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THE WORLD  作者: SEASONS
4月17日
822/1200

戦況報告

《サイド:米倉美由紀》



二度の激戦を乗り越えて、

ようやく東門を通過することに成功したわ。



元々は5000人の部隊だったのに。


先程までの戦闘の被害によって現在は4000弱にまで減少しているわね。



門を突破するためだけに1000人もの死者を出したってことになるのよ。



…そこも問題だけど。



すでにまともに魔力を維持している魔術師なんてほとんどいないでしょうね。



…ここが一番の問題なのよ。



根本的に魔力が足りないの。



そもそも部隊の絶対数が違うのよ?



いくら主戦力の御堂君達がいてくれるといってもね。



一人当たりの負担が大きく異なってくるわ。



単純計算でも他の部隊と比べて2倍苦しいんだから、

魔力に余裕のある魔術師なんているはずがないのよ。



だから。



もしも3戦目があるとしたら、

どう考えても無理でしょうね。



この状況で万単位の部隊が襲いかかってきたら間違いなく敗北するわ。



せいぜい時間稼ぎが精一杯なのよ。



その間に友軍が駆けつけてくれればいいんだけど。


もしも来なかったら全滅かしら?



…それでもね。



今はもう立ち止まっていられるような余裕はないの。



急いで友軍の状況を把握する必要があるからよ。



私達の部隊が限界寸前であるように。


他の部隊だって援軍を待ってる状況かも知れないの。



もしもそうだとすれば一秒でも早く救出に向かわないと多くの味方を失ってしまうことになるわ。



もちろん砦の外部では伝令部隊が活躍してくれてるからある程度の情報はあるんだけどね。



それでも最新とは言えないのよ。



状況は常に変化してしまうものだから。


5分前に聞いた情報が今も正しいなんて言い切れないわ。



だから先を急ぐ必要があるのよ。



「偵察部隊を先行させながら、砦の中心部に接近するわよ!」



中心に向かえば各方面のどこにでも向かえるわ。



逆に言えば各方面からの部隊が集結しやすくなるということでもあるんだけどね。



足早に前進を続ける私の部隊。


その途中で南側から接近してくる部隊が見えたのよ。



…また敵の増援部隊がきたの?



なんて一瞬だけ思ったけれど。



それが間違いであることはすぐにわかったわ。



一々確認しなくてもね。


接近さえしてくれれば分かるの。



アストリア軍に魔術師はいないから、

接近してくる部隊から魔力の波動が感じられる時点で友軍なのは間違いないわ。



南側から接近してきてるから、

普通に考えれば誰の部隊かは予測できるわよね?



「どうやら向こうも突破出来たみたいね。」



呟く私の視線の先には南門を突破して進軍する悠護達の部隊がいるのよ。



私の部隊が戦闘を行っていた東門まで援護に向かう途中だったのかしら?



向こうも私達の部隊を確認したようね。


大急ぎで合流してくれたわ。



「ご無事でしたか!」



ええ…まあ、何とかね。



戦力的には2割も減少したから無事とは言い難いけれど。



アストリア軍の撃退には成功してるから、

まずまずというところかしら?



ひとまず無事を喜んでくれる悠護に笑顔を返しておくことにしたわ。



「それで、そっちはどうなの?」



状況を訊ねてみると。


悠護は僅かに辛そうな表情を浮かべてから現在の状況を報告してくれたわ。



「南門に布陣していた敵部隊はほぼ全て殲滅しました。その戦闘において西門からの増援部隊も潰しましたが、僕が率いていた部隊はおよそ半数にまで減少してしまいました。」



…うわ~。



半分も減ったのね。



つまり5000人もの魔術師が亡くなったということよ。



…私達も苦しかったけれど。



南門はそれ以上の激戦だったのかもしれないわ。



報告としては最悪の部類だけど。


敵の増援部隊とも戦闘を行っていたのであれば被害が大きくなるのは仕方がないでしょうね。



…とは言っても。



「見た感じはそれほど部隊が小さくなったようには見えないわね?」



1万の部隊が半数にまで減ったというわりには、

全く戦力が減っているように見えないのよ。



むしろ増えてる?って、思えるほどだったわ。



「西門からの敵の増援部隊とも激突したっていうことは、西門に派遣していた岸本司令官の部隊も合流してるっていうことかしら?」



部隊が肥大化してるって言うことはそういうことよね?


そう思って部隊の状況を確認してみたらね。



「…ご報告いたします。」



悠護の背後に控えていた雨宮さんが私の前に歩み出てきたのよ。



「貴女は確か…西門の部隊に派遣されていたはずよね?」


「はい、そうです。」



頭を下げた雨宮さんが西門の結果を報告してくれたわ。



「西門は制圧に失敗しました。岸本司令官は戦死。同僚である木村泰輔きむらたいすけ副隊長も行方不明。以下、3000名近い犠牲が出ています。」



…なっ!?



