堂々と
《サイド:天城総魔》
さて。
ついに午後1時になったな。
短い休憩を終えた俺達は、
宿で昼食をとってから王都に向けて出発することにした。
人もまばらな食堂で昼食を始める。
その直後に、とある噂話が聞こえてきた。
それは砦に侵入した者がいたという噂話だ。
『目的は不明』
『人数も不明』
『水路で多数の兵士を殺害して逃亡』
すでに町中でその噂が広がっているらしい。
「…まずいですね。」
呟く徹の言葉に朱鷺田が答える。
「無理に話題を避ける方が不自然ですよ。今は堂々としている方が良いでしょう。」
朱鷺田の指摘によって背筋を伸ばす徹は堂々とした雰囲気を出そうとしている。
だが…それも逆効果だろう。
「力を入れすぎです。普通で良いんですよ。」
再び朱鷺田に指摘されて、
徹は悩みながら肩の力を抜いている。
「…難しいですね。」
呟く徹に微笑む一同。
少しだけ和やかな雰囲気になってはいたが。
どちらにしても、
この町の住人ではない俺達の存在は異質だからな。
早々に食事を終えた俺達は、
足早に宿を出発することにした。
そして王都側へと繋がる街道を目指して町中を歩き出す。
その間にも広まり続ける噂話は、
町中で聞くことが出来ていた。
…あまり時間をかけると各地の警戒が強まるかもしれないな。
だからだろう。
徹は不安そうな表情で周囲を気にしている。
「やはり砦に近いこの町では噂が広がるのが早いですね。」
ああ、そうだな。
そしてこれから向かう王都もそれほど遠くはないからな。
「この町でこの状況なら、王都にもすでに情報が流れていると考えるべきだろう。」
「警戒が強まるのではないでしょうか?」
「その可能性は高いな。場合によっては検問だけでは済まないかもしれない。」
…実際に確認してみなければ分からないが。
身元を証明できるものがなければ、
中に入ることさえ出来ないかもしれない。
「それじゃあ、どうするの?」
今度は三倉が問い掛けてきた。
「まずは行ってから考える。状況次第では強行突破になるだろう。」
町に入る時点でそうなればとても諜報活動は出来ないが、
そもそも中に入れないようでは話にならない。
「騒ぎになった時点で死亡確定かしら?」
…かもしれないな。
問題の兵器がどこにあるのかさえ分からない状況で、
『兵器を破壊して撤退』というのはもはや不可能になるだろう。
そうならない方法を考えるしかないが、
直接この目で警備の状況を見てみないことには判断出来ないからな。
「入れるかどうかよりも今は向かうことが先決だ。」
ここで悩んでいても解決しない。
今は王都に向かうしか選択肢はない。
「行くぞ。」
5人揃って町を抜ける。
そうしてそのまま王都に続く街道を進み続けた。




