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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
862/1200

本当の目的

《サイド:三倉純》



…ああ〜〜〜〜〜〜~!!!



もうっ!


邪魔なのよっ!!!



「サンダー・スパーク!!」



拡散する雷撃が警備兵達に襲い掛かる。



「が…っぐああああっ!!!!」



通路に響き渡る悲鳴。


私が放った雷撃によって部屋の前を警備していた兵士達は反撃すら出来ずに力尽きたようね。



「よしっ!!」



これであとは安全装置の解除だけよ。



意気揚々と部屋の扉に歩みを進めてみる。



そして室内に兵が潜んでいる可能性を考慮しながらゆっくりと扉を開いたわ。



『キィィ…。』と、小さな音を立てながらもそっと開く扉。



…でもね?



私の警戒も虚しく、

室内には誰もいなかったわ。



「さっきの兵士達で全部だったのかしら?」



全ての部屋を調べたわけじゃないから実際にどうなのかはわからないけれど。


研究所内に待機していた警備兵の数はそれほど多くなかったから、

もしかしたら本当に全滅したのかもしれないわね。



…って、言っても。



後方からは絶え間なく押し寄せて来てるでしょうけどね。



それでも天城君が足止めしてくれてるから私のところまでは来てないわ。



とりあえずは誰もいないみたいだし。


さっさと安全装置を解除するべきかしら?



薄暗い室内に魔力の明かりを灯して歩みを進めてみる。



肝心の安全装置は…あっさりって言えるくらいすぐに見つかったわ。



「きっとこれのことよね?」



目の前の機器を見つめてみる。



ちょっと馬鹿げてるって思っちゃったけど。



『動力源の連結』と書かれた札のすぐ下には操作方法が記されていたわ。



「わざわざ、ご丁寧なことよね~。」



どうしてこうも簡単に情報が手に入るのか疑問なんだけど。


この研究所で兵器が開発されたのだとすれば、

誤作動が起きないように安全面を考慮するのはある意味当然なのかもしれないわね。



間違って操作して兵器が発動…なんてことになったら笑えないだろうし。


緊急時には誰でも可動が可能とか、

あるいは停止が可能という状況を用意するのはごくごく自然な判断なのかもしれないわ。



そんなふうに思いながら説明通りに機器を操作してみる。



これが罠だったらもののみごとに引っかかっちゃうわけだけど。


幾つかの手順を終えると室内に明かりが点り始めたわ。



…う~ん。



どうやら罠とかじゃなくて、

本当に操作方法のようね。



前半は真実で後半は罠っていう可能性が否定できないけれど。



それでも今はここに書かれてる操作方法を信じるしかないし。


疑ってる暇もないわ。



「あとはこれを操作すれば…?」



指示通りの最後の手順を終えてみたことで静かだった機器が急速に動き始めたのよ。



…だけど。



何故かすぐに動きを止めたみたいなのよね~?



操作を間違えたのかしら?



よくわからないけれど。


可動と同時に室内の明かりが消えたわ。



「失敗したの?」



不思議に思うけれど。


どうもそういうことじゃないみたい。



先ほどまで光っていなかったはずの照明が青く輝いていたからよ。



照明の上には『起動中に点灯』と記されてる。



「こうなるとさすがに親切なのかどうかが疑問よね?」



敵も味方も関係なく簡単に操作出来てしまう設備ってどうなの?



ずさんな管理に疑問を感じるんだけど。


ひとまず目的は達成したから部屋の外に出ることにしたわ。



「まあ、とりあえずはまた停止されないように破壊しておいたほうが良いわよね?」



撤退後に安全装置が作動して兵器の発動失敗…なんてことになったら笑えないからよ。



もしもそうなってしまったら申し訳なさで後悔の嵐になるでしょうから、

室内に向けて魔術を放つことにしたわ。



「ダンシング・フレア!!!」



本来なら雷撃の方が効率がいいのかもしれないけど。


下手にやりすぎて安全装置そのものが壊れちゃったらそれはそれで困るから、

ひとまず操作部分だけを溶解させることにしたのよ。



私の放つ炎は狭い室内で激しく燃え盛る。



その結果として。


『バキバキッ…』と機材が壊れる音が鳴り響いて、

室内には焼け焦げる臭いが充満し始めたわ。



「まあ、こんな感じでいいのかな?」



あまり破壊しすぎて兵器の起動そのものが出来なくなったら意味がないしね。



おおざっぱに破壊してから攻撃を止めたの。



…でもね~。



ここからが問題なのよね?



