平和な街並み
《サイド:琴平愛里》
私達は今、アストリアの王都にいます。
活気あふれる王都の街並みはとても賑やかで、
とても平穏な光景に見えました。
「こうして見ていると、とても戦争が始まるとは思えないわね~。」
…そうですよね。
呟いた純さんの疑問は私も感じていることです。
王都はとても平和で、
ごくごく普通の日常という気がするんです。
「王都の人達はみんな知ってるのかしら?戦争のことを…」
…どうなのでしょうか?
あまりにも平和すぎることで疑問を感じてしまいます。
周囲を警戒しながら歩みを進めているのですが、
何処を見ても戦争の雰囲気は感じられません。
朝から無邪気にはしゃぎ回る子供達や家事に勤しむお母さん達。
そして仕事に出かけていく男性や、
忙しそうに馬車を走らせる商人の姿が各地で確認出来ます。
もちろんのんびりと世間話を始めている人達もいます。
共和国とアストリアでは異なる習慣があるとは思いますけれど。
それでもどう見ても平和な光景で、
ごく普通の朝の風景としか思えませんでした。
町の人達の表情に怯えや不安は感じられませんし。
どこを見ても緊迫した雰囲気は欠片も感じられないんです。
…ただ一つの例外を除いて、ですけど。
「気のせいでなければ…昨夜よりも『軍の数』が増えているように見えますね。」
…そうなんです。
朱鷺田さんの言葉を聞いて周囲を見回してみました。
確かに軍の兵士っぽい方々が各地に見えます。
見渡す限りどちらを向いても必ずと言って良いほど軍服を着込んだ巡回兵達が列を成しているのが見えるんです。
夜の間は監視の目を逃れることが出来ていたのであまり気にしていなかったのですが、
徐々に明るさを増していく街中では監視の目から逃れるのは難しいと思います。
特にマールグリナ医術学園の『制服』を着ている徹さんと私は異質に見えるかもしれません。
そんな不安を感じていると、
不意に徹さんが先頭に立ちました。
「ありました!あの家です!」
指差す徹さんの視線の先には明らかに無人と思われる古ぼけた一軒家が建っています。
あちこち壊れていて、
今にも潰れてしまいそうな廃屋です。
その中に入るために。
私達は人目を警戒しながら廃屋内に侵入しました。




