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THE WORLD  作者: SEASONS
4月17日
811/1200

そうでなかった場合

《サイド:天城総魔》



どうやら徹も愛里も無事だったようだな。



「お疲れ様です。お怪我はありませんか?」


「ああ、問題ない。」



心配してくれる愛里に微笑みを返しておく。


疲れているのはお互い様だからな。



「お互いに無事で何よりだ。」


「はい!そうですね。」



嬉しそうな笑顔を見せる愛里。


その笑顔にはどこか懐かしさを感じさせる雰囲気が漂っている。



…この笑顔は。



どことなく優奈に似ているかもしれない。


控えめに微笑む仕草が優奈の表情を思い起こさせるからだ。



………。



何気なく空を見上げてみる。



…この空の向こうに。



共和国に残してきた仲間達がいるはずだ。



御堂、翔子、優奈。そして沙織と北条。



共に学園生活を過ごして、

共に魔術大会を戦った仲間達。



友と呼べる仲間達が今どこでどうしているのかは知らない。



遠く離れた地にいる俺には知ることの出来ない事実だ。



調べようと思えば魔力の波動は追跡できると思うが、

確認したところで何かが変わるわけではないからな。



調べるだけ時間の無駄だろう。



…ただ、できることなら。



もう一度ジェノスで会いたいとは思う。



…どうだろうか。



もう一度、会える日は来るのだろうか?



ふと思う疑問だが、

その考えはすぐに振り払うことにした。



もう二度と会うことはないからだ。



俺の戦いに巻き込まないために。


そのために仲間の前から立ち去った。



だからもう二度と会うことはない。



…そして。



会う理由もない。



仲間を守るために別れたと言えば格好良いかもしれないが実際にはそうではないからな。



誰かを守るなどという言葉は俺には相応しくないと思っている。



俺の目的はあくまでも『復讐』だ。



そしてそれは自分自身の『自己満足』でしかない。



たまたま目的が重なったことで共和国に手を貸す形にはなっているが。



もしもそうでなかった場合。


俺は自分の目的を果たす為だけに、

戦争の引き金を引いていたかもしれない男だ。



全ては偶然が積み重なって、

たまたま今の状況があるに過ぎない。



…他の誰のためでもない。


…自分自身のためだ。



だから最初から一人で戦うつもりだった。



そして孤独に死んでいくつもりだった。



だがそんな曖昧な予定に反して、

俺の周りには守るべき者達が増えてしまった。



もちろんそれは御堂達だけではない。



徹や愛里に朱鷺田や三倉。


新たな仲間達も同様だ。



彼等も死なせたくはないと考えている。



多くの出会いと共に増えた守るべき者達。



…だが。



全てを守れると思うほど自惚れてはいないつもりだ。



そのことは自分でも理解している。


一人の力では出来ないことがあるからな。



どれ程の力を手に入れても守れないモノはある。



だからこそ俺は別れを選んだ。



『失わない為に』だ。



同時に失わせない為でもある。



そのために俺は別れを選んだ。



戦場に立たなければ死なずに済むからな。



共和国へと戦争の火種が飛ぶ前にアストリア王国を叩くことが出来れば仲間の命を守ることが出来るはずだ。



そう考えていた。



だから全ては自己満足でしかない。



自分の目的の為に戦うことを選び。


仲間を置き去りにしてきたのだ。



こんな俺の行動が他者の為だとは到底思えない。



だから俺にできることは限られている。



大切な者達の幸福を祈ることだけだ。



遠く離れた地にいるであろう『友』の顔を思い起こしながら、

徹や愛里にも聞こえないほど小さな声で呟く。



「…幸福な日々を…。」



それが今の俺のただ一つの願いといえるだろう。



御堂達の幸福を願ってから、

現在の状況と向き合ってみる。



…と言っても。



すぐ傍にいる徹と愛里に視線を向けてみただけだが。



…俺はこの2人を守れるだろうか?



絶対に守るとは言い切れない。


だが守りたいとは思っている。



…今ならまだ王都の外に脱出させられるだろう。



兵器の破壊という行動を起こす前なら脱出は可能だ。



そんなふうに考えながら、

2人に話し掛けることにした。



「これから行う潜入に命の保証はない。おそらく生きて帰れる可能性は低いだろう。」



敵は本物の軍隊だ。


今回はごまかしが効かない。



「一度騒ぎになれば王都からの撤退はほぼ不可能だ。待ち受ける結果は死でしかない。」


「「………。」」



俺の言葉を聞いて唾を飲み込む二人。


それでも二人は表情に迷いを見せなかった。



「僕は行きます!!例えこの命が失われるとしても僕には守りたいモノがあります!だから…だから、ここで引き下がるつもりはありません!!」



力強く宣言する徹に続いて愛里も宣言していた。



「私も連れていって下さい!私では足手まといかも知れませんが…それでも私もお役に立ちたいんです!私に出来ることを精一杯やりたいんです!!」



一生懸命に訴える愛里の気持ちを聞いたことで、

それ以上の説得は諦めた。



二人の想いは本物だ。


必死に願う想いを否定することは俺には出来ない。



少なくとも。


俺自身も似たような理由でここにいるわけだからな。



「…そうか。」



それならもう逃げろとは言えない。



「悔いが残らないようにすればいい。」



二人の説得を諦めて呟いた俺の視界に朱鷺田と三倉の姿が映り込んだ。



遅れて到着した二人も無事だったようだ。



「…来たな。」



立ち上がった俺の姿に気付いたのだろう。


朱鷺田と三倉の二人も笑顔を浮かべながら歩み寄ってきた。



「皆さん、ご無事で何よりです。」


「ホントに良かったわ。」



笑顔で帰還した朱鷺田と三倉。



二人の無事が確認出来たことで、

徹と愛里も笑顔で出迎えていた。



「これで全員揃いましたね。」


「無事に再会出来て良かったです。安心しました!」



笑顔で無事を喜び合う4人の仲間。



その姿を眺めながら再び自問してみる。



…ここにいる仲間達を守れるだろうか?と。



それぞれの理由で戦争に参加しているとは言え、

復讐という目的に巻き込んでしまったのは事実だ。



…出来ることならマールグリナまで生還させたいが。



仮に今から王都を脱出させられたとしても、

兵器を破壊できなければ攻撃を受けることになる。



…何処に逃げても結果は同じか。



俺一人で兵器を破壊出来れば良いが、

出来なければ作戦は失敗となる。


そうなれば共和国は兵器の攻撃を受けてしまうだろう。



破壊工作を成功させるためには戦力が必要だ。


だから徹達を離脱させることが出来ない。



…葛藤だな。



兵器の破壊と仲間の命。


どちらを優先するべきか。



…選ぶの徹達だ。



決断するためにも今後の方針を話し合う必要があるだろう。



「…行くぞ。」



無事に合流した仲間と共に行動を開始する。



「仮の拠点に向かう。」



徐々に人通りの増えていく王都内を人目を避けながら進んでいく。



目指しているのは、とある『家』だ。



徹と愛里が偵察中にたまたま見掛けたという廃屋。



ひとまずその廃墟を隠れ家として使用する為に。


徹の案内によって移動することにした。



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