「急いで戻らないと…」



天城君を一人で残してきたことを心配しながら来た道を逆走し始める。



それほど離れてはいないと思うけど。


ゆっくりしてる暇はないから撤退を急いだのよ。



そして視線の先に天城君がいることに気付いた私は自然と笑顔を浮かべていたわ。



「良かった。無事だったのね。」



素直に喜んでみたものの。


その笑顔はすぐに引きってしまったわ。



わりと本気でグロい状況を見ちゃったからよ。



「…うっわぁ…。」



通路の周囲で倒れる数多くの警備兵達。



これはもうどう考えても生存者0の惨状よね?



それも無惨な遺体が各所にあって。


血まみれというか、

肉まみれというか、

とにかくこの周囲一帯は惨劇としか表現出来ない状況だったのよ。



「うっわ…。見てるだけで吐きそう…。」



飛び散る内蔵とか、

漂う悪臭とか、

転がってる目玉とか、

見るに耐えない状況なのよ。



ここまでする必要はないんじゃない?



なんて思いはするけど。


結果は同じなのよね?



死という結果は同じだから、

私も人のことは言えないわ。



「やることが激しいわね~?」



ちょっぴり吐き気を感じながら視線を逸らしてみたけれど。


天城君は私の言葉なんて気にする素振りさえ見せずに問い掛けてきたわ。



「装置の解除は終わったのか?」


「え…っ?ぁ…あ~、うん。終わったわよ。ある程度破壊もしておいたから、もう止められないと思うわ。」


「そうか…。」



私の報告を聞いた天城君は小さな声で呟いてた。



「あとは2階の安全装置の解除と地下での兵器の操作だな。」


「ええ、そうね。でも、この流れなら上手くいきそうな気がするわね。」


「上手く…か。どうだろうな。」



私の言葉を否定するかのように呟く天城君。


その言動が気になって問い掛けてみる。



「何か問題でもあるの?」



この惨状は大問題だと思うけど。


今はそういう話じゃないわよね?



…って言うか。



さっきからずっと引っかかってることがあるのよね~?



それが何なのか自分でもよくわからないんだけど。


何かがおかしい気がするのよ。



「ねえ、何か隠してない?」


「………。」



天城君は何も答えないわ。



だけど、答えないという行動そのものが私の疑問を肯定しているように思えるのよ。



「ねえ?」



もう一度問いかけようとしてみたけれど。


その前に私はあることに気づいたのよ。



あまり気にしていなかったけれど。


ずっと気になっていたことを思い出したの。



だからね。


もしかして?って思ったわ。



これはもうあれよね。


確かめる必要があるわよね?



どうして朱鷺田さんは一人で地下に向かったの?



その理由が理解できないの。



最初は天城君が一人で行こうとしていたわ。



だけどそれを朱鷺田さんが止めてた。



自分が適任だと言って、

たった一人で最も危険な場所へと向かって行ったのよ。



それがどうしても不自然に思えるのよね。



「何か隠してるわね?」



疑問を感じる私の視線が天城君に冷たく突き刺さる。


だけどそれでも天城君は態度を変えなかったわ。



…いえ。



動揺を見せなかったというべきかもしれないわね。



「ねえ…?一体、何を隠しているの?」


「別に隠し事をしていたわけではない。ただ何も知らない方が良いと判断しただけだ。」


「そういうのを隠し事って言うのよ!言い訳はいいから、ちゃんと教えて!!」



こうなる前に考えなければいけなかった疑問。



その答えを問い詰める私に、

天城君はようやく事実と現実を教えてくれたのよ。



「兵器の起動自体は難しくないだろう。よほどの問題でも起きない限り、脱出も可能なはずだ。だが…それだけでは意味がない。」


「…意味がない?」



どういうこと?



「兵器が起動できて、脱出もできればそれで作戦成功じゃないの?」



私はずっとそう思ってた。



だけど。


真実は私が思うほど簡単な話じゃなかったみたい。



「朱鷺田が堂々と暴れ始めたことには意味がある。朱鷺田ではなく俺が向かっていたとしても同じようにしていたからな。」


「どうしてよ?もっと穏便に進めれば、脱出だってしやすいはずよね?」


「脱出するつもりがあればそうだな。だが、俺も朱鷺田も最初から脱出するつもりはなかったということだ。」


「え…っ!?」



脱出するつもりがない?


それって、どういうことなの?



全く予想してなかった言葉だったわ。



だって私達は生きて撤退するために話し合っていたはずよね?



