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THE WORLD  作者: SEASONS
4月17日
821/1212

英雄?勇者?死神?悪魔?

《サイド:美袋翔子》



…やっと終わるわね。



東門の手前。



アストリア軍の第二陣との戦いも、

ついに決着の時を迎えようとしていたわ。



「東門に狙いを定めるわよっ!!全軍!一斉攻撃っ!!!」



理事長の指示によって、

あらゆる魔術が東門へと放たれる。



「「「「ぐあああああああっ!!!!」」」」


「「「「いやああああああああああああっ!!!!」」」」


「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」」



次々と響き渡るアストリア軍の悲鳴。



共和国軍の一斉攻撃によって、

アストリア軍の前線部隊が壊滅したわ。



死体の積み重なる惨劇の地。



それでも死を恐れずに恐れることなく駆け抜ける後続の兵士達。



彼らの瞳はすでに死を覚悟していて、

最期まで戦い続ける意志を保ち続けているのよ。



命をかけた特攻隊なの。



玉砕覚悟で突撃を試みるアストリア軍の勢いは激しさを増していく。



どれ程の仲間を失っても、


どれ程の痛みを味わっても。


決して足を止めることはなかったのよ。



「どうして諦めないの…?」



呟いてみるけれど。


答えは誰も教えてくれない。



だから私はまだ何も知らないでいるのよ。



アストリア軍が命をかけて戦う理由を知らないままなの。



ただの一般人が戦争に参加して、

魔術師と戦う決断をした本当の意味を…私はまだ知らずにいるの。



「どうして…?」



次々と倒れていくアストリア軍を眺めながら疑問を持ち続ける。



どうして戦えるの?


どうして死を恐れないの?


どうして逃げないの?


どうして諦めないの?



…そして。



どうして戦争が起きたの?



何も分からない。


だけど疑問を抱える私に気付いた理事長が一言だけ教えてくれたわ。



「…それはね。『魔術が存在するから』よ。」


「えっ…?」



…どういうこと?



理事長の言葉に戸惑ってしまったわ。



…なのに。



理事長はその意味に関して何も教えてくれなかったのよ。



「悩んでも、迷っても、この戦いは終わらないわ。戦って勝つ以外に私達が生き残る道はないの。だから今は勝つことだけを考えなさい。」



説明を避けて話を終えてしまう理事長のせいで、

何も分からないまま戦場に視線を戻すことになったわ。



走り続けるアストリア軍と魔術による抵抗を試みる共和国軍。



刻一刻と増え続ける死体の山。



それでも果敢に突撃して共和国軍に攻め込むアストリア軍は止まらない。



悪化する戦況はどちらにとっても同じで、

どちらが有利でもなく、

どちらも戦力が失われていくのよ。



ただただ絶望的な殺し合いとしか思えないわ。



そんな様子を眺める私に沙織が寄り添ってくれてる。



「きっと…きっとね。お互いに命をかける理由があって、私達はその理由の為に戦っていると思うの。」



…理由?



「向こうの理由はまだ分からないけれど。私達には守りたい人達がいるし、守りたい場所がある。そして守りたい未来がある。」



それは…うん。



分かってるつもりよ。



「生きて大切な人達が待つ場所へ帰る為に…私達は戦っているのよ。」



そこで一旦言葉を区切った沙織は、

戦場に視線を向けながら言葉を続けたわ。



「…だからね。きっと向こうも同じだと思うの。」



…同じ?



「守りたい何かがあって、その為に戦っているんじゃないかしら?」



…アストリアが守りたいもの?



「たぶん私達とは違う理由で、彼等は戦いを決断したと思うの。それがなにかまでは分からないけれど、負けられない理由が向こうにもあるのよ。きっと…ね。」



…負けられない理由?



それはまあ、そうなのかもしれないけれど。



それが何なのかが想像出来ないのよね。



そもそも戦争さえ起こさなければ…。


あるいは争うことさえしなければ…。



失わずに済んだ命は沢山あるはずなのよ。



それなのに。



殺し合って争うことでしか解決出来ない理由って何なの?



それが私には理解出来ないのよ。



理事長の言葉の意味はなに?



『魔術が存在するから』って教えてくれた理事長の言葉にどれ程の意味があるの?



