更衣室
《サイド:栗原徹》
…はぁぁぁぁぁぁぁ。
緊張のあまり、ため息が止まりません。
それでも朱鷺田さんに案内されるまま、
更衣室の前までたどり着きました。
こんなに簡単に内部を移動できるとは思っていなかったのですが、
やはり朱鷺田さんは凄いですね。
僕には真似出来そうにありません。
「…急いでください。」
小声で僕に呼び掛ける朱鷺田さんは堂々とした態度で室内へと入っていきました。
「は、はい。すみません。」
僕も慌てて更衣室に入ります。
そして室内を見回してから再び息を吐きました。
…まあ、ため息というよりは安堵の吐息といったところでしょうか。
室内には誰もいなかったからです。
誰かいたら面倒だと思っていたのですが、
幸運にも今は誰もいないようでした。
「好都合ですね。」
朱鷺田さんはランプの明かりが灯る室内をゆっくりと捜索しています。
「何を探しているんですか?」
「もちろん研究所の服ですよ。白衣でも何でも良いのですが、この研究所の服さえあれば表の警備を突破することはたやすいですからね。」
ああ、なるほど。
砦で行った変装の研究所仕様ということですね。
朱鷺田さんの説明を聞いて目的を理解した僕も研究所の制服を探し始めました。
…と、言っても。
それは僅かな時間だったと思います。
室内には時計もありますので何度も確認していたのですが、
おそらく2、3分程度だったはずです。
すぐに目的の物を見つけだした僕達は、
迷うことなく着替えを始めました。
朱鷺田さんは今まで来ていた服を着替えて、
研究所の制服に着替えています。
ですが僕は上着のコートを脱ぎ捨ててから、
学園の制服の上から白衣を羽織っただけです。
「これでも十分だと思うんですけど…。」
白衣の前をしっかりと止めると制服は全く見えません。
なので一見しただけなら十分ごまかせる気がします。
「…どうでしょうか?」
「ええ、良いと思いますよ。全く同じ服装よりも違った方が行動しやすいでしょうからね。」
朱鷺田さんは自分の服と僕のコートを棚の奥に隠してくれました。
ひとまずこれで変装は完了ですね。
「さて、あとは残りの3人をどうやって内部に招き入れるか…ですね。」
「何か案はあるのですか?」
「…どうでしょうね。」
問い掛けてみたのですが、
朱鷺田さんは曖昧な笑顔を浮かべていました。
「正直に言えば苦しいところですが…何とかするしかないでしょう。」
朱鷺田さんは部屋の扉に手をかけました。
「ここで待っていて下さい。」
そしてそのまま更衣室を出て行ってしまいました。




