正論
《サイド:美袋翔子》
…うわぁ。
これって相変わらず…っていうのかな?
状況は理解できるけど。
だから何?っていう話よね。
「はぁ…はぁ…っ!」
「ぜぇ…ぜぇ…!!」
呼吸にさえ苦しむ様子の二人。
悠理ちゃんはまあ…被害者だから良いとしてもね?
武藤君の行動はさすがにもう問題じゃない?
風紀委員的には有罪判決確定よね?
だけど龍馬が甘やかしてるから口出ししにくいのよね~。
とりあえず、どうしたらいいの?
手っ取り早く叩き出しちゃう?
まあ、それだと何の解決にもならないんだけど。
さすがに今は遊んでる暇はないと思うのよね~。
突然の出来事に驚くみんなを放置しつつ。
ひとまず問題児の武藤君を追い出そうと思ったんだけど…。
「助けて、優奈!!」
その前に悠理ちゃんが優奈ちゃんに抱きついていたわ。
「え…っ?…えぇぇ…っ!?」
戸惑う優奈ちゃんが反応する前に、
武藤君が悠理ちゃんに近付こうとしてる。
「悠理ーー!!」
悠理ちゃんに手を伸ばそうとする武藤君だけど。
「まあまあ」
龍馬が素早く遮って引き止めていたわ。
「ちょっと落ち着こうか、武藤君。」
久しぶりに出会う武藤君に苦笑しながら、
龍馬は悠理ちゃんから武藤君を離れさせてくれたのよ。
その一連の行動を理事長は首をかしげて眺めている様子ね。
「これは…なんなの?」
…あ~、うん。
疑問に思う理事長の気持ちは私でもわかるわ。
事情が飲み込めない理事長の言葉に苦笑しちゃうけれど。
ひとまず今は悠理ちゃんに声をかけるしかないわね。
「それで、また追われてるの?飽きないわね~。」
「好きでしてるんじゃないんです!あの馬鹿が勝手にっ!!」
控え目に怒鳴る悠理ちゃんを懐かしく思いながら、
今度は武藤君にも話し掛けてみる。
「…って、言ってるわよ?どう考えても迷惑みたいだし。いい加減、諦めたら?」
「いっ、嫌です!!悠理に勝って!悠理が俺を認めてくれるまで諦めませんっ!!」
…うあ~。
力強く宣言する武藤君は相変わらず説得が難しそうね。
…って言うか、私には無理!!
「はは…っ。きみは変わらないね。」
何故か微笑んでる龍馬の行動はどうかと思うんだけど。
私達の中で唯一、武藤君に心を開いているからかな?
龍馬は笑顔で話し掛けていたわ。
「久しぶりだね、武藤君。どうだい?あれから少しは成績が良くなったかい?」
しばらく合わなかった間の出来事を問いかける龍馬だけど。
「いえっ!最下位です!!」
武藤君は自信を持って答えてた。
「ですが、そんな些細なことはどうでもいいんです!」
…え?
些細…なの?
それってどうでもいいの?
そんなわけなくない?
最下位って…どうでも良くないわよね?
「悠理にさえ勝てれば番号なんてどうでもいいです!!!」
…はぁ。
変なところで男らしささえ感じる発言だけど。
それってどうなの?
わりとダメな方向での決意表明よね?
私としては問題ありありだと思うんだけど。
あまりの暴走っぷりに呆れたのかな?
初対面のはずの真哉や沙織や理事長でさえも、
武藤慎吾という人物の性格を把握した様子だったわ。
みんな揃って激しくため息を吐いているのよ。
まあ、悠理ちゃんと武藤君の事情を知る龍馬と私と優奈ちゃんでさえも、
武藤君の言動を見て苦笑するしかなかったけどね。
「ま、まあ…よく分からなけど。何となく理解できたわ。」
突然起こった馬鹿な騒ぎに頭を悩ませながらも理事長が悠理ちゃんと武藤君の2人に話し掛けたのよ。
「悪いけど遊んでる暇はないの。私達は急いでるから痴話喧嘩なら他でしてくれる?」
「ち、違いますっ!痴話喧嘩じゃありません!!」
全力で否定する悠理ちゃんを見た理事長は再びため息を吐いてる。
どうでもいいっていう感じね。
こんな所で大切な時間を無駄にするわけにはいかないって感じでもあるわ。
「御堂君は知り合いなのね?だったら悪いけど、時間がないからとりあえず2人を外に放り出してくれないかしら?」
「ええ~っと…。」
理事長の言葉に思い悩む龍馬は少し困ったような表情で武藤君に視線を向けていたわ。
全く知らない人間ならともかく、
知り合いを放り出すというのはさすがに気が引けるみたい。
「悪いけど降りてもらえるかな?」
控えめにお願いしていたわ。
「もちろん降りるのは構いません!」
…おお~?
意外と聞き分けがいいわね。
…なんて思ったけど。
どうやらそうじゃないみたい。
「ですが!僕が降りなければいけないのなら、悠理も降りるべきです!」
あ~、うん。
全くの正論ね。
反論の余地はないわ。
「悠理が降りないのなら、僕も降りません!!!」
「………。」
さすがの龍馬も困っているわね。
さりげなく願う龍馬の言葉を、
武藤君が全力で否定してしまったからよ。
こうなるとさすがに反論のしようがないわよね〜?
だから全員の視線が悠理ちゃんに集まってしまったわ。
だけど肝心の悠理ちゃんは優奈ちゃんの影に隠れてしまっていたのよ。




