とっさに出た嘘
「…ぅぅ…。」
小さくうめき声をあげてみても事態は解決しません。
「仕方がないですね。とにかく通り抜けましょう。」
自分に言い聞かせて警備兵へと歩みを進めてみます。
ですがここでも予想通り先程の兵士達に呼び止められてしまいました。
「おや?もう帰るのですか?」
階段を下りる前に応援してくれた警備兵が僕に声を掛けたあとで。
「…随分と早いな。」
別の兵士が呟く言葉が聞こえてしまいました。
そのせいでさらなる焦りを感じた僕は必死に考えを巡らせることになりました。
「あ、あの…。」
どう答えるべきか悩んだものの。
視線の先にある物を見つけたことで、
自信を持って兵士に答えてみることにしました。
「えっと…。帰るわけではなくて、実験用具保管室から器材をとってくるように言われまして、上の階に器材を取りに行く途中なんです。」
視線の先にあったのは大きく壁に張り出された『研究所の案内図』です。
天城さんが回収したものと同様のものですが、
おそらく警備兵達が道に迷うことがないように用意されたものだと思います。
ですが今回はその案内図にかかれている文字が僕を窮地から救ってくれました。
「なるほど、それは大変ですね。お忙しいでしょうから、どうぞお通り下さい。」
すんなりと道を開けてくれる警備兵の間を抜けた僕は、
そのまま通路を進んで兵士達の視界から逃れることができました。
騒ぎになることもなく。
疑われることもなく。
警備を無事に突破出来たのです。
「やれば出来るものですね。」
ほっと安堵の息を吐いてみます。
そして更衣室に向かって歩みを進めるのですが。
2階へ続く階段は別の場所にあるので、
兵士達に疑われる心配もないまま最大の難関を突破することに成功しました。




