節するということでしょうか?」



指針と重なる部分が目標の設定なのだと思います。



操作方法を予想してみると、

予想通り3層目も動かすことが出来ました。



おそらく3層目と4層目の組み合わせで、

0000~9999の数字を調整することが出来るのでしょう。



「おそらくこれが距離を示すのでしょう。単純に考えれば指定した数字のキロメートル。いえ、さすがにそれでは範囲が広すぎますか。そうなるとここを基点として半径99,99キロ圏内において自由に攻撃出来ると考えるべきかもしれませんね。」



あるいは999,9キロかもしれませんが、

何が正解かは職員に聞いてみなければわかりません。



なおかつ内側と外側のどちらがキロで、

どちらがメートルなのかもわからないのです。



ですが。



今回に限って言えば、

それらはどちらでも構いません。



兵器の使用方法に関して予測を立てた私は、

適当に示した方角の針に対して00と00を組み合わせました。



「0距離への攻撃。それはつまり、この研究所そのものです。」



距離の設定など必要ありません。



この研究所そのものを目標とすれば、

必然的に王都を攻撃できるからです。



ひとまず目標を設定した私は、

次に2層目に視線を向けました。



『弱』から『最』までを示す2層目。



その意味はすぐに理解できます。



「破壊力の設定。それしか考えられませんね。」



ぐるぐると廻る2層目を回して『大』の文字で指針に合わせました。



「実際にどの程度の威力があるのか想像も出来ませんが、あまり強力過ぎても困りますからね。」



最大級の攻撃の場合。


天城さん達まで巻き込みかねません。



それはさすがに本末転倒ですし、

私にとって望まざる展開です。



「この兵器が本当に町を壊滅できるほどの破壊力があるのだとすれば、少し威力を抑えるべきでしょう。」



天城さん達の脱出を願うからには、

王都を消滅させる程の破壊活動を行うわけにはいきません。



「王都の破壊は必要ですが、それ以前に彼等の撤退も私にとっては重要な選択肢ですからね。」



破壊力の設定も終えた私は、

ようやく全ての操作を終えました。



「あとは1層目だけですね」



『発動』と『停止』の2種類の文字だけが印された1層目。



ここはもう悩む必要すらありません。



最後の層に手を伸ばします。



…ですが。



5層目と同様に1層目は動く気配がありませんでした。



「ふむ」



疑問を感じながら『発動』の文字に手を伸ばしてみると、

文字の部分だけが僅かに揺れたような気がします。



「なるほど。ここだけは『廻す』のではなく、『押し込む』ということですか。」



触ってから気づきましたがそれが当然でした。



針と合わせるだけで発動するなら針を廻している段階で発動していたはずです。


ですが実際にはそうはなりませんでした。



「全ての調節を終えて発動を選択する。それがこの兵器の使用方法というわけですね。」



全てを理解したことで、

迷う事なく発動の文字を選択しました。



『カチッ…』と小さな音がなった瞬間に兵器が振動を始めます。



「予想通りですね。」



動き出した兵器を眺めながら、

ゆっくりと離れます。



発動までの時間は不明ですが、

その僅かな時間を待つ間に最期まで戦うためです。



「あとは兵器の発動まで敵の侵入を阻止するだけですね。」



ようやく全ての準備が整ったことで、

三倉さんの援護に向かうことにしました。



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