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THE WORLD  作者: SEASONS
4月17日
837/1212

下準備

《サイド:朱鷺田秀明》



時刻は午後10時になりました。



私達は現在、問題の研究所へと接近している最中になります。



目的地は『龍脈研究所』と呼ばれる研究所ですね。



ここで何の研究が行われているのかは不明ですが、

他の主要施設とは明らかに異なる厳重な警備体制がとられています。



「見るからに怪しいですね…。」



…そうですね。



呟く栗原君の気持ちはよくわかります。


私も昼間の偵察で同じ感想を抱いていましたからね。



「あの…これからどうするんですか?」



問い掛ける琴平さんには、

ひとまず笑顔で答えることにしました。



「この手の潜入は得意分野ですので、私に任せてください。」



5年前に引退したとは言え、

以前は本職の密偵だったのです。



潜入や調査はお手の物です。



ひとまず下準備を整えるために、

研究所とは別方向に向かって歩きだしました。



そしてキョロキョロと周囲を見回します。




目的は幾つかあるのですが、

ここで重要なのは地元の方を探し出すという部分ですね。



適当な通行人を見つけたことで、

笑顔を浮かべながら丁寧に話し掛けることにしました。



「すみません。旅の者なのですが、道に迷ってしまいまして…。」



笑顔で話し掛けてみると、

老夫婦も笑顔で対応してくれる様子でした。



「あらあら、大変だねぇ。どこに向かってるんだい?」



話を聞いてくれた老婆に、

少しだけ困ったような表情で問い掛けてみます。



「今晩、泊まれる宿を探しているのですが…。この近くでどこかに心当たりはありませんか?」


「ああ~。宿が知りたいのかい。」



宿の情報を尋ねたことで丁寧に答えてくれました。



「それなら、そっちの道を真っすぐ行って、二つ目の十字路を左に曲がった先に大きな宿があったと思うけどねぇ。」



…ほう、大きな宿ですか。



それはそれは、大変好都合ですね。



宿の説明を受けた私は更に問い掛けることにしました。



「その宿の『名前』は分かりますか?」


「ん~。宿の名前ねぇ~?何だったかねぇ。爺さんや、覚えてるかい?」


「確か、『ふじ』と言う名前だったと思うが…どうかの?」


「ん~、そういえばそんな名前だったかもしれんねぇ。」



…なるほど、なるほど。



宿の名前は藤ですか。


覚えやすい名前でありがたいですね。



「藤ですね。ありがとうございます。助かりました。さっそく行ってみます。」



情報を手に入れた私は丁寧にお礼を言ってから老夫婦が立ち去るのを見送りました。



そして即座に天城さん達の傍へと戻ります。



「…で?宿を聞いてどうするの?」



問い掛けてくる三倉さんに微笑みを返してから、

天城さんに次の一手をお願いすることにしました。



「少しお願いがあるのですが…」


「何だ?」



一同の疑問の視線を浴びながらも、

次の下準備のために天城さんに頼み事をしようと思います。



「昼間の調査で目にしていたのですが、研究所の裏手に焼却炉があったはずです。そこを放火していただけませんか?」


「「「…えっ!?」」」



突然の発言に驚く栗原君と三倉さんと琴平さんでしたが、

天城さんだけは冷静に対応してくれました。



「その程度なら簡単だが、どの程度まで燃やせば良い?」



…そうですね。



あまり不自然ではないほうが良いのですが。



「研究所に被害が出ない程度に、なおかつ派手にやって頂けると有り難いですね。」


「良いだろう。」


「放火後は即座に撤退してください。後程、こちらへ迎えに来ますので。」


「ああ、分かった。」



理由を追求しようとはせずに、

天城さんは研究所の裏側に向かって移動してくれました。



物分りがよくて助かりますね。



これで下準備は完了です。


そして、ここからが本番です。



「どうするつもりですか?」



問い掛ける栗原君に説明するのは簡単なのですが、

何も知らない方が上手くいくこともありますのであえて説明は避けておきます。



今は作戦の遂行が優先ですからね。



「まあ、見ていて下さい。」



研究所に視線を向けて様子を窺います。


栗原君達は何も分からないまま私の説明を待ち続けているのですが、

今はまだ何も言うつもりがありません。



天城さんが動き出すのをただじっと待つだけです。


そうして5分ほど過ぎた頃になって研究所に異変が起きました。



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