私には何も分からない。



「死を覚悟してまで戦う理由って何なのよ?」



呟いてみるけれど。


その疑問に答えてくれる人はいないのよ。



だからかな?


思い悩む私に真哉が歩み寄ってきたわ。



「…翔子。」


「ん…?」



呼び掛けてきた真哉を見つめ返す。


何か言いたそうな表情だけど。


その前に私から問いかけてみたわ。



「ねえ、真哉。真哉は何で戦えるの?」


「はあ?今更な質問だな。戦わねえと守れねえモノがある。だから俺達が戦う理由は守る為だ。そうだろ?」



当然とばかりに答える真哉だけど。


それはもう分かってるのよ。



「でも、向こうは?」


「さあな?敵の考えなんて興味はねえが、向こうにも戦うことでしか守れない何かがあるんじゃねえか?ただの『魔術師狩り』だけでは納得できない何かがあるんだろ?」


「だから、それが何なのかを知りたいのよ!」


「ああ?ったく、面倒なやつだな…。一応聞くが、それを知ってどうする?仮に向こうの言い分が正しかったとして、お前は大人しく殺されてやるつもりなのか?」



…そ、それは。



ちょっと困るけど。



…死にたくはないけど。



それでも知りたいとは思うのよ。



それなのに。



言葉に詰まってしまった私を見ていた真哉は現実を突きつけてくるのよ。



「今の俺達に必要なことは生き残ることだけだ。争いの理由なんてあとで気の済むまで考えれば良い。そうだろ?違うか?」



考えることを丸投げにして、

真哉はラングリッサーを構えてる。



「力でしか解決出来ない事こともある。そして今がその時だ。守るべきモノの為に戦う。それが俺の役目だ。」



ルーンを構える真哉は突撃を続けるアストリア軍に向けて全力で駆け出したわ。



「仲間に手出しはさせねえぜっ!!!」



振り回される『ラングリッサー』



その一振り毎に倒れていくアストリア軍。



戦場を駆け抜ける真哉の姿に迷いは一切見えないわ。



魔力の回復が追い付かないせいで戦えない私と沙織を守る為に。


必死に戦場を駆け回ってくれているのよ。




…でもね?



その姿はね。


決して恰好良いものじゃないと思う。



凄いとは思うし、強いとも思う。



だけどね。



格好良さなんてどこにもないのよ。



それは私の主観がどうとかそういうことじゃなくてね。


人を殺し続ける姿に格好良さなんて感じちゃダメだと思うから。



だから真哉に限らず、

龍馬も他の人達も格好良いなんて思わない。



…まあ、ここにいるのが総魔だったら感想は変わってくるかもしれないけどね。



それでも。


今の私はまだ殺人が格好良いとは思えないのよ。



だから、っていうわけじゃないけれど。



私達の代わりに戦ってくれている真哉を見て感じる思いは悲しみでしかないわ。



すでに真哉の両手は多くの血を浴びているし。


貰ったばかりのコートも返り血と砂埃と土砂でドロドロに汚れてる。



それでも止まらない戦争を生き抜くために

次々と人を殺し続ける真哉の周囲には沢山の血が流れているのよ。



数え切れない程の罪を重ねて仲間を守り続ける真哉の姿を見てね。


恰好良いなんて、そんなちっぽけな言葉では言い表せないわ。



その姿は英雄でもなければ勇者でもないの。


自分の中の理由の為だけに戦う真哉の姿はまさに死神そのものなのよ。



…だけどね?



だからこそ思うの。



そうならなければ生き残れないんだ…ってね。



残虐なほどの罪を重ねて。


必死に戦い続けることでしか解決出来ない問題もあるのよ。



戦場を駆け抜ける真哉は恐ろしいほどに強くて、

その存在感は圧倒的で、

悲しいほどに冷酷だったわ。



だから今もまた戦場で一つの命が失われていく。


真哉の攻撃がアストリア軍の兵士の命を刈り取っていくのよ。



「うぁぁぁ…っ!!」



一人…また一人と倒れていくアストリアの兵士達。



勢いを止めることなく振り回される槍の一撃を受けて、

真哉の周りには続々と死体が積み重なっていったわ。



「あ、悪魔だぁぁぁ!!!!!」



怯えるアストリアの兵にも容赦無く襲いかかる真哉はその手の槍で兵士の体を貫いていく。



「がっ…ああっ…!?」



力尽きて倒れ込んだ兵士が絶命する間にも、

次の敵に狙いを定めた真哉は走り出してしまう。



…何回?


