動き出す軍隊
《サイド:琴平愛里》
『ブォォォォォォォォォンッ!!!!!!!』
『ブォォォォォォォォォンッ!!!!!!!』
『ブォォォォォォォォォンッ!!!!!!!』
突然、響き渡った警報音。
その音を聞いた瞬間に、
私と徹さんの間に緊張感が生まれました。
…何が起きたのでしょうか?
分かりません。
少なくとも私達は何もしていないはずです。
「警報…ですよね?」
戸惑いながらも徹さんの腕にしがみつくと、
怯える私を抱き寄せてくれた徹さんはすぐ側に見える南側の橋に視線を向けました。
「兵士が出てきますね。」
「そう…ですね。」
王城から続々と駆け出すアストリア軍の姿が見えます。
殺気立った雰囲気の軍隊を見た瞬間に、
私達は自分達の潜入が見つかったのだと思いました。
これ程の軍隊に囲まれてしまえば逃げるなんて不可能です。
天城さん達ならともかく、
戦闘が苦手な私達では抵抗さえできません。
だからきっと徹さんも恐怖を感じているのではないでしょうか?
私を抱き寄せる腕に自然と力がこもっていました。
「愛里ちゃんだけは何があっても守ります。」
怯える私を抱き寄せながら囁いてくれる徹さんでしたが、
兵士達は私達に視線を向けることもないままどこかへと走り去ってしまいます。
よくわかりませんけれど。
私達が目的というわけではなさそうです。
…だとしたら。
どこに向かっているのでしょうか?
疑問を感じても答えてくれる人なんていません。
突然の警報と、走り出す兵士の方々。
周囲を確認してみると。
王都の住人達でさえ驚き戸惑っている様子でした。
「何か…あったのでしょうか?」
「さあ?何でしょうね…。」
問い掛けてみましたが、
徹さんも分からないようです。
何が起きているのでしょうか?
全く理解出来ません。
それが私達の素直な感想でした。
…ですが。
軍隊が一斉に走り去ったという事実だけは間違いありません。
警備が手薄になる王城を見て、
いまならもう少し近付けるかもしれないと思えるほどです。
「近付いてみましょうか?」
私と同じことを考えた様子の徹さんが橋の入口と歩き始めます。
そして私の手を引きながら橋へと接近していきます。
…見える範囲では兵士さんの姿を確認出来ませんけれど。
それでも徹さんは橋の手前で足を止めました。
「さすがに橋を渡るのは危険ですね。」
「…ですよね。」
「ええ。ですが、随分と見晴らしは良くなりましたね。」
警備の兵がいなくなったことで、
正面から堂々と王城を眺めることができるからです。
『兵士がいない』
ただそれだけのことで、
随分と印象が異なるように思えました。
「今なら内部に潜入出来そうな雰囲気ですね。」
「…入るんですか?」
「いえいえ、僕達だけでは無理でしょう。そもそも見張りがいなくなったとはいえ、城内にはまだ残っているでしょうから。」
確かに、その可能性は高そうです。
「これ以上の観察は意味がなさそうなので、周辺で少し聞き込みをしましょうか。」
「はい!」
手を繋ぎながら歩き出した徹さんは、
周辺のお店を適当に廻りながら今の警報についての聞き込みを始めました。




