足止めを受けているのは
《サイド:鞍馬宗久》
『ガキィィィィィィィン!!!』
ぶつかり合う刃と刃。
幾度となく繰り返される一進一退の攻防戦。
国守との一騎打ちは両軍の混戦の真っ只中で互いに槍を振り回しながら一瞬の隙を窺う持久戦に持ち込まれていた。
「流石は元代表と言うべきか。俺の動きについて来るとは、とても引退した身だとは思えんな。」
「…ふははははっ!!」
笑わせおるわ。
代表を引退したからといって現役まで引退した覚えはない!
「老いても魔力は衰えん。若さだけが全てだと思うな!」
すでに60を越える年齢だが、
鍛え続けてきた闘志と肉体は決して衰えなど見せてはいない。
複数の魔術を常時発動させることで、
刻一刻と魔力を消費しながらも肉体を強化して戦っているのだからな。
強化された身体能力は30代の国守と比べても何の遜色もなく。
武を極める国守を相手にしても互角の戦いを行えるほどだ。
「お前を足止めしている間に他の兵士を壊滅させる!」
それが一騎打ちの目的なのだ。
「国守よ。出来るのならば見事この国を守ってみせるが良い!」
安い挑発を行いながら国守へと攻め込む。
『ブオンッ!!!』と風を切り。
勢いよく振るった槍を、
国守は全力で防いでみせる。
槍がぶつかり合う度に衝撃によって痺れる腕。
生身の体と魔術強化された体ではどちらが不利かなど考えるまでもないだろう。
国守は若干の焦りを感じながらも、
必死に対峙し続けていた。
「俺はこの国の守護者だ!必ず守りきって見せる!!」
全力で突き出される鋼の槍だが、
捌く程度なら容易いものだ。
軽く弾いて受け流す。
そして流れるように牽制の一突きを放つ。
「ちっ!」
距離をとって攻撃を回避した国守は、
さらに数歩だけ後退してから槍を構え直した。
「俺を相手にして時間を稼ぐつもりかっ!厄介なことを…!!」
不満を呟く国守の態度には隠しきれない焦りが見える。
こちらの目的を知ったことで、
ようやく劣勢の戦況に気づいたのだろう。
どれほど国守が単騎無双の猛将だとしても周囲の兵士達は一般人同然の戦力だからな。
国守の動きさえ封じてしまえば一掃するのは簡単な作業だ。
「一撃に魔力を込める他の魔術師達と同じだと思うなよ?」
魔力効率を重視するワシが得意とするのは『長期戦』だ。
「時間を稼ぐことに関してワシの右に出る者などおらん!」
最小限の消費で最大限の成果を上げる。
それこそが共和国の代表にまで上り詰めた実績であり。
国境警備隊の兵士達に常日頃から教え込んでいる基本方針なのだ。
「魔術師だからといって接近戦が苦手だなどと思わないことだ。」
「…ちっ!」
ワシの足止めを受けて仲間を助けることの出来ない国守。
その周囲では情勢が大きく変わろうとしていた。
「うぁぁぁぁ………!!!」
「いやぁぁぁっ!!!」
「誰か…助け…っ!?」
逃げ惑う兵士達の声が各地で響き渡っているがすでに手遅れだ。
容赦なく降り注ぐ魔術を受けて次々と倒れるアストリア軍の壊滅はもはや食い止められる状況ではない。
その様子を眺める国守は唇を噛み締めるしかないだろう。
ここでワシを倒さない限り、
仲間の援護には向かえないのだからな。
倒れていく仲間達の悲鳴が聞こえながらも決して手出しはできない。
その事実に気づいたことで、
国守はワシを強く睨みつけてきた。
「お前を倒す!!!」
…ふははっ!!
素晴らしい気迫だ。
「やってみるが良い、小僧!」
向かい合う状況から同時に踏み込み。
『ガキィィィィィィン!!!!』
互いに再び刃を交えた。




