立場が逆
「それで…どうするの?」
みんなの疑問を代表して問いかけてみたんだけどね。
悠理ちゃんは優奈ちゃんの手を握り締めながら必死に想いを打ち明けたのよ。
「お願い、優奈!私も連れて行って!!」
「え…っ?えぇ〜〜〜〜〜っ!?」
突然のお願いに戸惑う優奈ちゃんは、
どうしていいか分からずに隣に座る私に視線を向けてきたわ。
…うぅ~ん。
…でもね~?
私を見られてもねぇ?
どうしようもない…っていうか。
私の意見を聞き入れてくれるようには見えないわよね?
「悪いけど私には良いも悪いも決められないわ。その権限がない…っていうか、あっても聞かないわよね?」
どうしようもないから、
ひとまず龍馬に尋ねてみる。
「どうする、龍馬?」
「いや、僕に聞かれても困るんだけど…?」
龍馬もどうしようもないから理事長に問い掛けてたわ。
「どうしますか?」
「どうって…。あのね~?どうもこうもダメに決まってるでしょ!!」
問い掛けた龍馬に、理事長は全力で否定してしまう。
…まあ、当然よね。
「これは遊びじゃないのよっ!死ぬかもしれない危険な場所に連れていけるわけないじゃない!!」
これも正論だと思うわ。
悠理ちゃんと武藤君だと実力に差があるとは言え。
私達と比べれば悠理ちゃんも戦力外なのは事実なのよ。
さすがに戦場に連れて行くのは問題があると思うの。
…なんだけど、ね。
「嫌ですっ!優奈と一緒に居たいんです!!」
理事長の当然の指摘によって、
悠理ちゃんは涙を浮かべながら優奈ちゃんに抱き着いていたわ。
「最後かもしれないなら!もう2度と会えないかもしれないのなら!優奈と一緒に居たいんです!!」
………。
精一杯の想いを打ち明ける悠理ちゃんの言葉には同情を感じるわ。
でもね?
それでも理事長は断固として反対したのよ。
「ダメよ!降りなさい!!」
「い…嫌ですっ!!」
「あなたがいても足でまといなのよ!!」
「それは…分かってます…っ。でも、それでも優奈から離れたくないんです…っ!!」
優奈ちゃんにしがみついて離れようとしない悠理ちゃん。
そのせいか。
優奈ちゃんも理事長に頭を下げてお願いし始めたのよ。
「あ、あの…お願いします。悠理ちゃんも一緒に…。」
「ダメよ!!」
連れて行ってほしいと最後まで言い終えるよりも先に却下してた。
「気持ちは理解できるけど、実力がなければ死にに行くようなものだわ。戦場では一瞬の判断が死を招くのよ?悪いけれど、その子の実力では足手まといでしかないわ。」
責任者としての言葉には重みがあるわね。
私も納得の発言だったけど。
「これはまあ、あれだな…。」
事実を突き付ける理事長に、
今度は真哉が話し掛けたのよ。
「色々と言いたいことはあるだろうが、さっさと認めた方が良いんじゃねえか?」
「はぁっ!?無責任なことを言わないで!!そんなの認められるわけないでしょう!」
全く引き下がらない理事長に、
真哉は昨日と同じ言葉を口にしちゃうのよ。
「止めないほうがいいぜ?止めれば無断で突っ走るだろうからな。」
「…く…っ!!」
「昨日も言っただろ?置いて行けば勝手に追い掛けて来る、ってな。」
「………。」
真哉の発言によって、
理事長は言葉を失ってしまったわ。
確かに悠理ちゃんの想いは本物でしょうね。
単に仲が良いとかそういうことじゃなくて、
最後まで優奈ちゃんの側にいたいっていう気持ちが感じられるからよ。
生きるとか死ぬとか、そんな問題じゃなくて。
戦争とか戦場とか、そんな問題でもなくて。
最期の時まで優奈ちゃんと一緒に居たいっていう覚悟が感じられるのよ。
…私が沙織に想う気持ちと同じ、ということよ。
だからこそ優奈ちゃんを想う気持ちは本物だと思うわ。
それこそ。
私達が総魔を追いかけるような感じでもあるの。
…悠理ちゃんにとってはね。
きっと自分の命よりも、
優奈ちゃんが大事ってことなのよ。
だからね。
真哉の指摘通り。
ここで無理に置いて行けば、
優奈ちゃんを追い掛けて一人で学園を飛び出しかねないわ。
「…ったく、もう!!」
その可能性を感じてしまったことで、
理事長も断れなくなってしまったみたいね。
「ホントに言うことを聞かない子達ばかりね!」
呆れたように怒鳴る理事長だけど。
それは悠理ちゃんの同行を認める発言だったわ。
その結果として、
悠理ちゃんは瞳を輝かせたの。
「それじゃあ、付いて行っていいんですか!?」
「あ~もうっ。分かったわよ。好きにしなさいっ!」
理事長は喜ぶ悠理ちゃんに、
しぶしぶ許可を出したのよ。
「だけどこれだけは覚えておきなさい!これから向かうのは死と隣り合わせの戦場なのよ!気を抜いた瞬間に命を失うの!そのことだけはちゃんと覚えておきなさい!!」
「はいっ!!」
嬉しそうに返事をする悠理ちゃんを見た理事長は龍馬に押さえられている武藤君にも問い掛けていたわ。
「…それで?あなたも降りないつもりなの?」
「もちろんです!悠理が行くのなら僕も行きます!!」
何も知らないはずなのに、
当然とばかりに頷いたのよ。
「事情は知りませんが、悠理は僕が守ります!!」
全力で宣言してるけどね。
これってどう考えても立場が逆よね?
学園最下位の成績で、
どうやって悠理ちゃんを守るの?
誰もが失笑する中で、
悠理ちゃんだけは絶望的な気分でため息を吐いていたわ。
「最悪ぅぅ…。」
まあ…その気持ちもわかるけどね。
不満を呟く悠理ちゃんに、
優奈ちゃんも苦笑していたわ。
「…ありがとう、悠理ちゃん。ずっと…ずっと一緒にいようね。」
「うんっ!!」
一緒にいられることになったことで喜ぶ優奈ちゃんに悠理ちゃんは笑顔一杯で頷いてる。
「優奈は私が守るからね!」
優奈ちゃんを抱きしめる悠理ちゃんは本当に嬉しそうに見えるわ。
魔術師としての実力は頼りないけれど。
精神面ではすごく頼りになるんじゃないかな?
良い関係だと思うのよ。
これこそ親友!っていう感じよね。
悠理ちゃんという存在そのものを、
優奈ちゃんは心強く感じてるはずなのよ。
「ありがとう。悠理ちゃん。」
微笑む優奈ちゃんは本当に嬉しそうに見えるわ。
まあ、私としてはどっちでもいいかな?って思う部分だけど。
こうして新たに悠理ちゃんと武藤君を仲間に加えた私達は、
ひとまずマールグリナに向けて馬車を走らせることになったのよ。




