頼りになる兄
《サイド:米倉美由紀》
…さて、と。
深海さんが合流したそのあとに、
御堂君と北条君の2人も揃って到着したわ。
「わりいな。待たせたか?」
問い掛けてくる北条君に続いて。
「おはようございます。」
御堂君が挨拶をしてくれたのよ。
うんうん。
みんな元気そうね。
「おはよ。2人とも、調子はどう?」
「俺はいつでも絶好調だぜ!」
「僕ももう大丈夫です。」
二人は揃って笑顔を見せてくれたわ。
何だかんだで魔術大会の翌日なんだけど。
みんな疲れてる様子はなさそうね。
こうなるとまだ来てないのは翔子だけっていうことになるわ。
「あとは翔子だけね。」
そう思った直後に。
元気な笑顔を見せてくれる御堂君達から少し遅れて、
最後に翔子が駆け寄ってきたのよ。
「おはよ~!!」
元気一杯の笑顔に見えるわ。
今日もいつも通りね。
「はあ~。間に合ってよかった~。」
軽く挨拶を交わしながら歩みを進める翔子は集合時間に間に合ったことを安堵している様子ね。
「朝早く起きるのって苦手なのよね~。」
「時間ギリギリだったな。」
苦笑いを浮かべる翔子に、
北条君が時間を確認してから話し掛けていたわ。
「ごめんごめん。ちょっと色々とやりたいことがあって、あれもこれもって考え事をしてたら寝るのが遅くなっちゃったのよね~。何だかんだで気が付いたらもう4時だったわ。」
…ふふっ。
翔子らしい行動ね。
何をしてたのかは知らないけれど。
笑顔で言い訳をする翔子を眺めていた北条君は、
今度は御堂君に話し掛けていたわ。
「それにしても、今回は見送りがなさそうだな。」
「ああ、そうだね。時間も時間だから、みんなまだ寝てるか、食堂にいるんじゃないかな?」
…まあ、そうでしょうね。
時刻は6時丁度よ。
あちらこちらですでに行動している生徒の姿も見えるけれど。
見覚えのある生徒の姿はどこにもないわ。
周囲を見渡してる御堂君達も知り合いの姿が見つけられないみたいだけど。
時間的に考えて行動してる生徒の方が少数でしょうね。
どちらかと言えば生徒よりも校舎に向かっていく教員の方が多いくらいかしら?
その教員にしても私だって全て把握できてるわけじゃないけどね。
ざっと数えても数千人の教員がいるのよ?
全員の顔と名前を覚えるなんて出来るわけがないわ。
まあ、無理に覚える必要もないんだけどね。
ひとまず今は全員が揃ったことで、
みんなに話し掛けることにしたの。
「それじゃあ、みんな揃ったことだし、そろそろ出発するわよ!」
「は~い!」
馬車に乗り込む私に続いて、
元気良く返事をしてくれた翔子が真っ先に馬車に乗り込んでいく。
そのあとに続いて沙織と深海さんも馬車に乗り込んでいたわ。
そして順番に馬車に乗り込む御堂君と北条君を横目に見ながら、
近藤誠治と大悟に後を託すことにしたのよ。
「あとのことは頼むわね。」
真剣な表情で告げたことで、
二人は大きく頷いてくれたわ。
「国内のことはお任せ下さい。」
近藤誠治は礼儀正しく一礼してる。
「戦場は違うが、同じ志を持つ者同士として最後まで全力を尽くすつもりだ。」
大悟も真剣な表情で応えてくれたのよ。
「親父さんのことは俺に任せておけ。あの人は俺にとっても父親同然の存在だからな。」
ええ、そうね。
期待しているわ。
お父さんに師事して私と共に魔術を学んだ大悟にとって、
私は妹で、お父さんは父親と呼べる存在らしいわ。
私としても大悟は頼りにある兄っていう感じかしら。
だからこそ他の誰よりも大悟のことは信頼してるつもりよ。
「お願いね。」
「ああ、任せておけ。それよりも俺の知らないところで勝手に死ぬなよ?」
「もちろんよ。必ず生きて帰ってくるわ。これはその為の戦争よ。」
死ぬつもりはないし。
負けるつもりもないわ。
やるからには絶対に勝つし。
生きて帰るつもりでいるのよ。
「それじゃあね。」
手綱を強く握り締める。
「必ず帰ってくるわ。」
力強く宣言してから馬車を走らせることにしたのよ。