…何十回?


…何百回?



繰り返される斬撃音の度に、

次々と倒れていく兵士の叫び声が周囲に響き渡っていく。



そんなふうに全力で暴れ続ける真哉の背後に一人の人物が接近したわ。



「遅れてごめん!加勢する!」



仲間の声を聞いた真哉の表情に笑顔が浮かんでた。



「待ってたぜ、相棒!」



真哉の背後を守るために加勢したのは、

ルーンが使える程度に魔力が回復した龍馬だったのよ。



「僕も戦うよっ!!」



シャイニングソードを片手に戦場を走り出す龍馬も、

その手の大剣を振り回して勇猛果敢にアストリア軍へと攻め込んでいく。



容赦なく振り回す大振りの一撃。



たった一振りの攻撃で周囲にいた数名のアストリア軍がその体を分断されてしまったわ。



「「「………っ!!」」」



声さえ出せずに崩れ落ちる兵士達。


龍馬の参戦によって再び気合いを込める真哉も次々と兵士を切り倒していく。



「ぐああああああっ!!!!」


「うわああああああっ!?」



まさしく蹂躙よね。



真哉と龍馬の活躍によって徐々に崩れていくアストリア軍は成す術もないまま数を減らしていったのよ。



それでも止まらない龍馬達は多くの魔術師達の援護を受けながら敵軍の指揮官の近くにまで接近したわ。



「くっ!バケモノどもめ…っ!!」



苦々しく呟く指揮官が両手に剣を構える。



…だけど。



たぶん2刀流っていうわけじゃないと思う。



単純に2人同時に相手をする為に剣を両手に構えて対峙した感じかな?



「一矢報いてみせるっ!!!」



倒れていった仲間達の為に死を覚悟で突撃する指揮官だけど。


龍馬と真哉の二人を同時に相手にするにはさすがに実力が及ばないでしょうね。



「これで終わりだっ!!」



龍馬の大剣が指揮官の体を斬り裂き。



「さっさと死になっ!!!」



真哉の振り回す槍が指揮官の体を貫いたわ。



切断からの刺突。



龍馬と真哉のそれぞれの一撃を受けた指揮官は口から血を吐きながら地面に崩れ落ちたのよ。



「…くそ…っ!一太刀さえ届かぬとは…。」



悔しさを表情に表しながらも、

指揮官は死を迎えたわ。



「退却だーーーー!!!」


「全軍!後退しろーーー!!!」



指揮官が倒れたことで、

続座に撤退を始めるアストリア軍。



僅かな生き残りが砦の内部へと逃げ込んで行くけれど。


龍馬達は無理に追撃せずに逃亡を見送ってる。



敵はまだ全滅してないから深追いは危険と判断したんでしょうね。



指揮を執る理事長の指示で、

共和国軍もアストリア軍の撤退を見送っていたわ。



…まあ、逃げたって言ってもね。



ほぼ壊滅状態だったから、

数百人程度だと思うのよ。



その数百人にしても負傷者だらけだと思うけれど。



ひとまず終わったことで、

理事長は周囲を見回していたわ。



「どうにか第二陣も防ぎきったわね。」



ほっと息を吐く理事長に優奈ちゃんが歩み寄っていく。



「これで終わったんでしょうか?」



…だと良いんだけどね。



「う~ん。どうかしら?」



首をかしげる理事長もそうだと思うけど。


私もまだ全滅はしてないと思うわ。



相当な犠牲が出てるとは思うけどね。



10万の大軍団だったけれど。


それはもう大半が崩れてるはずなのよ。



最初の3万と、あとから来た1万。


合計4万ものアストリア軍が壊滅したから。



こちらの被害も大きいけどね。


敵の死傷者数はそれ以上なの。



目測では計り知れないほどなのよ。



こうなると他の部隊の様子を知る為にも、

早めに行動するべきかもしれないわ。



「とにかく軍を進めるわよ!これ以上の休憩は他の部隊に影響を与えかねないし、敵に猶予を与える余裕もないわ。」



私と同じ判断をした理事長は、

生き残った部隊を再編成して東門へと進軍を開始したのよ。



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