龍脈研究所
《サイド:朱鷺田秀明》
…どうやら目的地が近いようですね。
情報収集のために行動を開始した各地でそれぞれの偵察が進む中。
私と三倉さんは問題の研究所へと接近しました。
「…着いたわ。」
三倉さんの案内を受けて、
路地の隙間からそっと視線を向けてみます。
…これは確かに、怪しいですね。
比較的新しいと思われる研究所にはアストリア軍の鎧を身にまとう兵士達が警備を行っている様子が見えました。
どう見ても警備が厳重です。
これは忍び込むのも一苦労しそうですね。
「あれが問題の研究所ですか?」
「ええ、そうよ。見るからに怪しいでしょ?」
…ええ、そうですね。
小声で話し合う私達の視線の先には厳重な警備体制を整えている大きな研究所があります。
数え切れないほど多くの兵士達が周囲を警戒していて、
敷地内に侵入するのは難しそうです。
…それだけ重要な何かがある、ということでしょうか。
正門に掲げられた研究所の名前。
そこには確かに『龍脈研究所』と記されていました。
「…何の研究所だと思う?」
…さあ?
何でしょうね?
「私にも分かりませんが、これほど警備が厳重な施設は他にはなかったように思います。」
それなりに王都内の各地を調査してきましたが、
これほど厳重な警備は見たことがありません。
「でしょ?でしょ?だからこそ怪しいと思うのよね~。」
確かに違和感はありますね。
軍所拠点としか思えないほどの警備なのです。
どう考えてもただの研究所ではないでしょう。
「研究所に軍隊ですか…。あれ程の厳重な警戒体制をとらせている『理由』が何なのか?調べてみる価値は十分にありそうですね。」
「そうなのよ。どうする?」
…そうですね。
「ひとまず研究所を一通り観察して、侵入出来そうな場所があるかどうか…というところから調べてみましょうか。」
「ええ、そうね。」
私の提案を受け入れてくれた三倉さんが、
さっそく行動を開始しました。
「偵察…開始!」
気合を入れて路地を出る三倉さんは、
通行人に紛れながら時計回りに研究所の周りを歩き始めます。
その動きはとても自然で警備兵の監視も軽々と回避していますね。
素晴らしい行動力です。
これほど自然に他国の首都に溶け込める三倉さんは本当に素晴らしいと思います。
あまりにも自然すぎて、
油断すれば見失ってしまいそうなほどでした。
「これは気を抜けませんね。」
三倉さんの足を引っ張るような真似はできません。
私も上手く流れに乗れるように頑張りましょう。
路地の影から三倉さんを見守っていた私は、
通りに出てから三倉さんとは反対方向に向かって歩き始めました。
反時計回りですね。
「さて…。久々の諜報活動ですが、今回は成功させて見せますよ。」
5年前の失敗は繰り返しません。
もう二度と後悔はしないと誓ったのです。
今回は必ず作戦を成功させてみせます。
慎重かつ堂々と。
警備兵達の視線を回避しながら、
研究所の観察を始めることにしました。




