私の戦場
《サイド:三倉純》
よしよし!
朱鷺田さんはちゃんと機械室に向かったようね。
少しの間だけ後ろ姿を眺めていたけれど。
のんびりとよそ見をしてる暇なんてないわ。
…ふう。
朱鷺田さんが機械室に入ったことを確認してから小さく息を吐いてみる。
「…やっと行ってくれたわね。」
無事に説得が成功したことで、
一つ目の目的は達成したわ。
あとは兵器が起動して王都が吹き飛べば最後の作戦が成功するんだけど。
兵器の操作から起動までにどの程度の時間が必要なのかが不明だから、
それまでの時間稼ぎもしないといけないのよ。
でもね〜?
そこまで持ちこたえられるかどうかが問題だったりするわ。
一応、魔力はね。
まだまだ余裕があるのよ。
だけどね?
それでもね?
一人で出来ることって限られているの。
1階の警備兵は天城君が徹底的に殲滅してくれていたし。
地下の警備兵は朱鷺田さんが倒してくれていたから。
ここに来るまでの戦闘はそれほど苦労しなかったわ。
二人のおかげで今はまだ万全に近い状態だと思ってる。
…だけどね?
それはあくまでも今の話でしかないわ。
いつ終わるかわからない状況で、
延々と戦い続けられるわけじゃないの。
何度も魔術を使えば、
いずれ必ず魔力が底を尽くのよ。
そうなる前に兵器を発動できれば良いんだけど。
あまり早すぎても愛里ちゃん達の撤退が間に合わなくなっちゃうのよね〜?
その辺りに関しても不安を感じるけれど。
整備の為に蒸気機関が起動していた状態なら、
ひとまず操作そのものは難しくないはず。
最終的な問題は愛里ちゃん達の撤退が間に合うかどうかよね?
もちろん兵器が発動するまで、
ここで敵の接近を阻むのも重要だけど。
まずは兵器が起動できるかどうか?なのよ。
そんなことを考えながら頭上で響き渡る数多くの足音に耳を傾けてみる。
今度は数が多いわね。
今までで最多じゃない?
「地下へ突撃するぞ!!!」
指揮をとる兵士の声が聞こえたことで、
魔術の詠唱を始めてみる。
…と、同時に小さな声で呟く。
「悪いけど…ここは通さないわ。あなた達に邪魔はさせない!!」
魔術の詠唱を終えて階段へと狙いを定める。
ドタドタと近づく足音。
兵士達との距離は近いわね。
だけどあともう少し。
もう少しだけ引き付けたほうがいいわ。
階段を下りて来る警備兵達。
先頭集団が弓矢を構えて私に狙いをさだめようとしてる。
その様子を確認してから魔術を放つことにしたのよ。
「サンダー・スパーク!!!!」
雷系の上級範囲攻撃魔術。
強力な雷撃が兵士達の中心に生まれて、
全てを飲み込むように炸裂したわ。
「ぐああああああっ!!!」
「うわあああああ!!!」
「っづぁぁぁ!!!!!」
次々と響き渡る兵士達の悲鳴。
私の先制攻撃によって、
先頭集団はあっさりと全滅したみたい。
「まだまだいけるわよ!!魔力にだけは自信があるんだからっ!」
次に迫る集団へと視線を向けてみる。
すでに怯えている兵士もいるみたいだけど。
突撃を強行する以上は手加減なんてしないわよ!
階段を下りてこようとする兵士達に向けて次々と魔術を放っていく。
雷を放ち。
爆発を起こし。
炎を生み出す。
休む間もなく次々と魔術を放ち続ける。
その必死の防衛によって階段近辺には数多くの死体が積み重なっていったわ。
だけどね。
それでもまだ終わらないのよ。
「突撃しろーーー!!!!!」
次から次へと現れる兵士達。
時間をかけるほど敵の戦力は増えて、
私の魔力は減少していくの。
「…それでもね。負けられないのよ!」
自分に言い聞かせるように呟いてみる。
「兵器が発動するまで、ここは誰も通さないわ!!」
愛里ちゃんが逃げ切るまで絶対に負けられないのよ!
「コールド・アロー!!!!」
手加減なしで放つ氷の矢が階段の上へと飛んで迫り来る兵士達の体を貫いていく。
「ぐああああっ!!!」
繰り返される悲鳴。
階段を下りることさえ出来ずに倒れる兵士達。
その様子を眺めながら連続して詠唱を繰り返していく。
「絶対に守り抜いてみせる!!」
限られた魔力を考慮しながら、
必死に地下を守り続けたわ。
兵器の発動の為に。
最前線で動く朱鷺田さんの為に。
全てを託した天城君の為に。
共に戦ってきた栗原君の為に。
…そして…
私を慕ってくれる愛里ちゃんの為に!
「ここが私の戦場なのよ!!」




