3時間後
《サイド:天城総魔》
翔子、沙織、北条。
それぞれが真剣な表情を浮かべ、
周囲の係員達もことの成り行きを見守っている。
「「………。」」
沙織と北条はどう声をかけるべきか悩んでいるようだな。
こちらからはこれ以上言うべき言葉がないのだが、
意を決した翔子はわずかに俺を見上げながら訊ねてきた。
「…今から?」
これは恐れか?
それとも緊張か?
翔子の声は若干震えているように感じられる。
…いや、そのどちらだとしても。
俺が口を出すことではないだろう。
俺は挑戦者であって、
翔子の心配をする立場ではないからな。
戸惑う翔子の顔を見つめながら、
最終的な判断は翔子自身に委ねることにした。
「病み上がりでは全力を出せないだろう。万全の状態ではない翔子と戦っても意味がないからな。準備が整うまで待ち続ける。まずは体調を整えてから出直してくればいい。」
「っ…!!」
判断をゆだねたことで翔子に睨まれてしまった。
体調を考慮して気を使ったことが今回は裏目に出たらしい。
…おそらく俺の発言が気に入らなかったのだろう。
猶予を与えられたことで歯がゆい思いを感じているように見える。
…まあ、それも当然か。
本来なら挑戦を受ける側は翔子だからな。
今の言葉は翔子が俺に向かって言うべき言葉になる。
…番号順で言えば、俺は翔子よりも下だからな。
下位の番号を持つ俺から気を使われる必要はない。
だが、今の翔子は精神的な立場が逆転してしまっている。
実力がどうこうよりもすでに気持ちが負けている様子だからな。
そんな自分のふがいなさに気付いたのかもしれない。
翔子は苦々しげに唇を噛み締めていた。
…ふがいなさ、か。
翔子の気持ちは翔子にしか分からないが。
何時から恐れを感じるようになったのか?
おそらくそういった疑問も感じているのだろう。
翔子は自分自身に対しての怒りすら感じながらも力強く一歩前へと踏み出した。
そして睨むような目つきで俺に立ちはだかり、
勢いよく指を突き付けてきた。
「あなたの挑戦を受けるわ!!試合は今から3時間後。私は全力で総魔と戦うつもりよ。だから、総魔も手加減なんて絶対に考えないでよね!」
全力で戦うと宣言した翔子は背中を向けて早々に歩き出した。
そしてそのまま会場から離れてしまう。
そんな翔子を追い掛けようとする沙織も背中を向けて走り出そうとしていたのだが。
…ちょうどいい機会だな。
ふわりとゆれる黒髪を見つめながら少しだけ話しかけてみることにした。




