3つの可能性
《サイド:近藤悠護》
西側から追撃部隊が来ているだと!?
雨宮は現状を報告してくれたのだが、
肝心のアストリア軍の姿は見えなかった。
「追撃部隊はどこだ?」
雨宮が嘘の報告をしているとは思わない。
もちろん誤報だとも思わない。
雨宮が率いていた部隊の疲労困憊ぶりを見れば、
どういう状況だったのかは聞くまでもないからな。
間違いなく敵の攻撃を受けていたはずだ。
それなのに現時点では追撃部隊が迫っているようには見えない。
…だとすると。
何らかの罠でもあるのだろうか?
考えられる幾つかの理由を想定してみる。
一つは雨宮達が追撃部隊を振り切った可能性だ。
敵の戦力が減少したことで後退したのかもしれない。
あるいは追撃部隊が全滅した可能性もあるだろう。
もしくは追撃を放棄して砦に戻っている可能性もある。
その3つだろうか?
「敵の数は!?」
問い掛けたことで、
雨宮は僅かに思考してから答えてくれた。
「相当な数を減らしたはずですが、それでもまだ2万近い兵力が残存しているはずです」
2万だと?
その数字を想像して表情を歪めてしまう。
雨宮が引き連れた部隊を俺の指揮下に再編成すれば部隊の数は1万を優に越えるだろう。
…1万5千程度にはなるだろうか。
それでもまともに動ける戦力は半数程度だろう。
実質1万弱と言っても良い。
追っ手の部隊はおよそ2万人の大部隊。
とは言え。
すでに南門の敵部隊は壊滅状態だ。
互いの戦力を考えると、
迎撃は可能な範囲だと思う。
…それでも。
それでも1万の共和国軍と2万のアストリア軍だ。
再び戦力の差は倍になってしまうことになる。
その事実によって精神的に追い込まれてしまう。
無意識に唇を噛み締めてしまっていた。
…すでに。
こちらの攻撃力の要である魔術は限界に来ている状況だ。
数時間に及ぶ激戦の末。
少ない人数で大部隊と戦う疲労感が残り、
共和国軍の士気は大幅に低下してしまっている。
「…まずいな。この状況で襲われれば一気に壊滅しかねないぞ。」
必至に策を考える。
だが現状でもギリギリの状態だ。
戦況をひっくり返す有効な一手は即座には思いつかなかった。




