もののついで
《サイド:天城総魔》
翔子と沙織が去ったあと。
残されたのは北条と俺の二人だけになった。
だからというわけではないと思うが、
北条が俺に振り返って話しかけてきた。
「それで、どうするんだ?」
北条とのやり取りは単純でわかりやすい。
翔子との試合までまだ3時間もあるからな。
その時間をどう過ごすのかという意味だろう。
「そうだな。さっきの試合で少し思う事があったからな。せっかくの時間だ。色々と考えてみようと思う。」
「ははっ、やっぱりまだ何か企んでやがったか」
素直に答えたことが気に入ったのだろうか?
今まで以上に笑顔を浮かべて笑っていた。
どうやら気付いているようだ。
密かに第4の力を模索している事に気付かれている。
「さすがにすぐ傍にいられると隠しようがないな」
「ははっ。まあ、それは仕方ねえだろ。でもまあ、それが何かまでは俺にもわからねえからな。深く詮索するのはやめておくさ」
残り時間は『僅か』3時間だが『まだ』3時間あるとも言える。
それまでにどんな力を手にするのか?
そして翔子とどんな戦いを見せるのか?
北条なりに興味を抱いているようだ。
「もののついでだからな。翔子との試合も見届けさせてもらうぜ」
「好きにすればいい」
「ははっ!!翔子もそうだが、お前もそうとう変わってるな」
「さあ?どうだろうな」
「はっはっはっは!ホントにおもしれえやつだ。」
すでに北条の中では俺が敵であるという認識はないのだろう。
味方かと問われればそれも肯定出来ないだろうが、
敵にもならないと思っているようだ。
だからだろう。
北条は純粋にこれからの出来事に興味を持っているように思える。
未だに把握しきれない俺の実力に興味を抱きつつ。
いつか必ず戦う日が来るであろう事を感じながら、
その日が来る事を待ち遠しく感じている様子だった。
「まあ、時間はあるんだ。ゆっくり考えればいい。とりあえず俺は飯でも食って来る」
緊張感のない言葉を残して北条も会場を出て行った。
その後姿を見送ってから時計に視線を向けてみる。
…もうそんな時間だったか。
いつの間にか正午を過ぎていたらしい。
時計の針はまもなく1時になろうとしている。
翔子との試合が3時間後であることを考えれば、
食事を取っておくのも悪くはないだろう。
北条と同様に昼食でもと考えてみたのだが、
その考えはすぐに捨てた。
…1食程度なら抜いても問題はない。
それよりも今は他にやるべき事がある。
現状でも翔子と戦えるのは間違いないだろう。
だが、現状で満足するつもりはない。
常に新しい力を求め続けて『さらなる高み』を目指すつもりでいるからだ。
…もっと突き詰めるべきだ。
考えることは山ほどある。
残された時間は3時間。
翔子を乗り越えて、その上を目指すために。
まずは待合所に向かう。
そして翔子が訪れるまでの間に新たな力に関してじっくり考えることにした。