西門に派遣した部隊は敗走したの!?



それに岸本司令官まで倒れるなんて…。



ただでさえ有力な人材が少ないっていうのに、

指揮官を失ってしまったのはちょっとどころじゃなく痛いわね。



さすがに全部隊生存は望めないにしても、

部隊の指揮を取れる人材が減少するのは今後の戦いに大きく響いてしまうのよ。



…はあ。



雨宮さんの報告を聞いたことで深々とため息を吐いてしまったわ。



「まだまだ戦争は序盤なのに、岸本司令官が倒れたのは痛いわね…。」



この戦いは砦の制圧が最終的な目標じゃないのよ。



あくまでもね。


戦争を終わらせるために。


アストリア王国そのものを叩く必要があるの。



そのための手段として砦を攻略しているのであって、

ここで優秀な戦力を失ってしまうのは今後の戦況に悪影響を与えかねない深刻な事態なのよ。



…今更悔やんでもどうしようもないことだけど。



「せめてこれ以上の被害が出ないように努力するべきよね。」


「はい。もちろんそのつもりでいますが、西門の攻略は放棄したために残る敵軍の総数は不明です。」



…あ~。



まあ…そうなるわよね。



共和国軍が敗走した以上。



アストリア軍は残存してるはずよね?



だけど…どうなのかしら?



さきほど撃破した第二陣が予備戦力だったとは思えないわ。



すでに交戦していた形跡が感じられたし。


慌てて駆けつけてきたっていう雰囲気があったのよ。



…だから。



もしかすると第二陣の部隊が西門に配備されていた部隊だったんじゃないかしら?



「たぶんだけど…西門の敵部隊なら、おそらく私達が撃破したわ。」



東門の部隊を壊滅した後に現れた1万程度の部隊。


きっとそれが西門の残存部隊だと思うのよ。



そしてもしも私の予測通りだとすれば、

残る問題は北門だけになるわ。



「残る不安要素は北門だけど…。」



ここからでは全く見えない北門の方角に視線を向けてみる。



戦場が遠いから状況を見ることが出来ないけれど。


すでに戦闘音は聞こえてこないから、

どちらかの軍が勝ったのは間違いないと思うのよ。



それが共和国軍であれば何の問題もないわ。



だけどもしも勝ち残ったのがアストリア軍だったとしたら再び戦闘が起きることになるわね。



…だとしても。



今は悠護達の部隊も合流しているから、

戦闘になったとしても対応できるとは思うわ。



…ただ。



数が増えても魔力が減少している状態では戦力としては期待できないからあまり無理はできないでしょうね。



「様子を探らせるべきかしら?」



北門の様子を見る為に、

偵察部隊を送り込もうと考えたんだけど。



私が指示を出す前にね。



北側からも接近してくる部隊と遭遇することになったのよ。



「味方だっ!!!」



大声で叫んで喜んでいるのは北門に派遣していた伝令部隊のようね。



「鞍馬様に報告するぞっ!!!」



走り去る魔術師達を見送ってから、

残った部隊に接近してみる。



「状況を教えて」



伝令部隊の一人に話しかけてみると、

期待通りの返事が返ってきたわ。



「北門の突破に成功しました!!まもなく鞍馬様がこちらに到着されます!!」



…ふう。



どうやら北門も制圧に成功していたようね。


これで四方の各門の内、

3箇所を共和国軍が抑えたことになるわ。



一応、西門がまだ残ってるけれど。


すでに内側に入り込めた現状で、

わざわざ西門を開放しに行く必要はないわよね?



そもそも門の解放そのものには何の価値もないのよ。



敵の戦力を分散させて各個撃破することが目的であって、

共和国軍の優勢で砦の内部に侵入できたんだからもう十分なの。



まあ、制圧出来てない場所があるせいで敵軍が背後に回り込んでしまう可能性は残ってしまうわけだけど。



それを言い出したら地下に水路が広がってる以上。



門だけじゃなくて水路も封じないと安全なんて確保できないわ。


そこまでしなければ意味がないのなら、

背後を心配するのは時間の無駄でしかないのよ。



だからね。


来たら来たで、その都度対応していくしかないわ。



…と言うか。



そもそも10万対3万5千の総力戦なんだから戦況の把握なんて出来ないし。


数の力で包囲されてしまったら共和国軍の被害はこの程度では済まなかったはずなのよ。



だからアストリア軍の戦力を分散させるという作戦はひとまず成功したと判断しても良いんじゃないかしら?