それなのに脱出するつもりがないなんて、

言ってることが矛盾してるとしか思えないわ。



だから天城君の言葉の意味が私には理解出来なかったのよ。



「どうして…っ!?」


「全ては三倉や徹や愛里を守る為だ。地下に残って自らが囮となることで、敵の注意を引き付けて『撤退しやすい状況』を作りあげる。そのために、あえて派手に行動しているということだ。」



…は?



それってつまり、

私達のためっていうことよね?



「地下という狭い範囲でなら一人でも十分に時間を稼げるはずだ。それになにより兵器の起動後に『停止させない為』に、発動までの時間を敵の侵入から防ぐ必要もある。」


「ちょ…っ!?そんなっ!?」



天城君の説明を聞いたことで、

私はようやく全てを理解したのよ。



全くと言っていいほど考えていなかった話だったわ。



『兵器の発動までの時間稼ぎ』



その為の囮として朱鷺田さんは死を覚悟のうえで地下へと向かっていたなんて。



全く気付いていなかったのよ。



「単純に兵器を破壊するだけなら難しい話ではない。5人で協力すれば撤退も可能だろう。」



わざわざバラバラに行動しなくても、

警備兵を暗殺して5人で地下に突撃すれば兵器は簡単に破壊できたってことよね?



だけどそうせずに兵器を起動するっていう方法を選んだのは…?



「本当は兵器の破壊じゃなくて、王都の破壊を優先していたのね?」


「ああ、そうだ。兵器を破壊するだけでは戦争は終わらない。アストリアに致命的な一撃を入れる為には兵器の発動は十分な価値がある。」



全員の生存よりも、

一人の犠牲と引き換えにして王都を破壊すること。


それが天城君と朱鷺田さんの出した答えだったっていうことよ。



「王都を攻撃することの意味を朱鷺田は十分に理解している。だから朱鷺田は一人で地下に向かった。俺達を生きて脱出させる為にな。」



………。



天城君の説明を聞いた私は混乱しそうになる頭を整理して必死に心を落ち着かせようとしたわ。



だけどね?



理解は出来ても、納得はできなかったのよ。



「他に方法はなかったの!?」



問い掛けてみるけれど。


天城君は首を左右に振って答えてしまう。



「残念だが他に方法はない。誰かが死ぬことでしかこの作戦は成功しないからな。」


「く…っ!」



冷静に答える天城君の言葉を聞いて唇を噛み締めてしまったわ。


こんなに悔しい気持ちを感じるなんて思っていなかったからよ。



「そんな!そんなことで生き残っても嬉しくなんてないわっ!!」



何も知らずに撤退していたら、

きっと後悔してたと思う。



何も気づかずに朱鷺田さんを見殺しにした自分をきっと憎んでしまうと思うのよ。



「仲間を見殺しにするために、私はここまできたわけじゃないの!!」



何も教えてくれなかった二人を怨もうとは思わない。



…だって。



そもそも何も気づかなかった私自身が悪いんだから、

天城君達に文句を言う権利なんて私にはないと思うのよ。



だけど、ね。



真実を知ってしまった以上は、

知らないふりなんて出来ないわ。



「…ごめんね、天城君。それと…ありがとう。」



ちゃんと話してくれた天城君に感謝の気持ちは伝えておこうと思ったの。



「本当のことを教えてくれたから、私は私がやるべきことがわかった気がするわ。だから…ありがとう。」



もう迷わない。


答えを知ったから。


目的を持てたから。



私は通路の先に視線を向けることにしたの。



そして自分のやるべきことを決断したのよ。



「ねえ…?一つだけ、お願いしてもいいかしら?」


「ああ、俺に出来ることならな。」



真剣な表情で言葉を紡ぐ私に、

天城君は静かに頷いてくれたわ。



「うん。それじゃあ、お願いするわね。私のお願いはただ一つ。私の代わりに愛里ちゃんを守ってあげてほしいの。私には出来ないけれど、あなたなら出来るでしょ?」


「………。」



私の願いを聞いたことで、

天城君は私の気持ちを察してくれたようね。



「…行くつもりなのか?」


「ええ、そうよ。一人で死なせるなんて可哀相でしょ?だから私が行ってあげる。」



まあ、言うことを聞かない可愛げのない女だけどね。



…それでもね。



「二人でなら、淋しくはないでしょ?」



誰かが犠牲にならなければいけないのなら、

その場所には私もいたいと思うのよ。



だから私はもう誰の指図も受けないわ。



「愛里ちゃんのこと…お願いね。」



たった一つの願いだけを残してから、

私も地下に向かって走り出したの。



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