優奈の限界
《サイド:北条真哉》
…ちぃっ!!
うっとうしいやつらだなっ!
「バーニングソウル!!!」
炎を纏って特攻を仕掛ける。
無差別に撒き散らす破壊の一撃によってアストリア軍は次々と倒れていく。
…だが、それだけだ。
「ったく!!キリがねえぜ!!」
舌打ちをしながらぼやき続ける。
幾度もの特攻によって、
かなりの量の魔力を消費しているからな。
正直に言ってそろそろ限界が違いだろう。
徐々に体力的にも疲れが出始めたせいか、
肩を上下させながら息を繰り返してしまうほどだった。
「大丈夫か、真哉!?」
心配して駆け寄ってくれた龍馬に微笑みを返しておくが、
気楽に大丈夫とは言い難い状況だな。
生き残るだけなら楽勝だが、
敵を殲滅するとなると無理があるだろう。
ラングリッサーを構え直して周囲を見渡してみる。
「正直、きついな…。数が多すぎる。」
終わりが見えねえんだ。
やる気が下がるのは仕方ねえだろ?
俺達の活躍と5千人の魔術師達の努力によって相当な数を減らしたアストリア軍だが、
それでもまだ全滅には程遠いように思えちまう。
3万近くいた軍が1万をきった。
ただそれだけのことだ。
共和国軍の戦力はそれ程減少してねえが、
ほとんどの魔術師が魔力を失っちまってる。
もはやまともな戦力としては期待出来ねえ。
死者は300にも満たないだろうが、
実際に戦えるのは500にも満たない状況か?
そんな状況でまだ1万近いアストリア軍と戦わなければいけねえんだぜ?
疲れるのは当然だろ?
…それになにより。
味方の戦力が減るほど一人当たりの負担が増えていくことになるんだ。
前線で活躍する龍馬と俺にも魔力の総量っていう限界はどうにもならねえ。
さすがに消費した魔力を回復させるには時間が足りねえからな。
このままだと俺達も後退することになるだろう。
そんなふうに考えてる間に、
数分ぶりに後方からの援護射撃が整ったようだ。
「龍馬!!真哉!!下がって!」
…ようやくかっ!
「遅すぎだ!!」
「うっさい!!!」
翔子の声が聞こえた瞬間に、
俺達は即座に後退した。
その直後に翔子の魔術が放たれる。
「メテオストライク!!!!」
虹色の矢が天空へと放たれた。
そして上空から降り注ぐ破壊の嵐がアストリア軍を飲み込んでいく。
「…は、ははっ。」
さすがにこれはやりすぎだろ?
…いや。
威力としては構わないんだが、
無駄に広範囲に影響を及ぼしすぎているせいで魔力を無駄遣いしているように見えるってだけだ。
まあ、そのおかげで取りこぼすことなく殲滅できてるんだけどな。
数え切れないほどの死者を生み出す破壊力と引き換えに急速に失われる魔力。
それでも翔子は続けざまにルーンを構えていた。
「頼むわよ!優奈ちゃん!!」
隣に立つ優奈に声をかけながら、
翔子はもう一度魔術を発動させている。
「メテオストライク!!!」
繰り返される破壊の嵐。
優奈の『魔力供給』の援護を受けながら連発する翔子の魔術によって、
アストリア軍は確実に壊滅しつつあった。
だが、その援護にも限界はある。
優奈の魔力供給も無限じゃねえからな。
「…すみません。これ以上は…。」
地面にしゃがみ込んだ優奈についに限界が訪れたらしい。
膨大な魔力を消費するメテオストライクを連発させるほどの魔力を供給してたんだからな。
まあ、当然といえば当然の結果か。
そのせいかどうかは知らねえが、
底を尽きかけの魔力では精霊の維持さえ難しくなっているように見える。
「…みゃ~♪」
無邪気に鳴く精霊の存在が微かに揺らめいているように見えるんだ。
どう考えても魔力が足りねえ感じだな。
そうは思っても、
優奈の魔力を補給する術がこの戦場には存在しねえ。
敵対してる相手が魔術師じゃないからだ。
魔術の使えない魔力を持たない一般人でしかない。
そのせいで優奈は魔力を吸収することができずにいた。
「…優奈!!」
慌てて優奈に駆け寄る悠理だが、
悠理がいても優奈を救うことはできねえ。
「悠理…ちゃん…。」
「しっかりして!優奈!」
無理に微笑む優奈に、
悠理は手を差し延べていた。
「…ありがとう。」
悠理の手を握り返した優奈は、
ゆっくりとした動きで懸命に立ち上がろうとしていた。




