予想以上
《サイド:美袋翔子》
「…とまあ、そんな感じね。」
…うわぁ。
話を聞かせてくれた美春のおかげで、
大体の内容は理解できたわ。
その点に関しては感謝してるつもりなんだけど。
背筋に冷たいものを感じてしまって、
上手く言葉にはできない感情がうずまいてしまったのよ。
…これはさすがに。
予想以上としか言いようがない状況よね?
もうそんな陳腐な言葉しか思い浮かばないわ。
正直に言ってここまで急成長するなんて思ってなかったのよ。
…何なのよこれ?
血の気が引いていく瞬間が自分でもはっきりと分かる。
体の震えが止まらなくなり、
心臓の鼓動が加速していく。
…たった数時間で。
ここまで変わってしまうものなの?
今朝の段階ではそこまでの実力はなかったはずよね?
少なくともこれまでの試合は全て確認してきたし、
最後の検定会場でそんな無茶ができるほど強かったようには思えなかったわ。
それなのに。
私が寝ている間に事態は急変してしまったのよ。
それも、たったの半日で。
もっと厳密に言えば5時間程度。
総魔から目を離していた時間は本当にそれだけなのよ。
…それだけのはずなのに。
まるで別人のように事態が急変しているの。
話を聞き終えた今でも信じられないくらいに。
…一体、どこまで強くなるの?
私との実力差はどこまで埋まっているの?
…ありえない。
そんなふうに思っていたら。
「翔子…。」
隣にいた沙織は私が顔を青くしていることに気づいてくれたみたい。
そっと気遣うかのように私の手を握りしめてくれたのよ。
だけど、それだけ。
沙織は何も言わなかったわ。
無理に何かを言おうとはしなかった。
それでもね。
沙織の手から伝わる温もりが冷え切った私の心を温めてくれた気がしたの。
…まだ、大丈夫だよね?
親友が傍にいてくれるから恐れることは何もない。
今はまだ心配するようなことは何も起きてない。
少なくとも私が怯える理由なんてないのよ。
ただそっと静かに寄り添ってくれる沙織の優しさを噛み締めながら、
混乱する頭の中で必死にどうするべきかを考えてみる。
だけど、すぐには結論なんて出なかったわ。
だから。
美春に尋ねてみることにしたのよ。