「被害状況は?」


「およそ2割ほどが倒れたと思われます。」



2割ね。



悠護の部隊に比べればまだマシだけど。



現時点ですでに戦力の3分の1を失ったということよ。



3万5千の戦力が、

ざっと2万4千まで減少したことになるわ。



まだまだ戦争の序盤なのに。


この被害は頭の痛い問題になるわね。



「本国からの援軍は期待できないかしら?」



減った分を増員できればありがたいんだけど。



「おそらく無理かと思われます。」



近藤隊長にあっさりと否定されてしまったわ。



「数日後ということであれば可能だとは思いますが、アストリア軍が秘匿しているという兵器を破壊するために進軍を急ぐのであれば、共和国からの増援部隊を待っている余裕はないと思います。」



…ええ、そう。



問題はそこなのよね。



アストリアの領土を少しずつ占領して共和国の支配権を広げていく方向で軍を進めるのであれば援軍の到着を待つ余裕は十分にあるわ。



だけど、今の私達にはその余裕がないの。



天城君が調べてくれた兵器に関する情報が少なすぎて、

堅実に進むべきか強行するべきかの判断ができないからよ。



共和国軍の被害を最小限に抑えるためには、

堅実に進んだほうがいいのは当然よ。



だけど兵器の危険性を考えるなら無理をしてでも軍を進める必要があるわ。



攻撃を受けてから後悔しても手遅れなの。



兵器の攻撃によって致命的な被害を受ける前にこちらから討って出る必要があるのよ。



「やっぱり今の戦力だけで進むしかないのね。」


「敵軍の兵器が本格的に始動する前に戦争を終えるためにはそれしかないかと。」


「まあ…ね。」



実際にどれほどの破壊力があるのか分からないけれど。


兵器の破壊が最優先なのは間違いないわ。



そう考えたからこそ天城君も先行してるわけだし。


私達ものんびりとしてる余裕なんてないの。



…とにかく。



西門の敗北は痛いけれど。


他の3つの門は突破に成功したのよ。



あとは残る戦力を再編成して残存部隊との戦闘を終えれば砦から先へ進むことができるはず。



もちろん、まだまだ気は抜けないけどね。



「悠護隊長。悪いけれど、一つ頼まれてくれないかしら?」


「はい!何なりと!!」



素直に従ってくれる悠護に微笑みながら、

次の作戦に向けて指示を出してみる。



「魔力を回復させるためにみんなの体を休める必要があるんだけど、ついでに食事休憩にしようと思うのよね。」



みんな一晩中戦って疲れてるだろうし。


出来ることなら食事をさせてあげたいのよ。



「どこかに食料庫があると思うから、探し出して食糧を回収して来てくれないかしら?」



一晩中戦闘を続けていたせいで、

睡眠すら取れていない共和国軍の疲労は大きいわ。



本来ならしっかりと休息時間を与えてあげたいんだけどね。



だけどここは敵地のど真ん中だし。


アストリア軍はまだ全滅したわけじゃないのよ。



だからのんびり眠ってる暇なんてないわ。



その代わりにせめて食事だけでも用意してあげたいんだけど。


残念なことに備蓄していた食糧は出発前に全て消費したから、すでに在庫がないのよ。



それでも食事をしようと思うのなら、

どこかから調達しなければいけないんだけど。



国境近辺のこんな僻地に町や村なんてないし。


マールグリナまで戻っている暇もないわ。



今ここで食事を考えるのならアストリア軍が備蓄している食料を奪い取るしか方法がないのよ。



「どの程度の備蓄があるかはわからないけれど、10万の兵を賄える程度には用意していたはずだから在庫はまだあるはずよ。」



兵の士気を維持する為にも、

食糧の確保は重要度の高い任務になるわ。



「了解しました!部隊を率いて調査を開始します!」


「お願いね。たぶんだけど、砦の四隅が兵舎になっているから、その近辺に食料庫があるはずよ。」



わざわざ食堂から遠くに食料を保管するとは思えないしね。


もっとも人が集まる場所にあるはずなのよ。



「分かりました。それでは兵舎の周囲から調べてみます。」


「ええ、よろしくね。一応、こっちは敵部隊の牽制をしておくわ。」



アストリア軍の残存部隊がどの程度の規模なのかは分からないけれど。


まだまだそれなりの戦力を残してるだろうから油断なんてできないわ。



「アストリア軍は足止めしておくから、その間によろしくね~。」


「お任せ下さい!」



悠護は部隊を分割して、

国境警備隊だけを率いて行動を開始したようね。



「私達も行くわよ!」



兵を指揮して探索を始める悠護の部隊を見送ってから私も部隊を進軍させる。



砦の内部で、

最後の決戦に向けての準備が始まったのよ。



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